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自社らしい組織制度を、半分畳んだ話。

こんにちは。「ファンと共に、時代を進める」をミッションに、Web3 ✕ AIで世界の在り方をガラリと変えていこうというスタートアップ「Gaudiy」で、組織開発に取り組んでいるLASSIと言います。

Gaudiyではこれまで、組織をプロダクト、社員をユーザーと見立て、さまざまな組織制度を前例にとらわれずつくってきました。

そのひとつが、2022年6月にリリースした「EMPOWER-DAY」です。


未来のための時間を、週イチで丸一日確保する制度「EMPOWER-DAY」

非連続な事業成長のためには、目の前のことだけでなく、並行して中長期的な目線で新しい概念や技術などを学びつつ試していくことも必要です。

しかし当時30名ほどの規模だったGaudiyは、やりたいことに対して人がまったく足りておらず、日々の業務に忙殺されてなかなかインプットや中長期の思考をするための時間を取れていないことが、大きな課題となっていました。

そこで、半ば強制的に「中長期的な探索ができる時間」を確保し、個々人をエンパワメントするという目的で始まったのがEMPOWER-DAYでした。

EMPOWER-DAYとは
中長期的な探索ができる時間を全社で一律に確保するため、週イチで水曜日を丸々一日、通常業務禁止とする制度

・水曜のAMは「半休」(休んでも自習しても好きな開発をしてもOK)
・水曜のPMは「通常業務を原則禁止」し、中長期的な探索に時間を使う(インプット / ディスカッション / 非公式プロジェクトの取り組み etc…)
・実質は週4.5日だが、給与はそのまま。

2022年6月に始まった「EMPOWER-DAY」


開始して2ヶ月の時点での評価は、概ねポジティブ

EMPOWER-DAYは、課題に対する解決策として歓迎され、実際に中長期的な動きが活発化。長い目で見て成果につながっているかどうかを後々確認する前提で、前向きに継続していくこととなりました。

当時書かれたnoteがこちら。400近いスキが付いているのを見ると、社外の方からも一定注目していただけた制度と言えそうです。Gaudiyらしさを端的に伝えやすいということもあり、採用のシーンを中心によく紹介させてもらっていました。入社前の私も、このnoteに「Gaudiyおもしろ!」と唸らされた一人です。


制度リリースから1年半後、当初のような活発さは失われてきていた

時間は大きく飛んで、EMPOWER-DAYのリリースから1年半ほど経ち、組織規模も80名へと大きく拡大していた2023年の年末のこと。

Gaudiyは、ビジョン実現に向けて事業戦略や組織戦略を大きくアップデート。特に組織面は構造から見直し、組織だった動きをより取りやすい体制に変更しました。

このとき私が思ったのは、EMPOWER-DAY、このタイミングで無くしてもいいかも?」ということでした。

理由の1つは、戦略も組織もある程度整理され、自律的に中長期的な探索をおこなう必要性が以前に比べてやや下がったこと。そしてもう1つは・・・正直なところ、EMPOWER-DAYが「ただのゆるい日」になってしまっている気がしていたことです。

後者について少しヒアリングをしてみたところ、予想を裏付けるような声が上がってきました。

「EMPOWER-DAY、あまり機能していないかも・・・」
「ぶっちゃけ他の日と同じように通常業務してます」
「導入からしばらくは機能していたけど今は・・・」

1年半のあいだに、当初活発だった「中長期的な探索」をしているチームは、かなり少なくなっていそうでした。

何ごとも、改めるのに遅いということはありません。まずは現状把握のためのアンケートを実施し、定量・定性の両面から分析していくことにしました。


社内アンケートで得られた情報を、KJ法で分析

この手のアンケートは特に、寄せられたフリーコメントの分析がとても難しいと、いつも感じます。人によって本当にいろいろな意見があるからです。

多数決ではないので、多数派の意見を飲めばいいというわけではありません。かといって、独自の視点で本質を見抜く超少数派の人の意見を優先すればいい、というほど単純でもありません。

そもそも意見というのは、どんな文脈をもった人の意見なのかによっても意見の意味が異なります。アンケートのコメントだけ見ていても、さすがに個々の文脈まではわからない。

