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脳内マンション

秋、

麻布辺りの川沿いを歩きながら、ふと上を見上げると、
できたばかりの新築高層マンション。
建てていたのは知っていたけれど、
もう完成したのかな?

かなりの大きいので、
ちょっとだけ夜空を占有している。

月が見えないよぉ、
夜空はみんなのモノなんですけどぉ〜。


そのマンションをよ〜く見ると、
明かりの灯る部屋はごく僅か、
ほとんどが、まだ未入居の状態。





「どうしてェ?」と、
頭の中の子供が囁く。

「出来たばかりで、これから順次、入居するのさ」と、
頭の中の大人が諭す。



わたしの頭の中にも、
「脳内マンション」が建っていて、
住人もいれば、入居者審査もある。

審査をパスしなければ、
脳内マンションに住む事はできない。


例えば、
子供のような疑問は、即、却下され、
大人のもっともらしい説明が、審査をパスして入居。

でも、次第に同じような考えを持つ住人たちで、
脳内マンションの部屋は埋まって行く。

しばらくマンション管理組合は安定するけれど、
次第に少数の改革派を、
安定多数の住民が反対運動で潰すようになる。
高層階の住人によるマウントと言えるかも知れない。

すると改革は遅れ、
マンションは次第に老朽化してゆく。

低層階の住民たちは、
多数決による改革を断念して、

しばらく野宿になる覚悟で、
新しい引越し先を探す旅に出る。

自分の居場所を探す
「居場所難民」だ。




その日はマンションが、
月を隠していたからかもしれない。

妄想が始まる…。


あの川沿いのマンションは、

・noteを毎日3年間も書き続けられて、

かつ

・IQ135以上で、無条件に多様性を受け入れ、

かつ

・UFOを見たことがあって、寝室にトカゲを飼っている、
 どこかの国の総理大臣や都知事みたいに、
 決して傍観ではなく、共感の塊のような人だけが、
 住むことが許されるマンションなのでは?


でもそんな人たちは、
そう沢山はいなさそうだから、
部屋の灯りが、少ししかないのだろう。




そうか、

あの月を隠すマンションには、

きっとロボットが住んでいるに違いない!


賢いマンション住人



しかも、マンションの各部屋は、
実は丸ごとエレベーター構造になっていて、
コンピュータ制御の駐車場みたいに、
縦横無尽に移動できるんだ。

もし、ゴミを出す日を間違えたりすると、
自動的に部屋ごと下の階へ移動させられ、
庶民から羨まれる上層部での表示回数が減るんだ。

リビングルームはフルスクリーンで、
毎日ステキな映像をバックに、

今日の成績、
歩数と、スタンド、エクササイズ、の時間、
さらに、
微笑んだ時間、愛情を示した言葉の数、
が表示され、
管理人が「いいね!」と褒めてくれるんだ。

そして、ときどきポップアップで、
「あなたにオススメの隣人」が表示され、

💗マークをポチると、

移動装置が作動して、
ルービックキューブみたいに、
翌朝、お隣を入れ替えることができる仕掛けの、
スーパー・ハピネス・ラグジュアリーマンションに違いない‼️



ところで、
僕はどこへ住めばいいんだろう?
今夜の月は隠れていて、応えてくれない。


川沿いの停留所でバスに乗り込むと、
車内に乗客はまばらだけれど、
みんなスマホの画面に見入っている。

マンション情報でも見ているのかも知れない…。

僕は、同乗者を横目に、
バスの窓から見える、
この街の様々なマンションを眺めていた。


しばらくすると、
アナウンスが車内に流れる。

「次は、自由難民広場、このバスの終点です。
お忘れ物のないように…。」

自由、難民、広場、に忘れ物?

忘れ物…、

そうか、
僕は、住みたいところへ住めばいいんだ、

何も、街中のマンションに頭を下げて、

住ませていただく必要なんてないんだ!

この世界で住みたい所に住めばいいんだ!


でもそれは、

僕の脳内マンションしか、

ないかも知れないけれど…。

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