コンテストなんかやる前に……
レオ・ルイス及び稲垣佳奈両特派員による、18日付『ファイナンシャル・タイムズ』の記事「Japan’s latest alcohol advice: please drink more」にあった、国税庁の酒類の需要喚起に向けた提案を募るコンテスト「サケビバ!」は、見当違いである。というのも、現行の日本の税制は公正な競争を阻害しているからだ。
日本の酒税体系は歪な構造となっている。ビールの酒税がアルコール度数の割に高く設定されているのである。一方、高級品であるはずのワインの税額はビールのそれのおよそ6分の一、ウィスキーはおよそ4分の一である。消費税と合わせると、ビールにかかる税金は販売価格のおよそ半分にも上る。
なぜこのような奇妙な制度になっているのかというと、発泡性酒類とそれ以外とで課税基準が異なるからである。発泡性酒類はアルコール分にかかわらず一定であるが、それ以外はアルコール分に応じて税額が設定されている。これには歴史的な経緯が関係している。
かつては担税力を考慮して、ウィスキー、ブランデーなどは従価税を含む高い税率であった。これが貿易障壁だと主張する欧米からの圧力により、1989年にアルコール分に応じた税率となった。同時に、分類の異なるビールの税額が高くなるという逆転現象が発生した。
税制の裏をかくようなビール業者の経営努力により、現在では麦芽比率を下げた発泡酒なる奇妙な商品が生まれている。だが、これも2026年には本来のビールと同じ税率に統一される予定である。
日本人は本物のビールが高くて飲めないので、ビールもどきの飲み物で我慢しているのである。低アルコールのビールの税率を引き下げた方が、販促面でも健康面でもプラスではないだろうか。むやみやたらなキャンペーンよりも、公正な税制の実現を優先すべきである。
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この投書の原文は8月22日付『ファイナンシャル・タイムズ』に掲載されています。
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