カーブミラーと道路(雑記)
静かな夜だった。夜風はぬるく、停滞していた。
服の中で揺蕩う温度はひどく淀んでいて、足を踏み出すことすら億劫だった。
いつも通りの帰り道。夜空と道路が混ざって境界線が曖昧だった。
空から星がこぼれて、街を色づけている。星を踏むたびに、鉄琴を打ち鳴らすような音が響く。
星の色ごとに奏でられる色が異なっているようで、ダンスを踊るようにあちこちの地面をぐるぐると歩き回る。
そうしているうちに、少し前までの不快感は吹き飛び、足取りが軽やかになっていった。
街灯の明かりはミルクのような色と質感をたたえ、星と混ざり合って波打つ。
いつしかその波がメロディーを奏で始める。
どこかで聞いたことのあるような、けれど、まだ誰も奏でたことのないような。
雑多な音の集合体と、軽やかなメロディーとの間を行ったり来たりする間に、徐々にまとまりを持っていく。
道路の角で佇んでいるカーブミラーだけが、その光景を静かに見守っているように見えた。
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