「メンタル脳」アンデシュ・ハンセン著
中高生向けに書かれた進化心理学の入門書。「なぜ私たちは生きているのか」から始まり、「なぜ不安を感じるのか」、「なぜ記憶に苦しめられるのか」といった身近であるが対処が難しいテーマを進化心理学と脳科学の見地から平易な言葉で解説する。
人間の脳は群れから追い出されることが確実に死を意味した人類史の中で最適化された。そのため、脳はグループ内でのヒエラルキーを常に気にしているという。意識しなくても頻繁にスマホをいじってSNSやチャットを確認する。そして他人のキラキラした投稿を見て自分と比較する。自分の投稿への反応が気になる。結果が良ければうれしいと感じ、悪ければ不安が増大する。そのストレスが積み重なることで心の健康を害するのである。そのようなコントロールできない心の成り立ちを知ることがリスク回避の第一歩となる。
著者の母国スウェーデンでは多くの学校でこの本が無料配布されているらしい。自分の心の仕組みを知っておくことは、若者にとってどんな学問よりも大切なことだからだ。そしてそれは、よりよく生きたいと願う大人にとっても必要な処方箋だ。
「メンタル脳」アンデシュ・ハンセン著 久山葉子訳 新潮社
(この記事は私が業界誌に投稿した推薦図書文です)
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