見出し画像

作品名の書き方、こんなときどうする?──プラトンの著作の場合

プラトンの著作の翻訳は、「ステパヌス版」と呼ばれる全集が標準的な底本となっています。これは、ジュネーブの古典学者で印刷業者でもあるアンリ・エティエンヌ(1528年―1598年、ラテン語名:ヘンリクス・ステパヌス)の印刷工房が1578年に出版したものです。

ステパヌス版の全集は、一つのページのうち、本の内側にギリシャ語の原文が、外側にラテン語の対訳が印刷されていて、ギリシャ語の原文には10行毎にラテン文字が振られています。

プラトンの著作から引用する場合は、このステパヌス版全集のページ数と10行毎にあるラテン文字を示すのが慣例となっています。例えば、

「こうして、このような囚人たちは」とぼくは言った、「あらゆる面において、ただもっぱらさまざまな器物の影だけを、真実のものと認めることになるだろう」(『国家』515C)

の「515C」は、ステパヌス版全集515ページのC以降の行に引用箇所が含まれていることを示しています。なお、ステパヌス版全集は3巻で構成されているので、著作物名(『国家』)の明示は必須です。

ステパヌス版全集の対応箇所は、一部を除いて岩波文庫の翻訳にも記載されています。

なお今日の翻訳出版では、オックスフォード古典叢書(Oxford Classical Texts)から出されたジョン・バーネット(1863年―1928年)の校本を直接参照することが多いようです。これらにもステパヌス版全集の対応箇所が記されています。

皆様からの尊いご寄付は、今後の執筆活動に活用させていただきます。なにとぞご支援を賜りますようお願い申し上げます。