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【考察】パーメット、GUNDによって繋がるアド・ステラの子供たち-前編

今回は大妄想考察です。
今までのも妄想だろって?そうですね…。ですが今回はさらなる妄想考察です。ほぼほぼ妄想です。
ラウダに注目してみると、スレッタと設定的に同じ部分があるのもそうですが、どうにもアニメの描写を見てみると、ラウダがサブキャラと言うにはこれまでの考察通り設定が詰め込まれているし描写も多い、しかし描写的にはメインとは言えない。

なんとも絶妙なのですが、これって描写を省いているのではなく描写ができなかったのでは?そういう視点で見てみると、すべてが怪しい。

そして、アド・ステラの世界観を当てはめて考えてみると、この子、特殊能力枠か?と思いついたので述べていきます。ただし、今回は描写もあるにはありますが推測でかなりを補っているので、妄想がほとんどです。ので、ほぼ私の脳内博覧会になりますね…。

例のごとく、前編中編後編、編成になります。前編ではラウダとスレッタの怪しげな描写に注目し、その共通点や能力、あの世界の根幹元素、パーメットについて考察していきます。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。

スレッタとラウダの共通点


スレッタとラウダは「異母兄、異父姉がいる」という大きな共通点があります。

ラウダとグエルは異母兄弟です。
スレッタもエアリアルと家族であると言っていて、エアリアルの性自認があるのかどうなのかはわかりませんが、スレッタがエリクトのクローンとしてもエアリアルはナディムが死亡してから製造された、もしくはルブリスのパーツを組みなおしてリビルドされたとしても、ナディムは関われないので父の違う姉妹です。(製造責任者はプロスペラですが、一人ではできないはずですので)

アド・ステラ世界では「兄弟姉妹がいる」と明確にされているキャラクターは、グエルとラウダ、スレッタとエアリアル(エリクト)しかいません。さらに、母が違う、父が違うというキャラクターは、恐らくこの二組しかいないはずです。

そうなると、ラウダとスレッタはこの世界において二人しかいない異母兄異父姉がいる人間です。

そして二人は、この異母兄、異父姉を心から大切に思い、愛していて、守ろうと戦います。

スレッタはエアリアルが廃棄されそうになるたびに、「大切な家族だから」と何度もエアリアルの廃棄を撤回してくれと訴えます。
ラウダは、父親にグエルが冷遇されるたびに、「あんなことしなくても兄さんは勝ちます」「ごめん、兄さん。エースパイロットのはく奪だけで済ませたかったんだけど、ダリルバルデまで引き上げだなんて」と、兄のプライドを守ろうと父親に反論し、モビルスーツが奪われて再戦できなくなるのを防ごうと最後まで抵抗しました。

そして他にも描写を見ていくと、スレッタとラウダには共通点が見えてくるのです。

まず、二人は興味のある人間以外には全くと言っていいほど絡みに行きません。

スレッタは、ミオリネにも絡みに行っているように見えますが、最初の方は「責任、とってよね!」という言葉を馬鹿正直に受け取ったから接触しに行っていて、それからはなし崩し的に運命共同体になっていきますが、それまではまだ距離があります。

スレッタがそういう契約抜きで能動的に動いたのは、実はエランのみです。コンタクトはエランからばかりですが、ミオリネに渋い顔を見せたことはあっても、エランには一度もそういう顔を見せないどころかいつも嬉しそうです。傷つけられても決闘を受け、「鬱陶しい」と言われても、ミオリネにケツを叩かれたのはありますが、本人から拒絶されても何度も何度も声をかけます。

待ち合わせに来なくても、どうしたのだろう?と心配していて、インキュベーションパーティーにミオリネは行く価値ないと言っているのに、御三家が来ると聞くとエランに会えるかも!と前のめりになり、会えれば(別人でしたが)今まで見なかった笑顔を浮かべるエランに安心し、授業にも出ると言う彼に心からホッとし、決闘でも最初に頼ろうとします。

ミオリネとだいぶ距離を縮めていた時にも、いつになく積極的なエランに頬を染めて、しかしいつもと違い過ぎるエランに混乱し、初めて拒絶します。

このようにエランには、敵対していても傷つけられても、積極的に関わろうとして、笑顔が増えるという多少の違和感を覚えても、キスしそうになるという決定的に違うことをされなければ拒絶しないほど、彼に懐き大切にします。

一方で、スレッタはグエルやシャディクに対してはこれほどの執着を見せません。

グエルのことは結局最後まで怯えたままで、自分を泣かせたエランと戦う、ちょっとロマンチックなシチュエーションにも「そんなの余計なお世話です!」とむしろ怒りすら覚えていますし、共闘を求めたのも偶然会ったからで、会えなかったら恐らく思いついていません。

シャディクも、もうほとんど話数がなかったのではっきりとはわかりませんが、「ご機嫌だね。いいことあった?」「えへへ~、ミオリネさんとエアリアル、もうすぐ戻ってくるんです~。」「ああ、それで。」と、シャディクはミオリネとエアリアルが戻ることを知りません。ミオリネはともかく、エアリアルがいないから特例で決闘を延期しているので、エアリアルが戻ることについては報告の必要性があります。しかし、うっかり約束を忘れていた地球寮の時ともまた違い、スレッタはきれいさっぱりそんな意識がなく、また決闘を延期にしてくれていたシャディクに対して全く会いに行っていなかったということでもあるので、優しくされてもこれっぽっちも興味がありません。

