「……たり」の後ろはどこまで?
複数の動作を並べるときに、「……たり」を使うことがありますね。これは、次のように「……たり、……たり」と繰り返して使うのが基本です。
バスが止まるまで、座席から立ち上がったり、席を移動したりしないでください。
後半の「……たり」は別になくてもいいじゃないか、という声が聞こえてきそうですが、果たしてそうでしょうか。次の例文を考えてみてください。
歩いたり走ると転倒する人が増えるという理由から、立ち止まってエスカレーターを利用するよう呼びかけられている。
この文では、「……たり」が繫いでいるのは歩く人と走る人なのか、それとも歩く人と走って転倒する人なのかがわかりません。やはり次のように、結びつける語句の後ろにそれぞれ「……たり」を付けた方が、並列関係は明確になるでしょう。
歩いたり走ったりすると転倒する人が増えるという理由から、立ち止まってエスカレーターを利用するよう呼びかけられている。
後半の「……たり」が抜けているのは、数学でいえば
とすべきところを
とするようなものです。かたまりを意識することが大切なのは、文章でも数式でも変わりません。こう考えると、「文系の国語」「理系の数学」とそれぞれ異質に見える両者も、実はお互い似ているもののように思えてきませんか。
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