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言葉の覚え書き

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#漢字

『言葉の覚え書き』目次

【第1部 表記】組版右横書き 文体口語体と文語体 常体と敬体 能動と受動 文のねじれ 「べき止め」 「さ入れ表現」 可能の表現 助動詞「れる」「られる」 可能動詞 「ら抜き言葉」 用言の活用と音挿入 改行・段落改行と段落 文字種日本語の文字体系 全角と半角の使い分け アルファベット、アブギダ、アブジャド ギリシャ文字 Unicodeについて ヘボン式ローマ字 漢字常用漢字 同音の漢字による書きかえ 字体・字形 仮名現代仮名遣い 「じ」「ず」と「ぢ」「づ」 漢語に続

読めますか?──「形相」

二とおり読み方があり、それぞれ異なる意味を表します。 ギョウソウと読んだ場合は、顔かたち、表情のこと。ギョウは「形」の呉音。 ケイソウと読んだ場合は、哲学用語で個物に内在する本質を指し示すもの。アリストテレスが「質料」ὕλη(ヒュレー)に対置する概念として用いたεἶδος(エイドス)の訳語です。例えば、彫像の材料となる大理石が質料だとすると、彫像の表す形が形相になります。

「豆鼓」?

2文字目が違います。「鼓」ではなく「豉」。 「豆豉」の読み方は、日本語の音読みならトウシ、中国語読みであればトウチ、トーチーなどとなります。 「豆豉」とは、蒸した大豆を醱酵させ、水分を減らした中国の食品です。

「興行」と「興業」

「興行」は、演劇やスポーツなどの催し物。 「興業」は、新たに事業をおこすこと、産業を盛んにすることです。

「頭骸骨」?

ズガイコツは、「頭骸骨」ではなく、「頭蓋骨」。「頭蓋」とは、脊椎動物の頭部の骨骼を指します。 ちなみに、医学や生物学ではトウガイコツと読むそうです。

「耳を『そば立てる』」?

「そばだてる」は「欹てる」と書きます。

読めますか?──「神韻縹渺」

シンインヒョウビョウ。 芸術作品のきわめてすぐれているさま。 「神韻」は詩文の神業のような趣、「縹渺」は遠く遙かな、の意。 「縹渺」は「縹緲」「縹眇」とも書きます。連綿語で文字自体にそれほど意味はありませんから、どれで書いても構いません。

読めますか?──「人間青山」

ジンカンセイザン。 幕末の僧、月性(1817―1858年)の詩「将東遊題壁」にある「人間、到る処青山あり」から。 「人間」は人の世すなわち世間、「青山」は墳墓の地。 骨を埋める場所などどこにでも見つけられるのだから、故郷を離れて広く活動すべきである、という意味です。

読めますか?──「庫裏」

コリではなく、クリ。クは「庫」の呉音。 寺院の台所。転じて、住職やその家族の居所を指します。

「いく」? 「ゆく」?

通常「行く」の訓読みは「いく」ですよね。しかし一方で、電車の目的地などでは「……ゆき」と読まれます。「いく」と「ゆく」では何か違いがあるのでしょうか。 『日本国語大辞典』『広辞苑』『大辞林』の記述によると、いずれも、「いく」「ゆく」は上代から併存していたものの、漢文訓読を中心に「ゆく」の使用例が多かった点は共通しています。「ゆく」の方が比較的文章語に近い響きがあるようです。言われてみれば、現在でも「立ち行く」「移り行く」などの慣用表現は、「ゆく」と読むことが多いですね。

読めますか?──「纏う」

「まと(う)」。身につける、巻きつく、からみつくの意。「つきまとう」の「まとう」ですね。 「まとめる」も同じ字で「纏める」と書きます。

読めますか?──「膾炙」

カイシャ。「膾」は「なます」、「炙」は「あぶ(る)」と訓読みします。 生肉の切り身とあぶり物は多くの人の口に合うことから、「人口に膾炙する」の成句で、世間に広く知れ渡ることをいいます。

「脅迫」と「強迫」

この2つには意味の重なるところもありますが、一般的に「脅迫」は相手を脅す、「強迫」は無理強いをするという点で区別します。 法律上では、「脅迫」は刑法上の概念、「強迫」は民法上の概念とされています。

「もぬけの空」?

「蛻ける」とはセミやヘビが脱皮することで、「蛻」はその抜け殻をいいます。したがって、人が去った後の空間は「もぬけの殻」が正解です。