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幸せになるためのポートレート。

ちょっと壮大なタイトルですが、前回から続くコミュニケーションの話について書いていきます。前回は下記をご参照ください。


ポートレートはコミュニケーションのひとつのかたち。会話する、手紙を書く、メールするなど、普段私達は多様なかたちで他者と意思疎通を図っています。ポートレート撮影もそのうちのひとつで、何も構えたりする必要はありません。相手と自分との間にカメラが介在し特別な感じがしますが、携帯がこれだけ普及する現代ではポートレートを撮ることは特別なことではなくなりました。かしこまる必要はないのです。

よってポートレートについて考えることは、コミュニケーションについて考えることでもあるでしょう。人間はひとりでは生きてゆけない、とてもか弱い存在です。他者とあらゆるコミュニケーションを図り、相互理解を深めていかなければ「私」はおろか、社会も成り立ちません。他者との差異を、想像力を持って理解するためにあらゆるコミュニケーションが存在します。

太古のむかし、人間は小さな集団で暮らしていました。そして同じような集団とコミュニケーションを図り、仲間を増やしていきました。それぞれの集団で常識や文化、言葉が異なっていたでしょう。それでも何とか身振り手振りで交渉し、少しずつ理解を深め、仲間になっていったと思います。憲法や法もない時代、殺戮や強奪は当たり前の世で、命懸けの交渉が実を結んだ瞬間のその喜びは格別だったと想像します。

自分の想いや考えを伝えたいという願いは今もむかしも変わりません。形態が変わり、どんなに便利になってもやっていることは同じで、うまく他者とコミュニケーションが取れたときの喜びも変わらず至上でしょう。ポートレートもその延長線上にあり、撮影中にお互い「交歓」、「呼応」できたときの喜びは格別であり、写真にもしっかりと見事にそれは写ります。第三者がそれを鑑賞してもその「喜び」は伝わるはずです。それは「いいポートレート」となっている確度も高いでしょう。

ポートレートはコミュニケーションの話。「わたし」と「あなた」の話。そして「わたし」と「あなた」の未来の話なのです。それは、これからより「幸せ」になっていくための、「わたし」と「あなた」の話。ポートレートを考えることは、幸せに向かっていくことでもあります。

コミュニケーションのかたちも人それぞれですが、それは「生き方」のかたちでもあります。さらに「切実さ」の強さ、顕れでもあります。これらは「あなた」が撮るポートレートに如実に反映されます。あなたが撮るポートレートの傾向や性質となります。自分は世界をこう観ている!という世界観の顕れにもなるでしょう。

ポートレートを考えることはコミュニケーションについて考えること。それは自分の頼りなさや欠落した部分、寄る辺のなさと向き合うことにも繋がります。タフなことです。しかしそれらを自覚できたらその分、誠実に謙虚になれるでしょう。他者と信頼関係を結べるようにもなるでしょう。「自分らしい」ポートレートが撮れるようになっていくでしょう。被写体に信頼されているポートレートはやっぱり強いですから。ずっと観ていられます。

ポートレートを撮ることは、自分と他者を切り結ぶこと。自分と世界を切り結ぶことだと思います。そして互いに誠実で謙虚であり正直でもある、そんな「生き方」や「佇まい」が ”素敵” なふたりが、「交歓」して生まれたポートレートは、他者にもその交歓が伝わる、強いポートレートになると、私は確信しています。

また人間を、世界を理解する手立てとして、ポートレートはかなり有効な手段だと私は考えます。人間とは、世界とはとどの詰まり「わたしとあなたの話」、「わたしとあなたの未来のはなし」だと思うのです。人間は他者と深く交わろうとするとき、試行錯誤を繰り返し、少しずつ調和してゆきます。それはとても美しい行為で、「自然」な姿でもあると思います。草木などの「自然」はいつも試行錯誤と調和を繰り返しています。行き来しています。

良いポートレートにはより純粋に、より「自然」に、よりシンプルに生きていくための、つまりより「幸せ」に生きていくための「理(ことわり)」、「真理」が内包されていると私は思います。それがいまの私の見解です。

とても長くなりました。読んで頂き、ありがとうございました。私なりのポートレートに関する言説も、一旦ここで筆を置きます。あくまで私の偏った考えです。参考になる部分が少しでもありましたらぜひ、実践してみてください。そしてあなた自身のポートレートの「型」をつくってみてください。最初は一本調子でも大丈夫です。私は20年以上写真をやっていますが、いまだに一本調子です。少ないその引き出しを深めていきたいと思っています。

ポートレートを撮ることが、あなたの幸せに繋がることを願い、祈っています。






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