ラウダもまた、グエルやジェターク寮生以外にはめちゃくちゃ塩対応ですし、距離を取ります。

スレッタに対しては、露骨に嫌がるし距離を取るし、死んでほしいとまでは思わなくても、ホルダーから堕ちる!と思ったら喜びを抑えきれずに叫びます。

仮にも将来的には義姉になるミオリネは、グエルに対する態度にムカついてたのかはわかりませんが、ぷいっと横を向いて腕を組んであからさまに関わりたくないと意思表示をして、温室で突き飛ばされていても涼しい顔で髪をいじって助けに入らず(まぁこちらの考察通りならグエルが本当に彼女を傷つけることはないと確信していたからで、それが損なわれる可能性があったらさすがに止めに入ったんではないかなとは思いますが)。対立するようになってからは、巻き込まれる地球寮には申し訳ないなと思えど、ミオリネのことはずっと見て不利な条件を突き付けているので、彼女のことは逆に傷つけとすら思っていたのではないかなという感じで、煽り返されたら、ぶつけはしませんが露骨に怒りをあらわにします。

これからの同僚で、仕事上は先輩になる決闘委員会にも、「挨拶は不要です。さっさと決闘を始めてください」と不機嫌丸出しに壁を作り、からかわれれば睨みつけ、決闘中は一言もコメントしないどころか目立ったリアクションも取らないという徹底ぶり。

同学年で同じ御三家であるシャディクにも、「決闘を止めてください!」と敬語を使っているのでラウダからは距離を取っており、「歓迎するよ」と言ったシャディクに対しては上記の通りなので、仲良くする気は微塵もありません。

しかしグエルに対しては上でも触れましたが、父親に虐げられればその都度かばったり兄を助けようと奔走したり、彼と夢を共有したり、その強さと気高さを誇りに思っています。そして黙って姿を消しても心配し続けていて、もうそれまでの塩対応の面々と比べると砂糖のように甘い。

このように、二人は自分が好きな人には好きだという態度を露骨に表し、逆に嫌いだったり苦手だったりどうでもいい相手には、徹底して興味がない態度を崩しません。

それから、パーメットを通して見ると、さらに不思議な共通点があります。

ミオリネに驚かされるラウダ、誤解してしまうスレッタ


ラウダとスレッタは、ミオリネに対しての対応が他のキャラクターと少し違います。

まずラウダですが、彼はミオリネの言動によく驚きます。

2話で温室を直しに来た際、スレッタのことを聞いたミオリネが立ち上がるときょとんと目を丸くして驚きます。

9話で「条件がある」と言ったミオリネにも、まずラウダは驚きます。

2話の驚きについてはわかるのですが、9話での驚きについてはよくわからないのです。
圧倒的に不利な条件を突き付けてまさか向こうから「条件がある」などと言われると思わなかった。としても、ぽかっと口を開けて、瞬きをするほど驚くか?と。

それに2話での時は、後輩たちがいます。
工具を持っていかにも不機嫌そうなミオリネが近づいてくるのに、ラウダは道を空けるように横を向きます。フェルシーの目の前に来ても止めず、結果として暴力を振るうことはなかったのですが、この考察が正しければ3話での排熱処理が止まった時に狼狽していたのは、後輩たちに危険が及んだ可能性に呆然としていたのに、直接的な危険が目の前に現れても何も反応をしない、というのも引っかかる。それにアニメ本編が一番わかりやすいのでぜひ見ていただきたいですが、ペトラは同じように足を引いていますが、右足は動いていないので、フェルシーから離れようとはしていません。ところがラウダは、足も動かして本当にミオリネに道を譲っています。ペトラは組んでいた腕をすぐに下ろしていて、多分ですがミオリネがフェルシーに危害を及ぼしていたらすぐに戦う体勢を整えていたのではないかなと思います。それに対してやはりラウダは直立したままなので、庇う気も戦う気もゼロという感じなんですよね。

スレッタは、関係が深まり、ミオリネは地球寮みんなが納得できるように考えて、動いているのだと言われなくても伝わっていたり、「あいつらに抜けられたら困るだけよ」と言う言葉にも、それが嘘だとわかっていたり、ミオリネが地球寮を勝手に会社登録したことに「ウチのミオリネさんがごめんなさい!」と、もうすっかり家族になったように代わりに謝るという、関係の近さを見せます。

ところが10話では見事にすれ違い、ミオリネの言葉を額面通りに受け取って、スレッタはミオリネとの関係が偽りだったのだと絶望します。それからは見直してもらおうと頑張り、でも地球寮のみんなからも嫌われているのではと、今までの日々はやっぱり偽りだったのではと怯えて、ミオリネからもひたすらに逃げます。ミオリネから歩み寄ってやっと、彼女も言いたいことを吐き出します。

ここから何がわかるのかっていうところですが、スレッタはミオリネのことを本当に理解できているわけではないということです。

ミオリネはわかりづらい性格をしていますが、それでもスレッタは一時期はミオリネの本心をきちんと理解し、シャディクに何かを言われても毅然と言い返し、信頼は揺るぎません。

しかしエランから「でもそれって嘘なんでしょ?」と言われて、スレッタは激しく動揺します。「ですよね。そうでした。私、一人で勘違いして」と言っていたので、彼女はこの関係の始まりが「取り引き」であったことを忘れていた。そして恐らく、だからこそミオリネの気持ちを代弁するようなことを言えていた、ということなのだと思います。

スレッタはミオリネの気持ちを代弁していたわけではなく、「きっとこうだろう」「そうであってほしい」という当て推量で、そしてそれが合致していただけだった。あれは断絶というよりは、「わかり合えている」という思い込みという名の魔法が解けてしまったのだと思います。本当はスレッタはミオリネのことをわかるようになってなどいなくて、「勝手に私のことわかんないでよ!」というミオリネの言葉の通り、わかっていたつもりになっていただけなのでしょう。

そのあとは、まぁなんかこう…「私の言葉、信じられないの?」「信じます。私、花婿ですから。」という別の魔法がかかっているような気がしますが…まぁそれはともかくとして。

ラウダはミオリネの言動に驚き、スレッタはミオリネとわかり合えていない。

これはつまり二人とも共通して、「ミオリネのことがわからない」ということなのではないでしょうか?

