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クレイジーな職業

「社会に出てからずっと編集者」。そんな汎用性の低い僕からすると、世の中には「自分にはできないな」と感じる職業がたくさんあるわけだけど、なかでも「ヤダ、なにこの想像を絶する能力を備えた人たち!」と思う職業がいくつかある。

まず彫刻師。たとえば粘土みたいなものをこねたり、形を変えたり、付け加えたりしながら何かを形づくるならわかる。いや、自分にはできないけど、想像の延長線上にはある。でも、削るって。引き算オンリーて。そのセンスというか能力、特殊すぎやしないか。

続いて漫画家。かつて「このマンガがすごい!」というテレ東の、テレ東らしいかなり攻めたドラマの第1回で、森山未來がこう言っていた。「漫画家は神の視点」って。そうなの。物語も、コマ割りも、アングルも、衣装も、設定も、擬音を表す文字の大きさも、全部一人で決めるって、もう神じゃん。模写しかできない僕からすると、やっぱり想像の範囲を超えている。

小説家。編集という物書きに近い立場にいるからこそ思うけど、文章を芸術にするって狂気の沙汰。2000文字の原稿ですら真っ白な紙(いやWORDだけど)を前にするとプレッシャーを感じるもの。無限すぎて怖い。文って、基本的に誰もが使える(使ってる)ものだからこそ、それを芸術表現の術として使うには勇気がいる。文豪がこぞって自殺するのも、少しだけわかる。

で、サッカーの文脈でいうと何だろう、と。

もちろん選手もすごいんだけど、やっぱり監督ってヤバい(語彙)。毎週数万人の衆人環視のなかで、それも衆人というには憚られるくらい感情移入全開の人たちの前で、勝敗の責任を負う。数億円、数十億円レベルの収入をたたき出す自尊心の塊みたいな選手たちに言うことを聞かせる。聞かせるだけの理論をまとい、コミュニケーション能力を発揮する。根性のひん曲がったメディアの前で平静を保つ――。

求められる能力が多すぎる。棋士みたいな思考と、政治家みたいな先導力と、経営者みたいな決断力と、博打打ちみたいな勘。頭のおかしい、クレイジーな職業だし、まともな人にはできない仕事だと思う。

そんな思いを、次の特集にしようと思います。タイトルは「Crazy Managers」。ユルゲン・クロップやクリス・ワイルダーのインタビューのほか、ジョゼ・モウリーニョ、ディエゴ・シメオネ、スヴェン・ゴラン・エリクソンなどなどのコンテンツを収録します。

「SOCCER KING」1月号は、12/13(金)発売です。つまりは、長めの前置きの末に訪れる、ゴリゴリの宣伝。

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