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変体仮名について

写真の右2つの文字、何と書いてあるかわかりますか。

見慣れない文字ですが、「そば」と書いてあります。平仮名ですが、私たちが普段使っているものとはちょっと違います。

このような、現代のものとは字形が異なる仮名文字を変体仮名といいます。

変体仮名が普通の仮名文字と何が異なるのかというと、元となる漢字が異なるのです。

冒頭の例でいうと、私たちの知っている「そ」「は」は、それぞれ「曾」「波」を崩してできたものです。一方、写真の字は、それぞれ「楚」「者」が元になっています。

現在知られている変体仮名は、そのほとんどが平仮名です。片仮名にも変体仮名はありましたが、平安時代に現代と同様の一音一字にほぼ統一されました。これに対して平仮名では、明治初期まで変体仮名も盛んに用いられ、一音節に対して複数の文字が併存する状況が続いていました。

片仮名が主に漢文訓読、平仮名が和文に用いられていた経緯から、変体仮名を含む平仮名は万葉仮名の派生形と考えることができます。万葉仮名とは、上代において日本語の音を表すために記された漢字のことで、「波奈(はな、花)」のように、字義にかかわらず表音文字として漢字の音を借用した形態をとります。この万葉仮名として記していた漢字が、草書化されていくうちにできたのが平仮名というわけです。

万葉仮名も、変体仮名と同様、一つの音節に対して複数の漢字が用いられていました。したがって、和文の書き手としては、漢字平仮名の区別はなく、終始万葉仮名を使っているような感覚だったのではないでしょうか。

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