ラウダはグエルのことを深く理解していて、その意に沿うように動きます。父親であるヴィムのことも、強権的な性格でワンマンであることは理解しているところが見られます。

スレッタは、グエルが父親のことを愛しているのを察したり、シャディクがミオリネのことが好きだと見抜いていたりしています。

二人とも、他者が理解できない人間ではありません。

もう一人、ラウダが驚いている人物がいます。

それはセセリアです。4話で決闘を止めに訴え出た時に「グエル先輩はとっくに了承済みっすよ~。」と言われた直後、ラウダはまたも驚いています。すぐに「くっ」と表情を険しくさせますが、ワンテンポ遅い。

ミオリネとセセリアには共通点があります。そして逆に、ラウダと新たに関係を築いた人物がいます。

それらを見ているとどうも、パーメットが関係しているのでは?という疑惑が浮上します。

二人の理解度はパーメットをどれだけ人体に蓄積しているかによって決まる


ミオリネとセセリアの共通点。それは「経営戦略科」の人間であるということです。

経営戦略科は、メカニック科やパイロット科と違って、パーメットを直接人体に入れるようなことは少ないはずです。

作中の描写でも、グエルが飛び立つエアリアルの推進剤の含まれているであろう風をもろに受けたり、モビルスーツと接続するシートベルトのようなものは、ガンダムと非ガンダムと共通の規格のようなので、恐らくこのケーブルからパーメットを人体に流入させている関係上、非ガンダムもまたパーメットを含んだ酸素とかをパイロットスーツに流していただろうと思われます。あのケーブルは、背中のバックパック、恐らく酸素タンクに直結しているので、宇宙での活動時間をできるだけ増やしたい、モビルスーツに長い間搭乗しなければならないと考えれば、乗っている間はモビルスーツから酸素を供給するのが一番効率的です。腰部のものも、スーツの内側に空気を供給することはできるでしょう。

であるならば、パーメットはアド・ステラ世界のモビルスーツにとって、燃料と同じぐらい必須な要素である以上、当然、パイロットもメカニックも直接触れる機会は多くあったでしょう。

そしてパーメットとは元素です。元素とは、O(酸素)やMg(マグネシウム)のように物質を構成する最小単位とすることが可能です。ということは、推進剤に混ぜていると書かれている通り、気体や液体に混ざって人体に取り込まれ、蓄積したり化学反応を起こして別の元素と結合して化学物質(O2など)となり、人体に吸収されたりしたはずです。(そもそも推進剤に混ぜているので、それと化学反応を起こしていても不思議はありません)

そうなると、パーメットを人体に多く含んでいるのは、メカニック、パイロットで、経営戦略科は色々な物にパーメットが混ぜられているので全く含んでいないというのはありえないでしょうが、2科に比べれば圧倒的に少ないでしょう。

ということは、2人がそろって理解がイマイチなのは経営戦略科というパーメットをあまり多く含んでいない人々である、という共通項があることになります。

他にもそう判断できそうな関係があります。

それは、ラウダとシャディクです。
ラウダはシャディクとはそんなに仲も良さそうではありませんし、6話では「さっさと」とラウダにしては珍しい乱暴な言葉づかいでシャディクに答えますし、シャディクの方を見ようともしません。

ところがわずかに9話では、「シャディク、どうかな?」と、親しそうなニュアンスで彼に呼びかけます。

いったい何があったの?というぐらい距離が縮まっています。ラウダは地球寮を見れなくなってしまうほど嫌だと思っている不利な便宜まで図りますが、便宜だけなら「取り引きしたんだな…」で済みますが、これだけ親しく距離を縮めるのはどういうことなのかと。

警戒心がない人間なのかと思いきや、3年間同じ学び舎に通い、「悪いね、ラウダ」とシャディクは気安かったので恐らく仲良くしようとシャディクからアプローチはしていた、でもそれが3年間実を結ぶことはなかったほどに御三家に対して警戒心を持っている。加えて5話でグエルの決闘を止めてくれず、それが「見たいんだ」というふざけた私的な理由で、嫌いな人間カテゴリーに加えていたのだろうというのは6話のすごい塩対応から察せます。そして嫌いな人間に対して、ラウダはスレッタやミオリネのように露骨に壁を築いて遠ざけるので、シャディクも決闘委員会の仕事では関わるけれどもそれ以外では避けていたと思われます。

このように、取り引きをしたにせよなんにせよ、ラウダから「シャディク、どうかな?」となるほど歩み寄るとは到底思えない。ミオリネに「自分たち、仲良しなんだ」と当てつけたとしても、不正行為が嫌いで気質も兄に似てまっすぐなラウダがいきなりそんな精神攻撃できるのか?それにシャディクは全方位にフレンドリーで、ミオリネが特別だなんて知れるほど仲も良くないだろう。と、これもラウダの性格からすると違和感です。

しかし、性格考察でも指摘しましたが、「シャディクがグエルを気に入っている」と知ったとしたらどうでしょう?