こんなときGaudiyでは、「KJ法」を使うことが多いです。

KJ法とは
断片的な情報やアイデアを効率的に整理するための、王道的な手法の1つ。文化人類学者の川喜田二郎さんが提唱した手法で、頭文字をとってKJ法と呼ばれています。UXリサーチにおける分析手法の1つとしてもおなじみ。

KJ法は、個別の意見に惑わされすぎず全体像を整理できるので、賛否が分かれるアンケートのコメント整理に非常にオススメです。また副次的な効果として、KJ法を使い慣れることで、現象の裏側にある意図を想像する力が養える点も、推しポイントです。

KJ法によるアンケートコメント分析の全体像
アンケートコメントから「背景にある思い」を抜き出します
抜き出した「背景にある思い」を構造化して最終整理

KJ法について詳しく知りたい方は、こちらの記事がわかりやすかったのでぜひご一読ください。


丸一日から半日に圧縮してアップデートした制度「EMPOWER-MORNING」

EMPOWER-DAYは、2024年1月からEMPOWER-MORNINGとしてアップデート

分析の結果、EMPOWER-DAYには、機能している部分と機能していない部分の両方があることが見えてきました。以下、結論です。

【結論1】水曜午前の「休み」は、「自由時間」と定義し直したうえで残す

調査の結果見えてきたのは、ただのゆるい休み時間にも見えていた水曜午前の時間が、実は「事業を前に進めるためのセルフコントロール時間」として機能していそう、ということでした。

前提として、Gaudiyのメンバーは、毎週を短距離走のように働いていることがわかりました。そのなかには、水曜午前も働く(止まらないで走りきる)ほうが前進できる派と、水曜午前は小休止する(インターバルがある)ほうが前進できる派がいる、ということが見えてきました。

働き続ける人と、小休止を挟む人。一見すると真逆の行動ですが、両者の志は実は同じで、どちらも事業を前に進めるために午前中を使っていたのです。

業務派
固まった時間で残タスクを処理したり、いったん落ち着いて業務計画をねったり

休む派

読書、ジム、睡眠、平日にやっておきたい私用など

各々が各々の判断で、業務時間の内外で、セルフコントロール時間をとれればそれがよいけれど、チームで動く以上、自分だけの時間を自分だけでこじ開けるのは簡単ではありません。

であれば、週の真ん中に少しの自由時間(9:30-12:00の2.5時間)を全社一律で置くほうが、ヘルシーにチャレンジでき、継続的な成果創出につながるのではないかと考えました。

【結論2】水曜午後の「中長期的な探索時間」は無くし、他の曜日と同じ通常業務時間へと変更する

一方で、水曜午後の時間は、当初の目論見であった「中長期的な探索ができる時間」として機能しているとは言えませんでした。

代表的なコメント
- やるべき業務の量が減るわけではないので、通常業務禁止だけど内職的に通常業務している
- 通常業務をやる日ではないので、通常業務ではない個人的に気になることを一人でやっている
- 中長期的なことに使うべきな時間枠があっても、チームとしてどう使っていくかの指針がないので、特に中長期的な動きは生まれていない
- クライアントの都合で動くので、通常業務禁止と言われても難しい

ここでひとつ、予想外な事実も判明しました。それは、「中長期的な探索が、水曜以外の曜日でも社内各所でおこなわれている」ということです。

意義や目的があるときは、水曜午後に固定で時間枠が確保されていようが、それにとらわれず中長期的な探索活動は発生している。

であれば、水曜午後という週の10〜15%の時間は今すぐに解放して、通常業務時間としたほうがよいと考えました。いささか短期的な目線での結論ではありますが、今回の改善のそもそものきっかけは、事業戦略や組織戦略をシャープにすること。その意味で、結論は明確でした。


アップデートから半年後、どういう変化があったのか

EMPOWER-DAYをEMPOWER-MORNINGへとアップデートしてから、半年ほどが経ちました。結論としては、この変更は会社の前進に寄与していると言えそうなので、このままのカタチで継続していこうと思っています。

代表的な変化には、以下のようなものがあります。どれも当たり前で、小さな変化ではありますが、年単位で考えてみると、生まれるアウトカムの差はかなり大きくなりそうな感じがしています。

