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5G線上のアリサ【第3章#3話】

#3話:崩壊



【視聴時間=04:20】


「―――実家に行ったの! 精米機が十台くらい並んでいる奇妙な家だったわ。彼のお父さんに会えたけど、すでに松本市に住んでいると言われて門前払いをくらったの!」
清水

誰もアリサのフォローをしない。

ロートルズは肩を掴み、励ます以外誰にも共感されることもなく蔑まれては、

疑問のタイムラインが乱立しながら〈クズ〉と殴り書かれーーー

「―――そう……あたしはクズよ。人間のクズ。最低な女! 激しく同意禿同だわよね、共感しなさいよ! まとめサイトで繋いでWikipediaを完成させればぁ?」

24時間前はこんな愛利沙がいるとは露とも知らず、ロートルズは壊れた彼女をどこで止めるか考えながら、加護がハンカチで涙と鼻水を拭う姿をしばらく見つめ、一致団結。

「まだだ……」と耐えてハンカチが落ちる時を待つ。

ツリッターもブログも荒れて見世物状態となった愛利沙。

彼女はどんどんフォローが減る中、別れの記憶と向き合った。

「……それで結局彼と別れることになったのだけど、最後に言われた言葉が今でも忘れられないの。“過度な自己愛は他人を傷付けるから”って―――」

その後、暗示をかけるように愛利沙は人を好きになれない。

見知らぬ他人ひとには痛い言葉が老人たちに突き刺さる。

「―――そんなことを言われたら、誰とどんな風に接していいのか分からなくなって……元々おかしな人生がどんどん狂っていった……あたしの本名はバレているのでしょう? 愛に利己と書いて愛利沙。この名前を見るたびに自分のことが嫌いになって……この歳になるまで誰とも付き合えなくて……」

痛みを伴う懺悔が終わり、まとめサイトの空白が埋まる。

その日、愛利沙はロートルズに無言のフォローをされたまま、彼女が一体どうして今まで病んで悩んできたその理由わけを、ようやく知って新たな一歩を踏んだ彼女を抱き寄せたが―――

「―――よして! あたしがツリッターを上手に使えない理由もこれで分かったでしょう……親からも、教師からも、生徒からも見放されて……社会を憎んで、自分が傷付くのが怖くて他人に対して踏み込めないままでいるからよ! あたしが使いこなすには一番程遠いアプリよ。なぜならツリッターは共感をして繋がり合うものだから!」

どんな言葉も届かない。

この日のことは記事になって、アリサは岐阜でも悪い意味で有名人に。

幻滅をしたフォロワーは離れ100万人から9、8、7と、桁は減り去り捨て台詞を吐き誰も彼女をかばわないまま興味本位。

面白半分。

希薄な繋がりなのが分かり、SNSの恐怖の部分を生で体験させられた。

「これがあたしの人生よ! これがあたしという人間よ! もしも過去にセーブができてこんな終わったコンテンツオワコンの人生をやり直せるなら、恋愛廃人になるなと……いいえ、G線上ネットなんてやるんじゃなかったって自分に言い聞かせたいわ!」

「……あぁ―――」

「―――我らがツンデレラが……壊れてしまいましたね……」
清水/ロートルズ

アイムソーリーのフォローに始まる惨状に対し怒りを覚える。

けれども事態は愛利沙が抱える病にフォーカスし始める。

過去から現在に至るすべてが暴かれ晒され壊れていく。


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