シャディクにとってミオリネは特別です。本当に特別です。そのミオリネを「任せられる」と託したということは、本当にシャディクにとってグエルは信頼できる男で、「気に入っている」という言葉では本当は表せないほどに心を傾けていた存在です。

その気持ちを知ったならば、ラウダの好感度も上昇するのではないでしょうか?これも性格考察で述べましたが、ラウダが好きなのはグエルを本当に好きな人です。シャディクの「グエルを気に入っている」という気持ちが本当である以上、それを信じたならばラウダの好感度は自然と上昇するでしょう。

なるほど、めでたしめでたし。

では終わりません。今度はなぜ「シャディクの気持ちが本当だ」と信じられたのか、という問題が立ちふさがります。

シャディクは見た目はもちろん、性格も飄々としていて、ハーレムを築いていたり、女性を懸けて決闘をしたり、自分の目的を通すためなら何でもすると評されるほど、胡散臭い人物です。ミオリネにさえ信頼されていない人物をあの世界の人間たちが信頼できるのか?しかも御三家同士という、絶対に相いれない関係同士が?

答えは恐らくNOです。グエルは「避けてたのはお前なら安心して任せられると思ったからだよ。」という言葉は独り言に近いので聞こえてなさそうですが、「俺はお前を気に入ってるんだ」という言葉はまったく信じておらず、憐れまれたと怒りをあらわに彼からの言葉を叩き落します。

そしてグエルの弟であり、彼よりも冷静で理性的と評されるラウダが、シャディクという胡散臭い御三家を信じたかと言われれば、NOです。スレッタを陥れる策をもたらされたからとしても、ラウダは積極的にスレッタを貶めるようなことは行わず、5話でもスレッタのフライトユニットが撃ち抜かれるなどピンチはいくつかありましたが、大きなリアクションはしていません。

それに、本当にスレッタを狙い撃ちにしていたのなら、もっとえげつないこともできたはずです。例えばガンダムを「2機分の戦力」としてカウントし、「6対5の集団戦とする」とか、パイロットが2名しかいないので先ほどのカウントを適用し「3対2の決闘とする」とか。しかしラウダはあくまで人数をそろえた集団戦のみを採用しています。スレッタが助っ人を探しているので、「パイロットは地球寮のみ」という条件付けもしていない。それに何回か申し上げている通り、ラウダは「そんな数のモビルスーツ、ウチにはないですよお!」とマルタンが訴えると、背を向けて彼らを見ないようにします。

本当はラウダは地球寮の子たちにこんな不利な条件を押し付けたくなかったし、巻き込みたくもなかったのでしょう。本当なら1対1の戦い、シャディクとスレッタの個人戦にしたかった。しかしシャディクが6対6の集団戦を要求したので、やむを得ずそうするしかなかった。

そうであるならば、取引だけでシャディクの好感度が上がる余地はありません。むしろ、圧倒的強者の癖に地球寮という弱者に不利な条件を要求するシャディクを軽蔑した可能性すらある。

グエルという交渉カードを持ちかけられても、結果としてジェタークの益にならないと思えば、うなずいたかどうかわかりません。ラウダはヴィムが重用していて、一定の信頼を向けている人物です。
ヴィムは何よりもジェターク社が第一です。私情も多分に入っていそうですが、その行動は「社用」であり、デスルターという自分ではなく父親の代が製造したであろうモビルスーツでも、テロリストに使われていると知ると、「デスルターだと!?わが社のモビルスーツを使って、よくも!」と怒りをあらわにします。

そのヴィムが重用しているので、ラウダも私情よりもジェターク社の利益を優先する傾向があるのではないでしょうか?現に3話の裏工作では、グエルが汚い手を使うのをよしとしないしそんなことをするのはグエルの力を見くびっているに等しいしと、「学生以外が決闘に関わるのは」と一回は反対しますが「社用だ」と言われたらそれ以上は反対しません。「あんなことしなくても、兄さんは勝ちます」の言葉は、兄の実力を誇る言葉で、「あんなこと」とは言っていますが、最初とは違い強い反対ではありません。

集団戦を得意とし負けなしと言われるグラスレー寮と、グエルという突出したエースアタッカーがいるとはいえ、恐らく個人戦が主体のジェターク寮では、グエルが戻ったとしても有利とはいえない。そして地球寮は素人集団なので、実質6対2の状況では、シャディクやサビーナたちへは大した損耗はない。
なので、ジェターク寮視点で見ると、シャディクがホルダーになったとしてあまり旨味がないどころか、むしろ難しくすらなっている。であれば、ラウダがその後のことも考えてそもそも取引に応じなかった可能性も出てきてしまうのです。

ですが、ラウダは実際に便宜を図り、シャディクと距離を縮めています。

この時ラウダは、シャディクの気持ちが本当であると「わかった」のではないでしょうか?

パーメットの性質は「情報を共有する」ことです。情報を共有するという性質を聞いてぱっと浮かんだのは、「細胞」や「脳神経(ニューロン)」です。

パーメットは鉱物資源ですが、「情報を共有する」というのはどちらかと言えば生物に近いのではないかと思います。
細胞は日々いろいろな情報を交換しています。ウイルスがやってきたら免疫細胞に「ウイルスがきた!」と訴えたり、細胞が死滅したらそれを処理します。
ニューロンは言わずもがなです。彼らが情報を共有する、伝達しているから私たちは思考することができます。

ということは、それを含んでいる人間である彼らもまた、パーメットを通じて情報を共有することができるのではないでしょうか?

