宮崎ワークショップ_201810

コンダクターシップ実践ケース:宮崎スポーツヘルスケア産業創出

コンダクターシップの実践ケースとして、宮崎県をフィールドに地方だからできるイノベーション創出モデルを開発しています。とくに2019年ラグビーワールドカップ、2020年オリンピック・パラリンピックを見据えて、スポーツを通じた食と健康のオープンイノベーションです。宮崎県内だけでなく、省庁や県外企業(大企業、ベンチャーなど)も参加しています。ちなみに中心的なメンバーのうち数名は、私のコンダクターシップのトレーニングプログラムにも参加いただいています。


〇宮崎スポーツヘルスケア産業創出 プロジェクト概要
宮崎県をフィールドに現在、推進しているのがスポーツヘルスケア産業創出です。これはスポーツを通じた健康分野におけるオープンイノベーション施策で、とくに食分野を中心に事業創出を進めています。ちなみに宮崎は山も海も里もあって食材が非常に豊かで、プロ野球やJリーグをはじめとするスポーツチームが年間延べ1000チーム以上、キャンプに訪れる地域でもあります。この特性をいかした地方創生事業でもあります。地方創生事業なので宮崎県庁が事務局を担っていますが、主体は地域の事業者や生産者です。現在、Jリーグ加盟を目指す宮崎のプロサッカーチームとの実証事業を検討しています。

具体的な取り組みの一つとして、機能性食品開発を進めています。スポーツ選手の体調管理や筋力UP、疲労回復に貢献できる機能性食品を地域産品を使って開発する取り組みです。ただしこれはスポーツ選手に対する提供だけに終わりません。スポーツ選手に提供した商材を一般向けに修正し、健康に寄与する機能性食品として市場展開を狙っていきます。現在、複数の商品開発が進んでします。

別の取り組みとしては、ヘルスケアプログラムの開発も進めています。機能性食品が開発されたとしても、必要な時に必要な量を摂取できなければ意味がありません、となると、スポーツ選手それぞれの体調が把握できないと意味がないということになります。これに対してIoTなどの技術を活用して、スポーツ選手の体調を見える化する仕組みを解発しています。これも応用することで一般市場向けに健康管理サービスとして展開することを狙っています。

また上記のような施策を進めるためには、スポーツ選手をはじめとするスポーツ関係者に対する総合的な支援体制が必要になります。スポーツをビジネスとして扱っていく必要があるので、まずはスポーツビジネスについての知見を学べる環境も必要ですし、関連するデータを集積し、研究する環境も必要になります。ほかにも関係各所をマッチングしたり、資金等の支援をする仕組みも必要になります。こうした総合的なプラットフォームの形成の議論も進んでいます。


〇政策や企業戦略との連動
宮崎スポーツヘルスケア産業創出の施策は、省庁の施策や大企業やベンチャーの事業戦略とも連動していっています。まず、農林水産省のオープンイノベーションプログラムである”「知」の集積と活用の場”との連携を進めています。同プログラムのうち、機能性食品開発を進めている”セルフ・フードプランニング”の代表プロデューサーを私が務めており、宮崎県も参加していることもあって連携が進んでいます。またスポーツ庁の”スポーツオープンイノベーションプラットフォーム”との連携も始めています。ほかにもスポーツツーリズムやフードツーリズム、ヘルスツーリズムなどが注目されていることから、経済産業省の”おもてなし規格認証”と連携し、とくにスポーツを取り巻くおもてなし環境のデジタル化も取り上げています。なお、おもてなし規格認証についても私が認証機関をプロデュースしています。

企業の戦略については、実証実験の場としての提供も行っていくことを想定しています。とくに2019年のラグビーワールドカップや2020年のオリンピック・パラリンピックを見据えたとき、各社が提供する商材・サービスをテストする場となってきます。またスポーツは多様な実証環境としても使え、たとえばスタジアムの入場券やスタジアム内での飲食・グッズの売買などに関してはFintechが必要になります。食という文脈では、より安全に食を提供することが必要になるのでトレーサビリティなどの実験にも向いています。天候や怪我などによる不確定要素も多分にあるため、保険などのサービス開発にも向いています。このため宮崎県内だけでなく、東京からも参画している企業があります。

またスポーツは分野を超えて交流することができ、かつ新しい事業の可能性はスポーツ自体に対する十分な観察や関係者との対話を重ねるしかないため、人財育成の場としても非常に向いています。とくにファシリテーションやデザインシンキングを実践する人財を育成するには非常に向いていることから、人財育成目的で関わる企業も少なくありません。


〇将来への見通し
宮崎スポーツヘルスケア産業創出は一つのモデルケースです。それはスポーツ関連や健康関連の事業創出という意味だけでなく、地域資源を活かした地方ならではのイノベーション創出施策としてのモデルケースになると考えています。現在、宮崎をフィールドに構築しているビジネスモデルは、プレイヤーやコンテンツを変えれば教育や福祉の分野にも適用可能ですし、国内だけでなく海外にも持っていくことができます。将来に向けた成長モデルを小さく始める、そんな取り組みを現在宮崎で進めています。


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