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ICC KYOTO 2023 SAKE AWARDに参加しての思い出

2023年9月、ICC KYOTO 2023のSAKE AWARDに参加させていただきました。

日本酒に限らず、全国から集まった11の酒蔵が自慢の酒を出品し、酒のスペシャリストや酒を愛する審査員たちによる試飲体験を行い、予選ラウンドでは美味しさ製法へのこだわりブランディング想いへの共感といった観点から部門賞を選出し、決勝トーナメントに進む・・というイベントです。

参加された企業は、以下の通りです。(運営発表順)
haccoba -Craft Sake Brewery-
LIBROM Craft Sake Brewery
稲とアガベ
HINEMOS
阿部酒造
瀬戸内醸造
白百合醸造
マルカメ醸造所(フルーツガーデン北沢)
ANTELOPE
Off Trail – Azeotrope (Far Yeast Brewing)
森瓦店(飛騨クラフト)
RICE株式会社(YOROKOBI BREWERY)

我々HINEMOSは、11社が発表する予選ラウンドでブランディング部門では1位をいただきました !👏 日頃ブランディングに力を入れている我々にとって、こちらの部門で1位をいただけたことは本当に嬉しく思います。

ただし、決勝ラウンドでは敗退してしまい、優勝することはできませんでした。優勝は秋田県・稲とアガベの岡住さんです。

ちなみにこちらの記事は、たまたま家にあった稲とアガベ作の「稲とコウジ」を飲みながら執筆しております😌

全量米麹で仕込んだという理由で日本酒とは呼べないけど、この味わいは日本酒じゃない?という気持ちになる美味しいお酒

異種格闘技戦となった酒コンテスト

通常の日本酒コンテストの中では日本酒同士の戦いですが、こちらのコンテストではクラフトサケもミードもシードルも蒸留酒もクラフトビールもワインも参加している、異種格闘技戦です。こんなの初めてです。(みんな言ってました)

そんな中、我々は「日本酒」一本で勝負している。
その意味について非常に考えさせられるコンテストでした。
※ちなみに同じく「日本酒」カテゴリで勝負していた酒蔵には、阿部酒造の阿部さんがいらっしゃいます。

美味しさ部門でも日本酒で2位に食い込まれているのとかほんとにすごいと思います、あの場所のお酒のレベルはどれも本当に高かった・・。

日本酒で闘う意味

「日本酒」と名乗る以上、製法には制限が生まれます。
使用する原材料も限られているし、そもそも日本で作らないといけないです(注:SAKE AWARD自体は日本で作られたアルコール飲料ならばなんでもエントリーできます)。ミードや蒸留酒の多彩さに触れることもでき非常に学びがありました。(準優勝した谷澤さんの作るミード(ANTELOPE)は本当に美味しかった)

自分自身が日本酒業界にいるため、今回のコンテストでは改めてクラフトサケの自由さ、そこから生まれる味わいの驚きは非常に勉強になりました。
スパイス、ハーブ、フルーツを使い、またそこから生まれるコラボレーションも協力。同じ地域の産品を使ったり、「クラフト」の名のもとに同じ志の異業種の方とのコラボレーションができることなど、非常に羨ましくも思いました。
(haccobaさんがDandelion Chocolateとコラボして作った「カカオの夏休み」、haccobaさんの酒粕を使って作ったガトーショコラとのペアリングは衝撃的に美味しかったです)

レストランや酒屋など、介在する人がいる場所であれば、提供する飲料が日本酒であろうとクラフトサケであろうとも、そこはフラットに判断される世界。料理店で提供される料理の原材料を注文前に細かく確認しないのと同じで、「シンプルに美味い」ものが選ばれ、提供される世界と思います。


僕たちHINEMOSは、米と米麹だけを使って日本酒を作り、その縛りの中では本当に多様な味わいを表現できている自負はあります。たくさん日本酒コンテストでの賞もいただいています。

プレゼン資料を一部公開。ブランド誕生してから、多くの賞をいただいております。

が、スパイス・ハーブ・フルーツなど副原材料を使ったお酒に味わいの多様さ・複雑さの表現で勝てるのかというと・・・なかなか難しいな、そもそも勝負の土俵が違うなと正直感じてしまいました。
(例えば、日本酒でメロンみたい!みたいな表現はされますが、LIBROMさんのメロンのお酒を飲ませてもらい、ああこれが本物のメロンじゃん、と思わず笑ってしまうほど美味しかったです、柳生さん!)