もちろん、細胞同士の情報共有は、同じ体を形成した細胞を有しているからで、他人の細胞との情報なんぞ共有しとらんでしょうが、アホか。という反論はありますし、私もそう思います。
しかしパーメットは「元素」です。呼気に乗って拡散してしまうかもしれないぐらい小さな存在で、そして細胞ではなく「元素同士で情報を共有しあう」という性質を持っているものです。

つまり、本人が好むと好まざるに関わらず、勝手にパーメットによる情報共有を行ってしまう可能性がある。

それを裏付けるように、ラウダには不自然に見える描写が結構あります。

まずはあの学園で一番胡散臭いとされているだろうシャディクに好感を抱いているという上記の点。

それから、第六感が異常に冴えている点。

5話でグエルがラウダのディランザを強奪した時、ラウダの通信画面を見ると、どうにも椅子に座っているようです。そしてこの椅子はジェターク寮のブリッジの椅子です。

教室の椅子は大学の椅子のようで、カフェテリアの椅子は白。何より頭部の形状が一致しています。

あの時メカニックたちはグエルが決闘をすることを知らなかった。モビルスーツを用意するために誰よりも早く準備が必要なメカニックが知らなかったということは、寮全体に通知はいっていないはずです。というか、事前に通知がいっていたら、ラウダがその前に何としても止めているはずです。

それなのになぜラウダはすでにブリッジにいたのでしょう?授業の演習で使う?しかし、船を持っていなかった地球寮の子たちも、問題なく船を動かしているため、恐らく操舵については授業で習っています。ということは、授業はシミュレーターなどで行うはずで、わざわざ寮内の船を動かす必要性はない。ペイル寮は、これ船なのかどうかわからないのですが、椅子が同じ感じなので船と仮定すると、常駐していそうな気がしますが、ラウダはオペレーターではなく、パイロット科の人間で、実際普段から何か操作することはないため、いる意味がないはず。

ラウダはこの時、「悪い予感」がしていたのではないでしょうか?グエルが決闘をやるという確信はないけれど、ブリッジにいて有事に備えなければいけない、という類の予感が。

小説版においても、ガンビットを見て「ラウダが不安を口にしたのとは正反対に」と書かれています。あの時のビットの形態は盾で、突然出現した盾を怪訝に思うのならわかりますが、「不安に思う」というのは少々違和感のあるものです。なぜなら「攻撃能力のない盾」なのですから、それで何ができるわけでもない。(kindleスマートホン版 小説機動戦士ガンダム水星の魔女(1)P105より引用)

しかしその不安は的中し、盾形態からドローン形態に移ったガンビットによって、ディランザは見るも無残にバラバラにされます。あの時もラウダはガンビットにただならぬものを感じ、それを漠然とした不安として感じたのではないでしょうか。そうであるならば「不安」になったという表現は違和感がなく、そしてそうであるならば、ラウダは勘の鋭い人間であるということにもなります。

ただどうにも決定打としては言えない。なぜならラウダが決闘を傍観者として見ている時にどういうリアクションをしているのかというのは、いっそ不自然なほどにカットされているからです。

6話でのエランとの決闘は、ラウダが新寮長となったとか、決闘委員会に入ったとかいう説明のための顔見せでもあるでしょうが、本当に画面に映らない。シャディク達とはいた位置も違うのでそのせいもあるかとは思いますが、それにしたってせっかく出すのですから、戦闘談義や戦術や戦況について表情を動かすワンカットぐらいあっても良さそうです。なのに勝利画面でもまーったく映らない。他のメンバーは全員何かしら映るしコメントもするのに。もう帰った?というぐらい存在が消えているのです。

9話での決闘もそうです。あれはシャディクのポジションがラウダに移ったようなものなのですし、エアリアルがおかしな挙動をしているので、ロウジに調べるように言ったり、そうでなくとも何かしら解説の言葉が挟まってもいい。けれどラウダが発したのは「堕ちろ!水星女!」だけです。私情が入っているのはもちろんですが、しかしラウダは優秀なパイロットです。仮に私情が入っていても、いやだからこそ、「なんだ…!?」とか「どうして!?」というリアクションがあってもいい。
しかし実際には何もなく決闘は終わります。勝利画面を見る決闘委員会もない。突然決闘委員会の役割が消失したように、ぷっつりと描写がなくなるのです。

ラウダが決闘委員会にふさわしくないから、シャディクよりも能力が低いからそうなった。なるほど、そういう見方もできます。
ですがこう見ることもできます。「ラウダの反応を映すわけにはいかなかったから描写を徹底的にカットせざるをえなかった」と。

ラウダの描写を映すわけにはいかなかったとみられる場面は他にもあります。それはヴィムの死です。

地球産のガンダムの情報がエランに来ているので、もうあの段階では通信障害が解消され、情報がこちらに流れてきているタイミングです。プラント・クエタの襲撃は、仮にヴィムの死が判明していなくても、ジェターク社が警備をしていたはずなのに起こった大不祥事です。それに関するリアクションという美味しいものを描写しないという理由が、メタ考察ですが作劇上なされないというのは、「意図して隠さなければならないから」以上の理由があるのでしょうか?

サプライズとして2期に残したとしても、それはやはりラウダの存在が重要なファクターになるということとイコールでしょうし、何らかの意図があります。シャディク、あまりプラント・クエタでは関係なさそうなエランが描写されて、同じ御三家でダイレクトに関係するであろうラウダだけが描写されない意図が。

そしてあの時に関係していたのは、ヴィムとグエル、ラウダの父と兄、つまり家族という最も近しい関係性の二人です。

もし、パーメットによる情報共有が行われていて、それが他人であるシャディクやミオリネでも感じるのだとすれば、血を分けた肉親の場合はどうなるのでしょうか?そして実際、関係性が深くなればなるほど、受け取れる情報が増す、そういう疑いがあります。