通常業務時間が増えたことで、やれることも増えた
これは非常に単純明快ですが、シンプルにタスクにかけられる時間が増えました。また、社内外の予定を入れる日時の選択肢も増えました。総じて、業務を前へ進めやすくなったと言ってよいと思います。

開発スプリントを、流れで進めやすくなった
以前は水曜で一度、スプリントの流れが切れていました。しかし切れ目がなくなったことにより、1週間を流れに乗って進めやすくなりました。(スプリントのリズムはチームごとに個別設定しているため、チームによります)

Slackメンションをためらわずに送れるようになった
通常業務禁止だと、相手に配慮するタイプの人にとってはSlackメンションを簡単にはしづらいところがありました。アップデートによって過度に気を遣わずにメンションできるようになっています。(ルール上は休日深夜問わずメンションOKな文化ですが)

水曜日にとらわれずに、MTGが設定されるようになった
もともと通常業務禁止である水曜日に合わせるカタチで開催されていた複数の会議や全社イベントが、この変更をきっかけに、より適切な頻度、適切な曜日に開催されるようになりました。


組織制度は、簡単にリビングデッド化する

当たり前の話ですが、あらゆる取り組みには必ず目的があります。

組織制度の場合それは、「社員のマインドや行動を、会社が願う方向へ向かって変容させたい」ということに尽きると思います。

もしその制度が、社員のマインドや行動を願う方向へ促進できていない場合は、制度のアップデートなり廃止なりが検討されなければいけません。放置すると極論「ものごとを何となくで進める会社」という認知を社内に生んでしまいますし、そうなったら今後新しい取り組みをおこなう際に、真剣に受け止めてもらいづらくなります。

しかし実際のところ、価値が消えかけたまま空転し続けている組織制度は、おそらく、あらゆる組織に潜んでいると思います。負債解消するタイミングを逃し続けると、そのまま何年も生き残り続けてしまうということもあるでしょう。

特にスタートアップでは、構造上、制度が空転しやすいです。外部環境も、社内状況も、目まぐるしく変化するからです。やることが山積みの中、優先順位の上位に「一度実装した制度の見直し」が来ることは、不自然ですらあります。

実際、EMPOWER-DAYを作った当初は、中長期的な取り組みを生み出す仕組みや、それを回すための運用コストを会社としてかけていました。でもいつからか、業務優先度の都合で、運用をだんたんとやらなくなってしまった。おそらくそれと同時に、中長期的な取り組みも、だんだんと萎んでいきました。

機能していたはずの制度も遅かれ早かれ機能しなくなってしまうものなのだとしたら、私たちは一体、どうすればよいのでしょうか。


組織制度を空転させないために

まずマインドセットとしては、「組織制度は常に未完成であり、永遠のベータ版である」と捉えることが大事だと思っています。

組織制度は、社員をユーザーとした、プロダクト開発と言えます。であれば、プロダクト開発と同じく組織制度開発も、常に未完成で、常に価値や仮説の検証をし続けるものなのだと捉えることが重要だと思います。制度のリリースは終わりではなく、始まりであると捉え、変化を追い続けるマインドを持つ。

具体的な行動としては、個人的には「定期的にアンケートを取り価値検証をする」まずはそれだけでもよいのではないかと考えています。何をどう変えるのかは、アンケートを見てから考える。何もしないより余程いいです。

EMPOWER-MORNINGについても、今後も引き続き定期的に価値検証をおこないながら、現状維持 or 改善 or 制度廃止を検討していきたいと思っています。


Gaudiyの航海日誌、ぜひ読んでみてください

メンバーひとり一人の「自分の人生のビジョンを成し遂げよう」とする力を駆動力に、「ファン国家の実現」という一見ふしぎで、だけど壮大なビジョンに向かって航海を続けるGaudiy。ぜひ他のnoteも読んでみてください。割と濃いめの航海日誌になっています。

MORE INFO
- 会社説明スライド:https://speakerdeck.com/gaudiy/culture-deck
- カジュアル面談ページ:https://recruit.gaudiy.com/casualtalk
- 公式Twitter:https://twitter.com/gaudiy_jp


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