『ファートンいきもの記』【18】
今日の「いきもの」は≪無形文化遺産flower≫である。
奴と出会ったのは、夏の後半であった。8月も最終日となり、9月1日から夏休み明けの授業が始まるというスケジュールの学校が多い。去年や今年についてはコロナの影響で、例外的に夏休みが続くこともあるが、8月の終わりは様々な区切りという印象があることは間違いないだろう。季節が夏から秋へ移行していく区切りがその一つである。夜に散歩をしていると、夜風の冷たさや勢いなどからも秋の雰囲気が感じられるようになってきた。そんな秋に向かう雰囲気の中で、奴は自分自身にとってお祭りのような季節である夏の終わりが近づく寂しさというものを健気に受け止めていた。奴は「太陽のような外見」からポジティブを地で行っていると思われがちであるが、夏が終わってほしくないという気持ちで気分が沈んだり冷静さを失ったりしないようにと、実際にはかなり我慢しているのである。このような生き様は、自己本位に流れて周囲を乱さず、常に他者のことを考える美徳であり、人間社会が長い歴史の中で培ってきた「無形文化遺産」の一つといえる。そしてそれは、奴が凛として立っている場所から少し離れたところで、夏の終わりに抗っている若者たちの様子と見事なくらい対照的であった。若者たちは川の近くで談笑したり、勢いに任せて叫んだり、次々に花火を打ち上げたりと、夏にしがみつき続けていた。近所の方が連絡したのだろうか、そのうち警察官がやってきて、若者たちは三々五々に帰っていった。そして、その空間は人為的な喧騒から解放され、風の音、川のせせらぎ、虫の声など自然が奏でるメロディーが支配してくれるようになった。
奴の「とくしゅ(特殊能力)」は「レジリエンス」である。
奴は夏が終わる寂しさに耐えながら、歯を食いしばって、自然が奏でるメロディーに聴き入っていた。奴の顔はいつも「太陽」のように晴れやかなので、そこから心の内をうかがい知ることはできないが、夜の散歩のとき、奴の背中を見ると、寂しさに耐えている苦しさがそこに表れているように思えた。しかし、それをできるだけ悟られまいと、晴れやかな表情を保ち続けられる奴の「精神の強さ」には脱帽である。
#ひまわり #レジリエンス #無形文化遺産
(以下で今日の「いきもの」をスライドにて紹介)
(奴が寂しさに耐えている動画も紹介)
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