3話でのヴィムが裏工作を命じてきて、廊下を歩いている時のラウダですが、「学生以外が決闘に関わるのは」と言うのですが、この時の声色はためらいがちで、ヴィムの顔色を伺うような、そんな風な印象を受けます。これを聞いたので、ラウダはヴィムのことを怖がっているのかと思っていたのですが、その後の「あんなことしなくても、兄さんは勝ちます」は、はっきりとした声色で、「俺の言うとおりにして正解だろ」と同意を求めるような言い方をヴィムがしているのに無視をしているので、どうにも怖がっている様子がないんですよね。

ではなぜあんなに怖々した感じだったのかと考えると、「ヴィムは本当はグエルのことを愛している」ということをラウダはわかっている、とすると、理解ができます。

ラウダが引っかかったのは、学生以外が決闘に関わるというルール違反もそうですが、一番はグエルの腕を疑うような工作をする、ということであったはずです。「ですが」とわざわざ反論の言葉を入れて、「あんなことしなくても、兄さんは勝ちます」と強く訴えているのが証拠です。

ヴィムはグエルを愛している、という前提でこの工作を見ると、「なぜ愛しているのに、その愛している相手が嫌いな汚い手を使い、それどころか腕を信じていないと言わんばかりのことをするんだ?兄さんはずっと父さんに褒めてもらいたいと、信じてもらいたいと、頑張ってきているのに」と感じるであろうことになり、そうなるとラウダが父親の真意を知ろうと探りを入れていることにも説明がつきます。そしてラウダが黙ったのは、グエルを愛していることと、会社のために勝利を盤石にする工作をすることは、相反しない、矛盾のない行いだからです。そういう理由であるならば仕方ないと、ラウダはようやく父親の真意を理解したのでしょう。

あるいは、ラウダはもっと深いところまでわかっていたのかもしれません。あの時ヴィムはダリルバルデのAIに工作をして、グエルが操縦できないようにしていました。つまり、グエルの腕を軽んじており、彼では勝利できないと考えています。この侮りも伝わっていたとすれば、最後まで兄の力量を信じてくれるよう、こんな工作など必要ないほどにあなたの息子は強いと訴える、その理由も新たに生まれます。

グエルに対しては言わずもがなですね。何度も父親のことを引き合いに出して止めようとしていたところから、彼が父親のことを深く愛していて信じて欲しい認めて欲しいとずっと願っていることを知っていた。グエルが否定してもスレッタに本当に心惹かれていることをわかっていた。「どこに行ったんだ」としか言っていないので学園からいなくなった理由も勘づいていた。

その他、グエルの感情や状態がラウダにも影響を及ぼしていたのではないか?と見ることができる描写があります。

1つめは5話でグエルがエランに手足を吹き飛ばされている時です。

あの時ラウダは見ていられないとばかりに顔をそらし、目まで閉じて、唇を震わせます。あれは全員絶句するぐらい痛ましく凄惨な映像だったのですが、見ていられないと顔をそらしているのはラウダだけです。もちろんラウダはグエルのことが大好きであり、最も関係が近しいですし、このあと兄がどういう末路を辿るのかも薄々勘づいているので、それで見ていられないと考えるのも自然ですが、こう考えることもできます。

グエルの感情を感じ取ってしまっていたから、ラウダも余計に辛くなってしまっている。と。

グエルの様子は映されていませんでしたが、ブレードアンテナを抜き取られる寸前、彼の声は震えていました。レゴリスと電磁ビームによって何もできずに、無力感に打ちひしがれていたでしょう。グエルの性格上、抵抗できるのであればまだマシでしょうが、何もできない状況が一番堪えたでしょう。ダリルバルデで操縦権を奪われたばかりですし(リフレインですねそういえば)。そして、敗北するということはスレッタを守れなかったということになるので、絶望感もあったでしょう。

もしそれを当事者と同じように体感したとすれば、同じように辛く、見ていられないほどに残酷な光景となるでしょう。

もう一つ、ダリルバルデ戦でもグエルの気分が落ち込んでからラウダが動いた場面があります。

それが、排熱処理の工作です。あのとき、排熱処理が行われたタイミングは、「俺の意思は、いらないって言うのか…!」とグエルが嘆いた直後です。こちらでも指摘しましたが、「手は打ったか?」とヴィムに聞かれて、ラウダは「はい」と返事をしています。そのため、フェルシーとペトラはすでに配置についているはずです。だからやろうと思えばすぐにでも排熱処理を行える。なので、「あんなことしなくても、兄さんは勝ちます」という言葉の通りに、本当は排熱処理を行う気などなく、むしろそんなことをせずとも勝利して、父親に「ね?いらなかったでしょう?」と言うつもりだったんではないかな?と思います。

ところが、実際にはダリルバルデは苦戦していて、グエルの反応からいつものグエルの動きもできていない。だからラウダは排熱処理を行うしかなかった。

そしてタイミングが上記の通り、グエルがAIの工作に気づいて、無力感、悔しさ、憤り、悲しさ、そういったものに襲われた時です。ラウダはAIの工作のことを知らないので、グエルが感じたこれらの感情を感じたとしたら、「ダリルバルデを上手く操縦できない」「このままじゃガンダムに負ける」という思いから生じたものだと思ったでしょう。だから、何も言わずに裏工作を始動させた。そしてグエルは、空元気ではありますがこの幸運に勝機を見出し、スレッタを挑発する程度には持ち直します。

排熱処理が行われたタイミングといい、何といい、意味深なんですよね。

さらにグエルの気分が過去最高に落ちた9話でも、ラウダはグエルの気分が落ち込んでからおかしなことをしています。

それが「堕ちろ!水星女!」です。

あの時もグエルが、父親の言葉にショックを受けて、そしてその後学園からいなくなり行方不明になるほどまでに心に傷を負います。恐らく、過去最高にグエルの心が落ちている瞬間です。

