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同じテーマを撮り続ける者たち

先日、小野啓さんの写真展を観に行きました。高校生のポートレート。小野さんは20年以上にわたり全国の高校生を撮り続けています。ホームページやSNSで被写体になってくれる高校生を募集し、全国津々浦撮影に赴きました。しかも自費で。すごい労力と熱量です。普通ではありません。でも、写真家とはそういう人たちです。そんな常識を逸している、素晴らしい写真家が日本にはたくさんいます。私の友人知人にもたくさんいます。残念ながらこの国ではまだまだそんな素晴らしい写真家に光が当たっていません。今も昔も逆輸入です。浮世絵から杉本博司まで、今も変わらずです。映画界でも同じような傾向が多々あるでしょう。

ちなみに先の小野啓さんは高校生の写真集を3冊上梓されています。ぜひ、書店で手に取ってみて下さい。20年以上同じテーマで撮り続けていくと、被写体である高校生の雰囲気も変わってきます。ファッションや持ち物などの表面的なことから考え方や言葉使いなど、多岐に渡ります。小野さん自身も当然変化しています。さらなる技術や知識の向上はもちろん、ポートレートに対する考え方も深化しています。時代も動きます。背景に写る街並み、原風景、高校生の自室など、その次代の空気が写り込んでいます。それら3つが小野さんの「魔法」により、作品に昇華されます。写真はシャッターを押せば写りますが、何を撮り何を除くか、被写体と呼応できているか、など、盛り沢山のことが1枚のポートレートに乗っかっています。それを読み込めるようになるには一定の訓練を要します。奥が深いのです。私自身も修練の身です。たくさん展示を観て、撮って、他者に披露して、省みて、また観て撮っての、永遠のループの途上にいます。

小野さんの他にも幾人かご紹介します。

岩手県雫石町に住み、永きにわたり北海道で自給自足の生活を送る「弁蔵さん」という男性を撮り続けている奥山淳志さん。画家になるのが夢だった弁蔵さんの未発表作品を撮影し、弁蔵さんのポートレートや弁蔵さんが暮らした家や過ごした庭などの写真と共に発表されています。数年前に弁蔵さんが亡くなって以降も精力的に撮影、発表されています。現在巡回展の真っ最中です。

山下恒夫さんは長年沖縄に通い、撮影されています。その土地に住む人々の営みを丁寧に優しい目線で撮られています。その土地の暮らしにも随分と溶け込まれている印象です。そして沖縄諸島の他の島にも通い、撮影されています。沖縄の写真と言えば山下さん!と私は思っていますが、他にも沖縄を撮り続けている素晴らしい写真家がたくさんいます。最近は移住する写真家も見受けられ、在住の写真家の方々と併せて写真のメッカのようです。

小野さんの展示でお会いした淵上裕太さんも素晴らしい写真家です。上野を重点的に撮影されています。先のトップミュージアムでの展示は圧巻でした。その淵上さんが所属されているトーテムポールフォトギャラリーを主宰されている有元伸也さんも日本を代表する写真家です。チベットの人々を撮影した作品や新宿で撮影した作品など、多岐にわたる素晴らしい作品郡があります。

挙げていけば切りが無いほど、素晴らしい写真家がこの国にはたくさんいます。その中には一見してよくわからない作品があるかもしれませんが、少し写真を読み込む訓練をして「リテラシー」とやらを身に付けていくと、とても面白い世界が広がっています。「沼」というやつですね。私も20年以上写真を撮ってきましたが興味は尽きません。

新年度と共に写真展や書店の写真集コーナーにぜひ、足を運んでみてください。


小野啓さん


奥山淳志さん


山下恒夫さん


淵上裕太さん


有元伸也さん




https://www.instagram.com/p/C4ziCmtPTXO/?hl=ja



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