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★我楽多だらけの製哲書(18)★~冬支度に向かう「いきもの」たちとマッカーサー~

10月後半くらいから季節が一気に秋から冬という感じになった。
夜の散歩中に出会う「いきもの」が少なくなったことも、穏やかな空気に包まれた賑やかな季節から、寒さに耐え忍ぶ季節になったことを容易に想像させてくれる。

野良猫を見かけなくなった。
現在でも今まで通り野良猫が集まっている場所はあるものの、廃墟のような場所であったり、寂れた公園であったりと、それほど人が関わっていない場所にいたはずの野良猫たちの姿が見えなくなった。単に拠点を変えただけだろうか。それとも寒さによって体調を崩し、姿を見せることができなくなったのだろうか。これからますます寒くなる。昆虫や木の実など自然界から自力で入手できるものは必然的に少なくなる。野良猫たちの多くは、現在でも栄養状態が良好とはいえないだろう。そして自然界から栄養を入手しにくくなり、また人とあまり関わらない場所にいると追加の栄養も期待できない。その結果、栄養不足は体調不良を引き起こし、悲しい最期を迎えてしまうのではないだろうか。

そのような悲しい最期を猫は簡単には見せないと聞いたことがある。自らの生命の散り際を見極め、静かな場所で余生を過ごし、できるだけ迷惑のかからない形でその命の灯が消えるのを待つ。そんな生き様に対する美学を猫は持っているのかもしれない。

「老兵は死なずただ去りゆくのみ(Old soldiers never die; They just fade away.)」
これはアメリカの軍人で、GHQの最高司令官も務めたダグラス・マッカーサーの言葉である。1951年の退任演説の際に用いたフレーズとして知られている。このフレーズ自体は、兵隊歌『Old soldiers never die』の歌詞であるが、マッカーサーが引用したことで、非常に有名な言葉となり、マッカーサーのオリジナルとさえ思われているものである。マッカーサーは実績もあり発言力・影響力も強く、次期大統領に推す声も大きかったが、朝鮮戦争においてトルーマン大統領との方針の不一致から解任され、政治の表舞台から去ることになる。この解任は、トルーマンが次期大統領としてマッカーサーの人気が高まることを警戒したことも影響しているという見解もある。

退任後、マッカーサーは各地で演説や政治活動を続けたが、自身の発言も引き金となり、国民からの支持は薄らいでいったわけで、文字通り静かに去ることはなかった。しかし、状況としては国民からの支持が薄らいでいき、彼の言葉どおりフェードアウトしていったのである。

私の周辺では、野良猫たちが静かに去っていくだけでなく、ヤモリたちも静かに去っていっている。それは遭遇率の大幅な低下がはっきりと物語っている。もちろん昆虫たちも表舞台から姿を消していっている。そして先日、1ヵ月近く我が家を拠点としてくれていた奴との別れもあった。

奴はマッカーサー同様、かなり高齢だったのだろう。1ヵ月の生活の最初こそ、コオロギもクモも勢いよく捕まえていたが、目も弱くなり、しだいにコオロギやクモの動きを捉えられなくなっていた。目の前で動くものでさえ、疲れてしまったのか捕まえることもしなくなった。そのうち、コオロギやクモと戦う気持ちや自信も失っていき、それらが近づくと後ずさりするようになってしまった。

だから私は「ただ去り行くのみ」を望んでいるのではないかと思ったので、奴との別れのため、その場所を川の近くに決めた。最初こそ力を振り絞り跳ねていたが、年老いた奴の脚力が連続の跳躍を許さず、後半はのそのそと歩くだけになっていた。奴は終始こちらを振り返ることはなかった。

飛び跳ねることができない「身体の弱さ」は隠せなかったものの、一切振り向かずに歩を進める背中に、私は奴の「意思の強さ」を垣間見た。奴はマッカーサーと同じように、表面的には「ただ去り行くのみ」を示しながら、実際には内に秘めた熱い思いを持ち続けていたのではないだろうか。

私の視界から見えなくなる直前、奴の背中がこう語っているように思えた。

「I shall return, but next spring.」と。

#哲学 #マッカーサー #カエル #老兵は死なずただ去りゆくのみ
(以下で、去り行く奴の動画を紹介)

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