見出し画像

あなたはだれ?

君は一体誰なの? いつも闇の帝都でヤンチャしてるけど メガロポリスを網羅する 幻影(かげ)はマルチメディアか? 電脳の悪魔か?
01MESSENGER〜電子狂の詩〜/サザンオールスターズ

ある日、自分宛に差出人も切手も貼っていない封筒が届いた。中には封筒より一回り小さな紙切れが一枚、紙切れにはこう書いてあった。
「あなたはだれ?」
ヨースタイン•ゴルデル著の「ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙」の中の最初の手紙だ。

特殊なBARで働いている為、素性を隠して楽しみに来るお客様も多いし、お客様のプライバシーにはなるべく踏み込まない様にしているが、そもそもBARと言うのはそう言う場所で、色んな人が色んな顔でこっそりと遊びに来て昼間とは違う顔で、お酒の力を少し借りながら日々の緊張を緩めに来る場所である。

そんな秘匿性の高い場所で従業員に対してお達しがあった。要約すると「この時代、どこで何をどう叩かれるか判らないからSNSは控えましょう」との事だ。
確かに人の噂と言うのは怖いし、SNSでの炎上なんかもよく見かける。
炎上するのには原因が有って、きっと誰かにとって許せない事が有ったんだろう。で、納得の行かない結果だったりのストレス発散の場としてSNSが使われる。

このご時世、BARと言う場所は叩かれやすい。晒し者にされては素性を隠して来ているお客様にも迷惑が掛かる。
やむを得ない判断だろう。
だが、問題はご時世では無く、関係の無い人が便乗して一緒になって誰かを叩いている事だ。無関係な立ち位置で石を投げて楽しんでいる。まぁ、江戸時代でも晒し首っていうのはビッグイベントでエンターテイメントだったもんね、皆んなで観に行ったらしいよ。解らなくは無い。
世界には未だリンチ刑というのが残っていて、沢山の人だかりの中人が殺されたり、生きたまま燃やされたりしているんだよ。
コロッセオで奴隷たちが死ぬまで殺し合いをさせられていたように、安全な場所から覗く暴力っていうのはエンターテイメントで、中には手を出したがる人も居るって事だね。人って大昔から何も変わってないのかな?正義という名の暴力。大義名分の元、人はとことん残酷になる。

SNSはmixi時代から店の宣伝や海外で出会った友人達との連絡手段、情報交換、自身のイベントやお店のイベントの告知等で使っていて便利な世の中だなぁっと思っていた。世界中の人達に小さな僕をアピールするチャンスが掌の中に収まるサイズであるのだ。が、ここ最近ではどうだ?中々に不便な世の中だ。
友達と言いたい事も言い合えない。冗談も言えない、誰が見てるか分からないし、どこで叩かれるか分からないもんね。SNSとの距離感も大切なんだね、ソーシャル ネットワーク サービス ディスタンス。

もうすぐ、好きな人と手を繋いで外を歩く事も出来なくなる時代が来るよ。
自粛警察の目が光ってますからね。

「あなたはだれ?」

僕は一体だれなんだろう?SNSでカッコつけて吐いた嘘に囚われて正義の仮面を被った残酷な誰かなのかもしれない。きっと○○警察は僕の中にも居て、世間を厳しく取り締まっているのだろう。正義の名の下に。

「あなたはだれ?」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?