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【北陸新幹線開業に思う】

いよいよ、北陸新幹線の敦賀開業まで数か月、開業後の姿もなんとなく見えてきました。新幹線開業…といえば、地元も歓迎し、発展・利便性向上に期待を寄せる声が非常に高いもの…と相場は決まっていますが、現実的に今回の北陸新幹線開業、あまり利便性向上!と喜べるものではないことが、地元の反応などからわかります。

一部で盛り上がろうとしているだけで、どうもさまざまな弊害が起きている模様。
新幹線開業後はどうなるのか?見てみたいと思います。

☆富山から見ると…
対東京ではほぼ変わらず。まあこれは当然と言えば当然でしょう。
対大阪・名古屋はどうか?
今までは新幹線に乗車して直ぐに金沢での乗り換えを強いられていましたが、その乗り換え地点が敦賀駅に変更となります。
敦賀駅での乗り換えは同一ホームとまではいかないものの、上り又は下りのみの移動となるので、多少は今までより乗り換えの負担は減ります。
運転本数も、サンダーバードやしらさぎと接続する「つるぎ」に関しては発表内容から推測すると増発が見込まれています。
また、新幹線利用区間が伸びることにより、料金のアップはあるものの、その分の所要時間短縮(22分ほど)が見込まれるということで、まあ少し便利になる…というところです。

☆金沢から見ると
対東京では、富山と同様こちらもそんなに変わりはありません。
不便になるところは、延伸した分、それまでは始発で確実に座れていた自由席が、多客期には埋まっているという可能性があるところでしょうか。
一方対大阪・名古屋。
こちらはトータルで見るとかなり不便になると言えます。
時間短縮効果、22分と言われていますが、敦賀駅の乗り換えを挟むため、どうしても心理的な時間短縮効果としてはあまりよろしくありません。
金沢から見ると中間に近いところに乗り換えが挟まるのも、デメリットでしょう。
金沢から新幹線の乗車時間は45分ほど。敦賀で乗り換えて、サンダーバードで1時間20分ほど。よく言えば気分転換になるという考えかたもできますが、まあ大方の人にとっては煩雑なものでしょう。

☆福井から見ると
対東京では、北陸新幹線経由という2つ目のルートができることになります。
料金では高くつくものの、直通で、最短の所要時間は短くなる。本数も恐らく互角になるっだろうから、利便性は向上します。
ただし、乗り換えはあるものの、料金の安さでは東海道新幹線経由に軍配が上がること。また、乗車券を大回り片道きっぷにすれば節約できることから、一定層は東海道新幹線経由も残るでしょう。

その一方、名古屋・大阪方面は残念な状態になります。
3分短縮…とはいうものの、それは最短での話。途中の越前たけふに停車する列車では、現行とほぼ変わらないことになるでしょう。
また、名古屋方面のしらさぎに関しては、後述する理由から、恐らく殆どの列車で所要時間が長くなるかもしれません。
これというのも、新幹線区間となる福井~敦賀間は距離が短いだけではなく、この区間の在来線もそれなりに線形が良く、高速走行をしていること。

勿論、新幹線に乗車して直ぐに乗り換え。今までは直通で行けたのに…
その上で、料金も値上げとなる見込み。かなり不便になるといわざるを得ません。

<関西~北陸方面への旅客にとっては減便か?>
金沢~敦賀間では、在来線特急接続の「つるぎ」を25往復運転とあります。
しかし現状、サンダーバードは26往復運転。さらに、しらさぎが16往復走り、
恐らく新幹線の特性である、6時~24時しか運転できない。という規制がネックとなり、早朝・深夜帯の運転ができないのが問題なのでしょう。

輸送力としては、新幹線車両は12両とはいえ、在来線よりは大幅に輸送力は上がります。
ざっくり言って、在来線特急の18両に匹敵する定員です。
サンダーバードも車両は余剰となりますし、それに合わせて殆どの時間帯で12両に増結するのかもしれません。

<敦賀乗り換え…混乱はないか?>

大阪~北陸方面は現状の在来線特急としては、屈指の輸送量を誇ります。
なんせ9両~12両編成で、コンスタントにそれなりの乗車率があります。
さらに、そこにしらさぎ号による中京圏~北陸の輸送も加わります。
その中で、今回の北陸新幹線敦賀開業により、一番輸送量としては大きい根元に近いところで、ほぼ全員が乗り換えを強いられるわけです。
サンダーバードやしらさぎ号利用者は、やはり敦賀駅というよりも、さらに福井・金沢などに向かうのが主流になります。

