9月は何かと上手くいかない、でも問題ない。

 アルゼンチンから急いで帰ってきて、日本人によるとあるサーモン養殖関連のセミナーに参加できたまでは良かった。ただ、その後から9月は何かと取材がリスケになった。まず、チリサーモン界のレジェンド、パブロ・アギレラ氏のインタビューが9月下旬に延期され、チロエ島・ダルカウエの漁民はなぜか取材日当日の早朝、漁業局から呼び出されたとかでチリ北部のバルパライソに出発。そのあと地元のNGOの代表に再度、別の漁民を紹介してもらうも、返事がない。

 こんな感じで9月前半が終わった。取材できたのは、日本人の大学教授と日系商社の現地人だけ。そろそろ南部に向かいたいし、リミットも迫っているので焦る。正直、これまでの取材成果をまとめることは不可能ではない。ただ、知れば知るほど取材対象が増え、キリがない。自分の中でも、しっくりこない。一ヶ月前、これまたサーモン界のレジェンド、アルフォンソ・ムエナ氏にインタビューして、未出版の彼の手記に出会ったときの高揚感が嘘のよう。あのときは何か、これから書き上げようとしているものが面白くなる確約をもらった気になっていたけど、全然ダメだ。

 もうこんなときは、南米ソングを聞いて気持ちをぶっ飛ばすしかない。ぼくを小屋に置き去りにして、サンティアゴへ帰省してしまったトリニのお気に入りナンバーで、チリ人歌手Joe Vasconcellosの「Magico(マヒコ)」。

 とにかく「Magico Ideal(マヒコ・イデアル)」というフレーズが頻発する。「理想の魔法」という意味。PVは何年前のものか知らないけど、マヒコ・イデアルを連呼するジョーが背景に合成された感じで体を揺らす。理想の魔法!理想の魔法!


 曲の終盤は、バカスカバカスカ音がなりながら、テンポが上がって気持ちが良い。マヒコ・イデアルを自分でも口ずさむうちに、何か今の状況が魔法によってもたらされた理想的な状況なんじゃないかと思えてくる。マヒコ!マヒコ・イデアル!

 もう、気分はラテンの楽観的な感じになってきた。何でもいいや、できることをやろう。何がどうどっちにどう転んでも理想の魔法の中にいるんだ。全く問題ない。

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