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キレイになる魔法の雑貨屋さん

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エッセイ、ショートストーリー、 幸せに役立ちそうな雑貨屋さんのようなコンテンツ
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記事一覧

ゆっくりと 狂ってゆく夏

地下鉄だから、 駅前にロータリーのない、 東京、白金台の駅前では、 さほど広くもない歩道上で、 バスを待つ人たち、 その脇を走り抜ける子ども、 ぶつかりそうになる スーパー帰りのお母さん、 さらに、 ベビーカーと電動自転車、 主人を待つ子犬、 様々な若い粒子が、 狂ったように入り乱れ、 どこか忙しい、 夏の夕暮れ。 横断歩道を渡り、 この辺りでは古株のお茶屋さんの脇を、 住宅街へと続く坂を降りて行くと、 途中、 見逃してしまいそうな小径がある。 いや、 見逃してし

私っぽい何か

週の真ん中っぽい、水曜の朝。 目覚ましがわりにコーヒーでも飲もうかと、 グリコは、 キッチンのエスプレッソマシンの前に立った。 「ヨネツチュウ シバラクオマチ クダサイ」 エスプレッソマシンに言われたので、 グリコは待っている。 彼が心の準備をしているのを、 待っている。 「そうだよねぇ、すぐには出せないよねぇ」 すると、 マンションのインターホンが鳴ったので、 グリコはすぐに出た。 心の準備はできていなかったけれど、 すぐに出ないと、 「不在」として、扱われる

それは「霧」よ

子供たちが〜 空を見上げ〜 ♪ っていう歌あったよねぇ〜。 白い塗り壁の3Fテラスから、 狭い通りの向かいにある1Fの花屋、 今日の空と同じ色の青いテントに向けて、 届かないと知りながら、 植物用の霧吹きを撒くケメコ。 夏。 両手を広げて、天井に向かって撒いた霧を、 自分でも浴びている。 「涼しくなぁ〜れ!」 グリコはキッチンでコーヒーを淹れながら、 ケメコの、 特に輪郭のない話を、 聞いているような、 聞いていないような、 でも、 リズムは合っている。 「あ〜

柵越え

もしピッチャーがマスコミだったとしても、 その球を見事に打ち返すバッターが、 大谷翔平。 プロのピッチャーが、 時に、 打者の打ち損じを誘う「変化球」を、投げるように、 マスコミも、 様々な球種(質問)を投げてくる。 その日、 大谷に投じられた質問はこうだった。 尊敬するアスリートは? 「 My wife ! 」即答だった。 打球は、 美しい放物線を描きながら、 柵を大きく越えて行った。 それを聞いて喜ぶ、ウチの奥さん 「 My wife だって〜! すっご

明日の風を纏う バスローブ

ケメコは、 忙しかった今日一日を、 振り返りつつ、粒子をシャワーで洗い流す。 外の世界でカラダに着いた様々な粒子、 ・あの人の顔色 ・あの瞬間の認識のズレ ・言葉にならないザワツキ 外の世界には、 様々な粒子がたくさん漂っているから、 それをシャワーで流す。 カラダに残し、纏うものと、 カラダから洗い流し、脱ぎ捨てるものに、 より分けて、 自分を 調える。 ケメコはシャワールームから出ると、 籠に用意しておいたバスローブを、 フワリと羽織った。 「 ん? 」

花火を仰ぎ見てみたい

浮世絵に描かれた昔の花火は、 想像以上に空の一番高い所にあって、 人が作り出した「仰ぎ見る光るもの」 として、 驚きと尊敬を込めて、 見上げる花火だったのでは? きっと、人々の心も、 花火と一緒に、 夜空の高い、高〜〜いところへ、 一緒に翔んで行ったのでしょう。 みんなが顔をあげ、 夜空の上の方の一点を探し、 光る同じものを見たのでしょう。 それより高いところには、 お月様とお星様しか、 いなかったことでしょう。 4年ぶりの隅田川の花火大会、 押し寄せた100万人の

あのとき、森が揺れていたような…、

BGM用 YouTubeの画面が映し出す、 森の樹々の映像から、 なんだか風が吹いたような気がして、 すっかり忘れていたあの空気を想い出した。 過ぎ去った過去は、消えたのではなく、 バラバラな粒子となって、 どこかで風に舞っているのかも知れない。 あれは、中学生の頃だったかなぁ、 ある日、登校すると、 美術の教科書に載っている様々な絵画が、 長い廊下にたくさん貼り出されていて、 100枚ぐらいあっただろうか…、 朧げにしか覚えていない。 そのたくさんの絵の中で、 どの