今まで、新幹線の延伸開業で乗り換えとなる…というケースでは、これほどまでに輸送の流れを一気にぶち切るというのは近年ではなかったケースだと思います。
どちらかというと、需要がある程度落ち着いた、末端部分での乗り換えとなるケースばかりでした。

運転本数などから見ると、基本的には新幹線1列車に対して、サンダーバード・しらさぎ各一本ずつという感じで接続するでしょう。
そうすると特に新幹線⇒在来線の乗り継ぎパターンでは2方向に殆どの乗り換え客が分かれていくわけで、速達効果を高めるために最小限の乗り継ぎ時間(8分)とするでしょうから、問題なく乗り継ぎができるか?は未知数です。間違えて別の方面の列車に乗ってしまう…というトラブルもあるのではないでしょうか?

敦賀駅の全容も報道などで明らかになり、過去の新幹線↔在来線乗り継ぎ駅としては、最大規模の設備が整えられているとか。(しかし、これも大阪への開業時には無用の長物となる)

<福井~名古屋方面は、高速バスに転移の可能性も…>
北陸方面の鉄道VS高速バスの関係を見ると、比較的に高速バスの便数も少なく、基本的には鉄道の圧勝と言える状態でした。
というのも北陸本線・湖西線の線形が良いため、元々の運転速度が高く、速度の差が大きいこと。
そして関西方面に関しては、敦賀~京都間で高速道路が大回りしていることもあり、その所要時間の差はさらに広がることがあります。

しかし、乗り換えという壁が特に名古屋方面に関しては立ちはだかります。
今までは、少しでも急ぐなら名古屋~米原を新幹線→米原から北陸各都市へ乗り継ぎ。
という形で、乗り換えを嫌うなら、そのまま直通しらさぎに乗り続けるということも出来ました。(ただし直通は基本的に2時間に1本なので少ない)

しかし、そこに敦賀の乗り換えが発生します。
特に、名古屋~福井を最速で移動しようとすると…
名古屋~(30分弱)~米原~(30分弱)~敦賀~(約20分)
通勤電車の乗り継ぎか!というぐらいの細々とした乗り継ぎを強いられます。
まさに弁当を落ち着いて食べる時間もない…という状況です。

一応、発表では3分の時間短縮と言われています。しかし、乗り換えが増えることによる負担増加はそれを一気に打消し…というよりマイナスになるのではないでしょうか。
しかも、ダイヤ次第ではありますが、現実にはもう少し所要時間が増える可能性があると見ています。
同じ列車に関西方面の特急サンダーバードも接続することになるはずで、その場合はそちらを優先して、最短の接続時間とすると予想します。その場合、3分間隔で続行運転するとすると…結局時間短縮効果はないということになります。
ただし、しらさぎの最短時間をPRするために、1往復か2往復ぐらいは、しらさぎを優先した接続ダイヤにするのかもしれません。

因みに、不便になるのに運賃・料金は合計で1000円ほどUP。割引乗車券などがどのようなものが設定されるかによりますが、理不尽と言えます。

一方の高速バスは、所要時間では敵になりません。福井~名古屋間に3時間近くを要し、現状でも鉄道の倍近い時間です。しかし、直達性と運賃の安さは脅威。特に名古屋~福井間では、鉄道が不便になるのに合わせて付け入るスキができたと言えます。

このように、必ずしも良いことばかりではない…というよりマイナス面ばかりが目立つ、新規新幹線の延伸。
そういえば、もう1年少々前になりますが、長崎新幹線の開業も同じようなことが言われました。
折角、多額の資金を掛けて開業する新規路線が、このように効果どうなの??という疑問符だらけなのは、ある意味政治主導で建設される側面もある日本の整備新幹線の問題点なのかもしれません。確かに、新線開業による誘発効果もあるかもしれませんが、一番大事なのは、まずは既存のユーザーの利便性なハズ。
本当に必要なのか?効果は最大限に発揮されるのか?実際の利用者に対して便利になるものなのか?議論をした上に建設されることを願います。

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