ラウダがスレッタのピンチに狂喜するのは、その後です。逆ではない。

グエルが精神的ダメージを受けたのに喜んでいるというのはおかしいのではないか、とも思いますが、ラウダはあのとき決闘委員会の仕事中でした。しかも立会人なので、決闘の決着を最後まで見届けなければならなかった。グエルの心が乱れたとして、嫌な予感としてラウダの心をざわめかせたとしても、それだけで退出することはできなかったでしょう。ラウダは真面目な性格で、今はジェタークの名を背負うトップなのですから、私的な用事で退出するなんてことはできない。

しかし早く帰りたいと願っていたはずなので、そんな中でスレッタが絶体絶命のピンチになって、やっと決闘が終わる、しかも最高の形でとなったら、普段のラウダらしからぬ狂ったような喜びを表してしまったとしても、むしろ仕方のないことでしょう。
決闘が終わってからの描写がないので、ラウダは結局どういう様子だったのかわからないのですが、この考察が当たっているのなら、残務は二人に任せてすぐに帰ったと思われます。帰るだけでなく、グエルのキャンプへ直行したかもしれません。

それから、グエルだけでなく、フェルシーとペトラに対しても、引っかかる描写があります。

それが3話で排熱処理が止まった時の呆然としたリアクションです。
あの時ラウダは、ヴィムが肩を揺さぶってもなんの反応もしないほど呆然としています。排熱処理が止まったのがそんなにショックだったのかというと、「あんなことしなくても、兄さんは勝ちます」と啖呵を切ったのはラウダなので、ダリルバルデに慣れていない様子の兄が勝てるか心配はするでしょうが、こんな風に思考停止になるとは思えません。

こちらの考察で、二人が害された可能性に呆然とした、学生の中に締め切った扉を破壊して入るような野蛮人がいたことに驚いていた、と結論付けていますが、この考察ではさらにシンプルな可能性が浮上します。

つまり、二人の恐怖を感じてしまってフリーズしている、という可能性です。

あの時二人は抱き合って震えあがり、モビルクラフトのアームに脅しつけられるという、絶体絶命の状況です。排熱処理はこのすぐ後に止まっており、もしラウダがこの時の二人の恐怖を追体験、しかも二人分の恐怖を味わっていたとすれば、ここまで放心状態となるのもうなずけます。顔も、眉間にしわが寄り、目の下には線ができ、口もぽかんと開けているというよりは驚きという感じがしますし、全体的に引きつっているような印象を受けます。

このことから立てられる仮説は二つ。

1.人間はパーメットを介して情報、すなわち心や感情を共有できる
2.共有できる情報の量や質は、パーメットの含有量と、その人との関係性の深さや長さによって決まる

シャディクはパイロットなのでパーメットの含有量は多い。しかしラウダとは関係が知り合い程度。そのため恐らく、ラウダはその言葉が本心から言っているのか、嘘か本当かについてはわかるし、発言に驚くことはないので(多分)全く心が感じ取れないというわけでもない。
ミオリネとセセリアは経営戦略科のためパーメットの含有量は少ない。そしてラウダとの仲は良好ではないため、何か言えばそれに驚くほどラウダは彼女たちが全く理解できない。しかし害意があるかないかについてはわかる。
フェルシーとペトラはパイロットとメカニックなのでパーメットの含有量も多く、また関係も良好であるので、離れていても強い感情を抱いたらそれが伝わってしまい、普段でも自分に対してどう思っているのかがわかっている。
ヴィムもパイロットであるのでパーメットの含有量が多く、父親であるため長く接し、関係性も思春期の息子と父親程度には良好。そのため、恐らく誰にも明かしていない「グエルを愛している」という本心も伝わっている。
グエルはパイロットなのでパーメットの含有量も多く、また同い年の兄弟という双子に近い関係で、互いに大切な部分を預け合う仲のいい関係性なので、彼の浮き沈みが自分の心身にも影響があるほど感じ取ってしまい、父親や自分という肉親に向ける感情はもちろん、スレッタという他者に向ける感情ですら、それが本当かどうかがわかる。そして、離れていても彼が生きているのか、健やかなのかということが伝わっている。

ペトラですが、ラウダは10話でペトラに向かい「仕方ないだろ」と強い言葉を使ってしまいます。しかしそれに対しての謝罪はありません。ラウダにしては強い言葉尻なので、言うつもりはなかったけれど口から出ていた言葉だった、という捉え方もありますが、ペトラは全くそのことを気にしておらず、むしろラウダを気遣うように顔を曇らせ、心配そうにグエルのことを尋ねるので、それがわかっていたのなら謝る必要はなく、「行くよ」の言葉だけで完結します。

2話でミオリネが金属製のレンチを持っているのですが、それを持って近づいてきた彼女に、ラウダは道を譲るように動きます。しかもフェルシーに近づいて行ったので、ミオリネはあの時不機嫌でしたし、先輩として彼女を守るという行動は自然ですが、むしろどうぞどうぞと道を空けている。しかしこの時ミオリネは彼女を害そうという気はなかったので、それがわかっていたのならむしろ自然な動きになります。

それから、5話で決闘を止めてくれるよう下手に出て訴えるラウダに、「グエル先輩はとっくに了承済みっすよ~」とネイルしながら言うセセリアに、ラウダは驚くもののすぐにくっと顔を険しくさせます。9話で「条件がある」と言ったミオリネに驚き、その後の条件内容を聞いている最中も驚いたままです。全部聞き終わってから「外部?」と訝しげにし、「御三家を全部潰した」と煽りを聞かされると、怒りをあらわにします。これも彼女たちの心は上手く拾えないけれど、害意の有無についてはわかるのだったら、一拍遅れた反応も、一様に怒りの感情を浮かべるのも筋が通ります。