穴に落ちて「シアワセ」という店を探している

自分を探していたら穴に落ちた。 ヘッドホンで、 ジェファーソン・エアプレイン聴いてたから、 穴に気づかなかったのかも知れない。 それ以来、 わたしは穴の中の街を彷徨って、 シアワセという店を探していたの。 でも、探しても、探しても、 なかなか、 シアワセという店は見つからないの。 似たような名前のお店を見つける度に、 何か手掛かりがあるかも知れないと思って、 入ってはみるの。 ある時、 「夢」というお店を見つけて入ってみたわ、 「夢」の扉を開けると、廊下があるの。

新宿の南 人びとの西

さまざまな私鉄、地下鉄、JR各線が集中する、 巨大なターミナル駅、新宿。 人々のカオスと言っても良い新宿エリアの脇、 人々の最終目的地となりにくいからなのか、 みんな見たことあるけれど通過してゆく、 急行も快速も止まらない駅。 顔は知ってるけれど、 話したことのない2件隣の住人みたいな、 近いのに、なんだか遠くにある様な、 そう言えばあったなぁ…的な感じの、 南新宿駅 カラダに例えると、 なんとなく頭が東京駅で、 新宿は肩あたりでしょうか。 肩から伸びる腕は、 そ

それは白髪じゃなくってホワイトラビット

そう言えば、 今年はウサギ年だからなのかなぁ〜、 ときどきホワイトラビットが、 私の周辺で飛び跳ねるんです、 ピョン ピョン ピョ〜〜ンって。 ところで、 ホワイトラビットって何で白いんだろう〜? もちろん毛が白いからホワイトラビットなんだけど、 でもそれって、白髪なのかなぁ〜? な〜んて、 たわいもない事を考えるのもどこか楽しい、 もうすぐ春な天気の良い日曜日です。 でもねぇ、 そういう時に跳ねたりするんですよねぇ〜、 ウサギって。 とつぜん、 「 白髪が出て

家族鉄道999にアナウンスが流れる 

自分の居場所を探して、 地球上空を旅する列車、 「家族鉄道999」は、 地上約9,000メートルの高さを、 マッハ2のスピードで、 ユーラシア大陸を通過していた。 列車が大陸の東に差し掛かかり、 高度を下げ、緩やかに減速を始めると、 前方のスクリーンでは、 車掌の挨拶が始まった。 その姿は、 地域による家族制度の影響がミックスされ、 性別、年齢、国籍、宗教、を織り込んだ、 まるで多様性の向こう側に住む、 宇宙人にも見えた。 車掌はこのエリアで降りる乗客に向け、 アナ

大門のガーファンクルにコンドルは飛んでゆく

水曜、予定のない午後3時、 普段なら、あまり降りない駅、 大門に降り立った、 コンドルが舞い降りるように。 まだ世間の退社時間には早いから、 この時間から開いてる店を探す。 ぐるりと360度、山の上から、 獲物を探すコンドルのように。 店先から上がる煙に、 コンドルは狙いを定めた。 焼き鳥で有名な秋田屋である。 昔から、その存在は知ってはいたが、 これまでチャンスがなかった。 「仕留めるなら、今だ!」 コンドルは翼をたたみ、 秋田屋の暖簾をくぐった。 ※ まず、中

心に溜まったクラゲを消す

もし、時間に少し余裕があるとして、 たとえば予定のない午後3時、 その時間を、 ある程度リスクなく、失敗のない消費として、 楽しむ映画 と、 その時間を、 将来、何に繋がるか分からないけれど、 少しリスクを掛け投資して観る映画 どちらも選択できますよね。 確かに、 毎日頭を使い続け、 細かい感情に対応し続けるほど、 無限の力を持つ頭じゃないなら、 コーヒータイムのように休憩したいだろうし、 かと言って、 毎日こんなもの見ていていいのか? 意味があるのか?という、

春を呼ぶ 呪文

北陸の2月はまだ寒い、 上空にシベリア冬将軍が、 陣取っている。 春を探しているケメコは、 どこかに春が顔を出してはいないかと、 近所をくまなく探したが見つからなかった。 春は中々顔を出さず、 寒い日が続いた。 ケメコは、 冬将軍の寒さを堪えて、セーター編んでみた。 ちゃんこ鍋に誘って、一緒につついてみた。 けれど、冬将軍はおいとまするどころか、 上空に居座っていた。 ※ 2月14日、バレンタインデー、 巷では、 チョコが、トレンドに入った。 ケメコは、トレンド