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アヒルのトーマス

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アヒルのトーマス #1

アヒルのトーマス #1

 アヒルのトーマスは、まもなく訪れるであろう客人を迎えるための準備におおいそがしでした。といっても、トーマス自身は従者にあれこれと指示をだすだけで、腰をおろした椅子の上から一歩も動こうとはしません。なぜかって、もちろんそれにはきちんとした理由があるのですが、まずはそのトーマスについて簡単に紹介させていただきましょう。
 トーマスは動物仲間のうちでは知らぬものがいないほど著名な発明家でした。彼の生み

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アヒルのトーマス #2

アヒルのトーマス #2

 約束の時刻よりちょうど十五分ほど前に、アルバートたち一行はやってきました。トーマスはアルバートのほかに、数名の友人を招いていました。彼らは反目しあうアルバートとは違って、みんな気のよい研究者仲間たちでした。
 カモノハシで昆虫研究家のアンリ、ハクチョウの考古学者ダルトン、数学者で好物の豆の数をかぞえるのが大好きなカワラバトのデンター、ちょっと変わったところでは、あわれな動物保護団体なる組織の責任

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アヒルのトーマス #3

アヒルのトーマス #3

「ではダルトンさん、ご協力願えますかな?」
 名指しされたダルトンは一瞬ピクリと体をこわばらせましたが、なんとか平静をよそおって、「え、わたしですか?」と言いました。
「もちろんです。さきほど、物忘れに悩んでいるとおっしゃっていたではありませんか。ささ、こちらへ、こちらへ」
 ダルトンはトーマスに従うまま、機械の前にある椅子に座りました。もちろん彼はトーマスの発明品を疑っていたわけではありませんが

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アヒルのトーマス #4

アヒルのトーマス #4

 トーマスとダルトンは爆発の衝撃で勢いよく吹きとばされ、壁に頭をしたたかにぶつけてしまいました。
 まわりにいた観客たちも、びっくりして机の下に身を隠したり、椅子ごとひっくり返ったりしました。
「ダルトンさん、だいじょうぶですか? ダルトンさん」
 トーマスはぶつけた頭を手でさすりながら、車椅子でダルトンのもとへ駆け寄ると、ダルトンの体をゆすぶりました。やがてダルトンは目を覚ましましたが、うつろに

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