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編集者あるある -誤植が愛しい

編集部の高尾が「雑誌編集の苦悩」みたいな投稿をしたからではないけど、いや、したからだけど、前々から書こうと思ってたやつを。

編集者あるある。

なんの職種だろうと存在する、職業(職能)あるある。編集者にも、やっぱりたくさんある。

誤植が好き

好きっていうか、気になる。

電車に乗ってると、広告、見るよね。広告に誤字脱字はそうそうないけど、「うーん、ここは『は』より『が』にしたいよね」とか、「3点リーダーは2個並べたいな」とか。そういう表記の部分は気になっちゃう。改行の位置とか、「ここはセンター揃えのほうが……」とか、気になっちゃう。

でも、もっと気になっちゃうのは誤植。最強は中華料理屋。ネット界隈で有名な「ラーメンがうーメン」とか「ビールがビーノレ」とか、音も文法も無視して見た目だけで乗り切ろうとする感じが最高。かつて『VOW』を愛読してた僕の琴線に触れまくる。

その系譜の原点にして頂点にいるのは『ゲーメスト』だと思う。小学生時代から「塾で必要なテキスト代がー。月謝がー」と偽ってゲームソフトを買ってたくらいのゲーマーだった僕にとって、『ゲーメスト』はバイブルだったよね。ゲーメスト立ち読みしてゲーセン行って、「あの連携からこのコンボ、実はつながる?」みたいなことが気になってまたゲーメスト読みに戻って……みたいなこと平気でやってたくらいの僕にとって。

逸れたけど、誤植。当時、テキスト全部なのかキャプションだけなのかはよく知らないけど、とにかく手書きの原稿をデータ化して印刷してたらしく、うーメンに通ずる誤植が頻発してた。最たる例は「スーパーウリアッ上」。ウリアッ上って何だよ!っていうと、ラリアット。あと、「インド人を右に」。インド人は何かって、ハンドル。いや、何言ってるか分からないようで、文字をよーく見ると絵的に、図形的に、「確かに」ってなるから怖い。いや、愛しい。

何よりゲーメストが最高なのは、伝説のあれ。当時、ゲームの攻略情報とともに、ストリートファイターの漫画が連載されてたんだけど、これがすごかった。

この漫画、ストリートファイターシリーズでおなじみの主人公リュウと、ストリートファイターⅢの主人公アレックスが対峙するシーンで終わるんですよ。"新世代"のアレックスがレジェンドであるリュウに戦いを挑む。リュウは言うわけです。漫画を締めくくる最後のセリフとして。

確かみてみろ!

1年にわたって連載された漫画の、最後のセリフが「確かみてみろ!」って。

でもね。思うんです。最も誤植に気づきやすいのは編集者だろうけど、最も誤植に寛容なのもきっと編集者だろうと。なぜって、いつ己の身に降りかかるか分からないから。校正という作業の途方もない苦労も、「これはイケる!」と確信して終えたのに、見本誌が届いた瞬間に誤植を見つけてしまう絶望感も、全部知ってるから。

喜び勇んで、あるあるを列記するつもりで始めたけど、長くなったから続きはいつかまた。


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