そしてグエル。グエルに対する描写はたくさんありますが、3話で「お前も父さん側の癖に…!」と、拒絶するようなことを言われても、あまりショックを受けた様子がなく、それよりも意思拡張AIが停止した方が心配だという顔をしているのも、グエルが自分を「嫌いになった」のではなく、ただ単に怒っているだけならば、実際排熱処理の工作をしてしまった以上怒るのはラウダにとっても当然なので、そのことにショックを受けることがないのもまた当然です。

4話でダリルバルデが搬出されるのを詫び、「気にするな」と言われてからの描写。ラウダはしっかりとした声で「兄さん。これ以上、父さんを怒らせるようなことは…」と、語尾を言い終わらないのは癖なのでしり込みしたわけではないとすると、口調は最後まではっきりとしていて、「ごめん」と謝っていた時とは異なりどこにも震えのない威風堂々としたものです。しかしグエルは、「気にするな」とは言ったものの、ラウダに背を向けて、足早に立ち去ろうとしているので、ラウダはもっとショックを受けても良さそうなものです。ですが、「気にするな。父さんの命令なら仕方ない」という言葉は本当にそう思っていてラウダを責めるつもりなど毛頭ないと伝わっていれば、怯える理由はありません。怒っているのは上記のように排熱処理の件ならば、ラウダにとっても仕方のないことです。

6話でヴィムの部下からの宣告を聞かされて、グエルは投げ出された荷物を見ていた時には汗を流して瞳を震わせ、上げた顔もどこか戸惑っているようですが、覚悟を決めます。「どこで暮らせと言うんだ」というのは消え入りそうな声で尋ねていますが、腹はもうくくっていますし、ラウダに背を向けていた時グエルは穏やかな顔をしているので、表情は平静そのものだったはずです。しかしラウダは心底心配そうに「兄さん…」と、先ほどまでのグエルが移ったように小さな声でグエルに声をかけます。まぁラウダは愚かな人間ではないでしょうから、強がっているとわかっているからこういう声になったと見てもいいですが、凛と背筋を伸ばしているものの、グエルはこの先のことも何もかもも不安に思っていると伝わっていたなら、こういう反応になったのはむしろ正しい。

10話でグエルがいなくなって手がかりすらもロクになさそうな状況で、あれだけ落ち着いた様子だったのは、もちろん寮生たちの支えあってのことでしょうが、「生きている」し「心身も損なっていない」のがわかっていたとしたら、心穏やかにもなるでしょう。むしろ、未だに連絡ひとつ寄こさない兄に対して怒るのも仕方ありません。ラウダは「どこに行ったんだ」とは言いますが、「なぜ」「なんで」「なにを考えているんだ」「どうして」とも言っていないので、出て行った理由はもうすでにわかっているし、生きているのも前提のような感じがします。そう信じるしかないとしても、「兄さんは」でぎゅっと眉が寄っているので、かなり普通にキレてそうで、無理をしている感じは受けません。

このように、全部心がわかっていないとしても見れるし、心がわかっているとして見ても説明がつくのです。いや、私が勝手に説明がつくと思っているだけですが。それでも、意味深な描写が多いと個人的には思います。

そして、もし仮に心がわかる、それも関係性が深まれば深まるほどとなると、ヴィムを殺めてしまったグエルという、父親の死の瞬間とその父を敬愛して精神状態が最悪になっている兄という、ひとつだけでも大ダメージのデスコンボを二連続でキメられたラウダが、PVのようにCEOとして出席しているってどういう状況なんだと説を引っ込めたくもなりますが、しかし。
大好きな兄貴が何も言わずに失踪!裏工作命じてくるような親父と二人家族になりそう!圧し掛かる仕事!増える責任!決闘委員会の愉快な仲間たちを紹介するぜ!胡散臭さ学園一位の同学年にして御三家、嫌味モンスターの後輩、機械オタクでコミュニケーションに難のある後輩、やけに明るい氷の君(笑)!以上だ!という重荷をこれでもかと背中に背負わされながらもそれらを淡々とこなして、見たところクマもなく、ペトラが「グエル先輩まだ行方不明なんですか?」ととっくに見つかってると誤解するほど精神的にも安定していて、それどころかいい加減にしろと言わんばかりにグエルに対して健全に怒っているというのは、家族どころか作中でも一番ぐらいにメンタルが強靭なのでは?と思えるんですよね…。

さて。ラウダの怪しい描写について羅列し、「…確かにラウダはパーメットによって他者と情報を共有しているのかもしれない」と皆さんを混乱させたところで、スレッタについての考察をしていきましょう。

スレッタはどんくさく、他者の心を理解していると言えるのか?

しかし、彼女はある特定の条件下で人の心を言い当てるのです。

ガンダムとは何か、データストームとは、というガンダムについてまず切り込みつつ、中編で述べていきたいと思います。

まとめ


前編では、ラウダとスレッタに異母兄異父姉がいるという共通点があり、ラウダに注目してみると、どうも勘が異常に冴えわたり、他者の心がわかっているような描写がある。なぜなのか突き詰めていくと、情報を共有するパーメットの性質に行きつき、パーメットによる情報共有でこれらを理解しているのではないか?という内容でした。

中編ではガンダムとは、それに乗ったスレッタにラウダのような心を理解しているような描写について考察していきます。のと、この考察の後編は若干デリケートな話題や今の年代よりもっと前、つまり妄想でしかわからない時代にまで考察をしていきますので、これよりも捏造妄想マシマシです。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。