「写ルンです」でポートレートを撮影して、個性を考えてみる。
ここ数年、お世話になっているギャラリーでポートレートのワークショップを開催していましたが、まず始めに受講生に下記のような課題を出しました。
「写ルンです」で撮れる枚数分と同じだけの数のポートレートを撮ってきてください。36枚撮りだったら36人を1枚ずつ。日の丸構図で、被写体との距離も同じ長さで(1メートルくらい)。課題の猶予は1ヶ月。被写体の縛りは特になくて、家族や友人、職場の同僚など、誰でも構いません。
というものでした。
同じカメラ、構図、距離で撮影してみて、それぞれの個性がどう出るのか探るのがこの課題の狙いでした。またポートレート撮影をしたことがほとんどない人もいたので、場慣れしてもらう意図もありました。さて、どうなったのか。
カメラや構図、距離という縛りを設定しても、それ以外の個性を構成する要素が膨大なためか、バリエーション豊かな写真となりました。先の3つの縛りを設定したところで撮影者が選ぶ被写体もそれぞれ、選ぶ背景もそれぞれなので、縛りを設定したことを忘れるくらいの多様な写真たちとなりました。その中で最も顕著に表れたのが、被写体とコミュニケーション出来ているかどうか、またその深度です。
受講者の中にはポートレート撮影をしたことがない人もいます。他方、たくさん経験し、熟れている人もいます。しかし熟れているからといってもそこに豊かなコミュニケーションの跡があるかどうかはまた別の話です。撮影者の独りよがりかもしれません。逆に経験が浅くてもハッとする、グッとくるポートレートを撮ってくる人もいます。天才がいるものです。もちろんコミュニケーションが上手く取れなくて、その破綻の様がそのまま如実に写ってしまっている人もいます。簡易なカメラですが個性が際立って興味深い結果になりました。簡易だから際立ったのかもしれません。
この課題は人によってはハードだったようで、数枚(数人)しか撮れていない人も多々いました。他方、活き活きと軽いフットワークで近所のコンビニ店員や銭湯の従業員などを撮りまくり、楽勝の人もいました。楽しんで取り組んでいる人はその楽しさが被写体にも伝わるようです。素敵なポートレートでした。
またこの課題の後にさらなる課題として、今度は同じ縛りで自分を撮ってもらうという課題を出しました。他者にお願いして自分を撮ってもらう。被写体になる気持ちを集中的に体験できますし、プリントしてみると撮影者によって自分の表情も変わるということが確認できるはずです。同じように受講者同士見比べてみて、再度個性についてみんなで考えました。以外だったのは、「あなたを撮ってもいいですか?」より、「私を撮ってもらってもいいですか?」の方が、他者の反応が良かったという声を聞いたことでした。人は撮られるよりも撮ってあげるほうが気楽だということです。時代もあります。しかも「写ルンです」は操作が簡単ですし、若い人には新鮮で関心を持たれたり、かつて使ったことがある人には懐かしく感じられて、撮ってもらいやすい環境だったかもしれません。
これらの課題は、ふとした私の思いつき、閃きでした。何だか面白そう。こんなワークショップは聞いたことがない。私の知る限りは。そして私自身もこんなこと、やったことがない。受講者の課題を観ること自体が私の学び、良い体験になると直感しました。これはほんのささやかな私の「オリジナル」かもしれませんが、これを読んでくださった方はぜひやってみてください。教える立場にある方も、ぜひやってみてください。
少し長くなってしまったので、私が考える個性を構成する要素は次回でご紹介します。私が考える撮影時の心構えも併せて。何卒宜しくお願いします!
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