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袋にいれましょうか?

無料だったビニール袋~優しい日本人

 先日、我が家で飼っているパグ犬の薬をもらいに近所のかかりつけの動物病院に行った時のことである。

 いつものように薬を出してもらい、支払いを済ませて小さな紙袋に入った薬を手渡された時に、受付の女性から
   袋にいれましょうか?
と言われた。

 その薬は、普段20日分を処方されてもらっており、いつもであれば紙袋だけで受け取るので不思議に思った。
 最近は買い物をすれば
   袋は御入りようですか?
と聞かれることが多いので、思わず
   有料ですか?
と聞きたくなった。
 しかし私の気持ちを察したのか、すかさず
   あっ!
   ご心配なく無料ですよ
と言われてしまった。

 何とも気恥ずかしくなりながらも
   お願いします
と言ってしまった。

 そしてその女性の手元を見ていると、薬の紙袋を小さな白いビニール袋に入れるだけでなく、わざわざその上の握る部分を軽く縛って中身が落ちないようにしてくれたのだ。

 そしてそれを見て、やっと「ピン」ときた。
   なるほど!
   そういうことだったのか・・・

 実はその日から遡ること約20日前もその病院に薬をもらいに来ていることになるが、確かその日は雨で、いつも通り薬をもらい、帰宅してしばらくするとその動物病院から電話があった。

 電話をかけてきた女性は
   先ほどお渡しした薬と同じものが
   病院の駐車場に落ちていました
   もしかしたらお帰りの際に
   落とされたのではと思い電話しました
と言った。
 
 このため私はすぐに持ち帰った紙袋の中を確かめてみると、確かに10粒入りのシートが1枚だけ足りないことに気づいた。
 そして、そのことを電話で伝えると
   実はお帰りになられたあと
   病院に来られていた別なお客様が
   お帰りの際に
   「駐車場に薬が落ちていたよ」
   と届けてくださったのです
と言われたのだ。

 早速動物病院に引き返すと、その電話をかけてきたと思われる女性が受付におり、申し訳なさそうな顔で
   すぐに薬を見たのですが
   半分は水に浸かりダメに
   なっていました
と言った。

 おそらく、雨が降っていたこともあり、慌てて車に戻った時に紙袋のなかから落ちたのだろう。
 そして病院ではその日処方した薬を調べてみて、当日同じ薬を買い求めた私のところへ電話してきたのだろう。
   
 私は
   いえ、こちらこそわざわざ
            ありがとうございました
   すみませんでした
と丁寧に詫びを述べ、ダメになった分の薬を買い足して帰路についた。

 穿った見方をする人なら
   のちのち薬が1シート足りなかった
   というクレームを受けないためでは
と考えるかもしれない。

 でも、この日わざわざビニール袋に入れてくれた女性は、おそらくその時電話をかけてきた人で、前回薬を渡した時のことを覚えていたのだろう。
 そして慌て者の私が、また薬を落とさないようにわざわざビニール袋に入れて、丁寧に結び目をつけて渡してくれたのだろう。

 きめ細やかな、いかにも日本人らしい配慮に感謝するとともに、多少照れもあり
   前科がありますからね・・・
と言ったところ、ほほ笑み返しをしてくれた。
 そのほほ笑みが何よりの証拠だ。
   やっぱりそういうことだったか
と一人ごちて帰宅した。

 そういえば以前も書いたが、日本は
    落としたものが届けられる
という世界でも例をみない稀有な国らしい。
 これは、他人に対する思いやり、つまり
    落とした人の心情を察する
という優しい気持ちがないとできないことだ。
    落とすやつが悪い
    騙されるやつが悪い
という発想をする国が多いなか、なぜ日本人はこれほども他人に優しくできるのだろうか。

 日本らしさ、日本人らしさが少しずつ失われていくような昨今ではあるが、日本人らしく、他人のちょっとした気遣いにも気づく人間でありたい。

 落とし物をするのもたまにはいいものだ

 彼女が結んでくれたビニール袋の結び目を見ながら、なぜか心がホンノリするひとときとなった。
 日本はいい国だ・・・

ありがとう!


 

   
   
   



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