(ちなみにこのような声は、クラフトサケを作る皆さんからも審査の過程で上がっていました。コーラ粕を入れたお酒を飲んだ同じグラスを使って日本酒飲んだら、前のお酒の香りとか残ってしまわないか?とかそういう話をクラフトサケを作る酒蔵の方からも発信していただいたこともあり、審査方法については協議を重ねていました。ICCが共創の場であると感じました。)

一方で、クラフトサケは「日本酒」としては売れない

ただ、まだまだクラフトサケ自体の認知が世論全般にされていない中では、クラフトサケは売る努力が日本酒の比じゃないとも思うのです。

「日本酒」を知らない人はいないけど「クラフトサケ」を知らない人はまだまだ多い。人は、知らないものは理解するまでの時間がかかるのですよね。
クラフトサケが分類される「その他の醸造酒」って、括りが広すぎる。

より具体的な例で言えば、Amazonの酒カテゴリの中に「クラフトサケ」というのはないのですよね。とはいえ日本酒でないのに日本酒を名乗ることもできない。じゃあどこに分類されるのか・・・?
分類がない酒は、消費者がカテゴリの中から探すこともできないので、マーケティング観点では非常に悩ましさが残りそうです。
※ちなみにAmazonの「お酒」カテゴリは下記のようになっています。

自分達のブランドを、どの角度から語るのか

今回のコンテストでは、お酒の専門家や、酒を愛する経営者の方たち(募集をいただいた一般審査員)に対してピッチをする機会をいただいています。ICCという場所の魔力もあり、皆さんこちらのプレゼン・ピッチを「聞く」姿勢ができている方ばかりです。

そのような事情もあったので、日頃消費者に向けた案内をする時に語る内容と、今回のICCの場で語る内容をかなり変えました。日頃カスタマー向けに説明している話とは全く別の角度から話をしています。

プレゼン資料を一部公開。

なぜなら、我々HINEMOSが創業されたきっかけにもなるのですが、我々は「日本酒は難しい」「専門用語が多い」と考えています。なので、日本酒の製法のこだわりなどはいつも説明の最後に持ってきたり、そもそもしなかったりすることも多いです。

プレゼン資料を一部公開。SHICHIJIのご案内資料です。

例えば、PM7:00がコンセプトの「SHICHIJI」を紹介するときは、
「乾杯にピッタリなスパークリングの日本酒で、フルーティーで甘く、アルコール度数も5%しかないので、老若男女誰とでも乾杯に使えます。これからはじまるパーティーの食欲を沸き起こすのにピッタリなお酒なので、よかったら飲んでみませんか?」という感じです。一切専門用語も使いませんし、英訳もすぐにできます。

また、どれだけ言葉を尽くしても、飲んでもらわないと伝わらないのが味わい、とも思っています。なので、すぐに試飲していただけるように「飲みたい!」と思ってもらえるような語りかけを心がけています。
(我々自身が直販していることも多いので、HINEMOSのポップアップや直営店では基本購入前の商品は全て試飲していただけるようになっています)


このSHICHIJIの説明を、例えば「瓶内二次発酵でスパークリングにしているのですが、これはシャンパンと同じ製法です」と話したり、他にも「低アルコール日本酒の製造の苦労は・・・」とか「使用している酒米はXXで、仕込みの酵母はYYで・・・」とか「酒母の段階で搾ることによって・・・」とか語っても、どうにも最初の理解としては「難しい」と思ってしまうのですよね。ルミネとかヒカリエでたまたまボトルが可愛いとか思って関心を持っていただいたお客様に話す内容としては、適切じゃないなと感じます。

想いはどこまで伝えるべきなのか

次は「想い」についてです。
私たちの会社としては「世界の日常を変える日本酒を」という言葉を掲げ、世界の日常に日本酒が根付いてほしいし、それができるポテンシャルが日本酒にはあると信じて日々活動しています。海外法人も最近設立しました😎
本気で海外事業を推進させています。

プレゼン資料を一部公開。シンガポールでのイベントの様子です。

ただ、それって日本国内でお酒を飲む人に関係ある?ともシンプルに思います。あの人にどんな贈り物しようかな、とか、今度の記念日にどんなお酒飲もうかな、とか考えている人に「世界の日常を変える日本酒を」という我々会社としての想いは、ちょっとtoo muchでヘビーにも聞こえます。

なので我々は「時間がコンセプトの日本酒」という、商品軸でのストーリーを国内で多く語っています。

日本酒は「地酒」とも呼ばれ、地域の想いを背負うが・・・

日本酒は、「地酒」と呼ばれることもあり、地元に根付いたお酒がたくさんあります。もちろん地元を背負うことのやりがいは十二分に感じます。我々だってHINEMOSは製造している小田原の人に飲んでもらいたいし、清酒製造免許の移転元である愛知県・森山酒造で製造していた蜂龍盃は今でも醸造し、製造場所は神奈川ですが愛知県の方々・地元の酒屋・道の駅などにお届けしています。それは我々の会社にとっても誇らしいことですし、受け継いでいきたい伝統でもあります。

蜂龍盃のデザインもリブランドし、一部地域での流通をおこなっております。

ただ、それを前面に出し過ぎてしまったときに多くの酒蔵と差別化ができるのか、ということもマーケティング観点でシビアに思います。郷土愛は多くの人が持っているもので語りやすいのですが、郷土愛を商品の軸に置いたらそれは刺さる人が限定されてしまわないか、と感じることもあるのです。
※郷土愛や地元流通限定などを否定するものでは全くありません。誤解なきように
※そもそも経営の目標、目指す姿は各社で違う中なので、外の人間が何かをいう話ではないとも自覚しています。
※優勝された稲とアガベの岡住さんの秋田・男鹿への想いやhaccoba佐藤さんの福島への想いは、本当に素晴らしく共感するもので、人の心を大きく動かしていると思うし、僕自身にもめちゃくちゃ刺さっています。

ICC SAKE AWARDは、想いを伝えながら商品を飲んでもらえる貴重な場

いい写真撮っていただきました

HINEMOSは、日本酒は世界に羽ばたけるプロダクトだと信じて、事業運営をしています。とても大胆に言えば、HINEMOSが日本を代表するブランドとして、日本を背負いたい。そんな想いをプレゼンではお伝えさせていただきましたが、結果的に優勝することはできませんでした。

話した内容自体には悔いはないのですが、会社として、ブランドとして、何を果たしたいのかをあらためて真剣に考えることができた。そして国内の「SAKE」文化へ改めてワクワクすることができた。ICC KYOTO 2023はそんな場所だったと思います。

多くの機会をいただきました

日頃、商品は味わいを中心に語られることが多いです。「想い」や「製法へのこだわり」をセットでお酒を飲んでもらえること。そんなに嬉しいことはなかなかありません。本当に貴重な機会でした。

また、酒造りを行う会社は全国に散らばっています。IT業界みたいに本社が東京に集積していたりもしていません。日本で、人生を賭して、酒を作っている。広い意味で「仲間」と思える人たちと会える。これも本当にありがたい機会でした。運営スタッフの皆様、共に戦えた皆様に感謝申し上げます。

・・・・とはいえ優勝できなかったことは普通にとても悔しい!!!
仕事の悔しさは、仕事でしか返すことができないので、これからも日々の仕事に邁進していきます💪

最後に宣伝

ストアマネージャーの募集も絶賛強化中です。世界の日常に日本酒を広げたい。そんなシンプルな志を持っている方、ぜひ一緒にお仕事できると嬉しいです!


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