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【考察】ラウダの性格

ラウダはグエルと絡むことが多いので、今回はあえてグエル以外との絡みから、彼の素の性格を考察していきたいと思います。なるべくね!
先に言っておきます。とっても長いです。ラウダの描写の量、舐めてました。楽しんでいってね!
※2023/2/21に髪いじりからわかるラウダの気持ちの部分に追記をしました。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。

冷静で理性的な「判断」を下すが、「感情」は豊かでありすぐに顔や態度に出る


グエルへの対応や、決闘委員会の仕事をこなしている時の様子だったり、ラウダと言えば冷静沈着な印象も強いですが、不機嫌だとそれが声や表情に乗ってしまったり、挑発されれば何事もなく流す前に普通にムカついた様子を見せたりと、感情については割と豊かで激情家なところもある印象です。

じゃあ冷静で理性的ではないのかと言えばそうではなく、彼が冷静で理性的なのは感情面ではなく、「判断」においてであり、一度こうすべきと決めたらどんなに嫌でも感情ではなく判断を優先する、そここそがラウダの冷静で理性的の本質のようなのです。

スレッタに対してがわかりやすいですが、ラウダはわかりやすく彼女を嫌っています。
しかし彼女に面と向かって暴言を吐いたり、暴力を振るった場面は一度もないのです。

パーティーで「なさけない」とののしった時も本人には聞こえない離れたところから、「愚鈍な女」発言も歩きながら言い、「あんな田舎者」と思っていても本人には言わない。

「堕ちろ!水星女ァ!」の時にすら、多分聞こえていたら現場にいた誰かが反応していると思うので、本人や決闘の邪魔になるので聞こえないようにしている。

時系列
堕ちろ→スレッタを心配するリリッケ→指示を出すティル→続いている戦闘

このように、いかに感情では大っ嫌いだと思っても、それを本人にぶつけるべきではないという理性的な判断と、そんな振る舞いをジェターク家の次男でラウダ・ニールたる自分がするべきではないという冷静な判断から、ラウダは努めて行動を律していると見受けられるのです。

しかし不満とかを表に出さないかと言うと普通に出しています。
「愚鈍な女」と思った時には父からの電話にもそれまでの不機嫌丸出しの声のまま返事をし、「あんな田舎者」と思った時には強調して兄に伝えている。

ヴィムの電話のタップ前タップ後。父親からの電話と気づいても顔が怒ったまま…

家族以外の他人サンプルとしてミオリネになりますが、温室を直しに行った時に皮肉を言う彼女に対して怒りを隠さず反論し、決闘委員会の立会人としての際にも、ミオリネの言葉に怒りをあらわにしています。

このように、冷静で理性的なのは「判断」においてで、感情についてはかなり素直に表すタイプの人間なんですよね、ラウダは。それでも感情に引きずられることなく、今自分がなにをすべきか、どう振る舞うべきかをきちんと考え、ましてやそうできる、というのは、17~18歳の青少年にしてはかなり大人な精神構造をしていると思います。

…まぁ、スレッタの助けをすげなく振り払って、その後は不機嫌に眉をしかめて目を閉じて、徹底無視しているので、表情や態度を取り繕う域まではいっていませんが、父親や兄の態度を見るに、ラウダが感情をあらわにするのを二人とも特に咎めることも気にしている様子もないので、こういうところは大人や上の兄弟に甘やかされているお坊ちゃんで次男坊なんだな、というのが感じられてまた趣がありますが。

髪いじりからわかるラウダの気持ち


ラウダの癖として、左の前髪をいじるというものがありますが、この髪いじりにも、現時点で2タイプあることがわかります。

・髪をくるくるとねじるようにいじる
・髪をつかんで指は動かさない

ラウダの性格として、声優の方へ「神経質」と説明があったそうですので(ガンダムチャンネル ジェターク寮ラジオから引用https://www.youtube.com/live/RxkrBlwTB-Y?feature=share)そういった性質からの癖でもあるとは思いますが、髪をいじる場面を見ると、ある程度ラウダの感情も表していると思われるので、考察していきます。

・髪をくるくるとねじるようにいじっている場合

まず1話でグエルを「授業中だよ兄さん」とたしなめる時、グエルに「決闘をうけるなんて」と言う時。

温室で、グエルが暴れているのを見ている時と、スレッタにすがりつかれたのを振り払って、機嫌が悪そうにしている時。

このラウダを一番最初に見たので、このくるくるとねじっているのが一番多いと思いましたが、意外と少ない。
グエルが絡んでいるのが多いので微妙ですが、この時のラウダはグエルに不満があったので、何かしら不満がある時にこの癖が出る。そしてグエルが暴れている時の表情が非常に冷めているので、退屈している時にもこの癖が出ている可能性があります。(…と、思いましたが、ちょっと口角が上がってないかい、ラウダ?描き方の問題だよね?ね?)その後の機嫌が悪いのは、スレッタに話しかけられて不快だったか嫌だったかでいじっている気がします。

ただなにせグエルが絡んでいるので、この癖は対人相手にはラウダからグエルにだけ見せる限定的な癖な可能性が高いです(ちなみに同じ家族でもヴィムにはしない)。スレッタにも見せてないか?というのは実はスレッタと話している時は後述の癖が出ているので、対グエル以外で出ているとは言えないんです。

・髪をつかんで指は動かさない場合

1話でスレッタにすがりつかれて「(兄さんを止めたければ)自分で止めなよ」と突き放している時。

同じく1話でグエルのディランザを用意している時に。

6話で決闘委員会に新寮長として顔を出してから、シャディクが「じゃあ始めようか」と言っている時までは行っているのを確認できます。この後も決闘委員会の描写はちらほら出ますが、画面にラウダが映らないので終始行っていたか、行っていなかったかは確認できず。

7話のインキュベーションパーティーで歩いている時から踵を返すまで。これはスレッタが視界に入ったから髪に手をかけたのか、一人で歩いていた時にもやってたのかは微妙ですが、スレッタに顔を向けている時にはすでに手が止まっており、踵を返すと同時に指を離しています。私としては、指の間に髪が挟まっているので、パーティーを一人で歩いていて退屈でくるくるしている最中にスレッタを見かけて手が止まったのかな、と見ています。

同じく7話のインキュベーションパーティー。プロスペラを引き離し、交渉している際にも。…髪を引っ張っている時には指の間に髪が挟まっているので、もしかして途中で黙りあいになって退屈で指でくるくるしてた?ラウダ?

9話で決闘委員会として立会人を務め、ミオリネに「(兄さんはどんな不利な条件でも)決闘を拒まなかった」と言ってから、「条件を認めよう」まで。

9話で決闘の宣誓を行っている時(これは終始指をかけている)

10話で、ペトラの背後でスレッタを見ている時から、「仕方ないだろ」と言いながら手を離すまで。

こっちの弄り方の方がはるかに多いですね。

基本的に人と話したり注意を向ける時にはこの弄り方をするようです。では感情の方はどうかというと、数が多いのでわかりやすくはありませんが。
怒りや不満、緊張感、共通して不快感などを覚えている時にこの弄り方をするのではないかと思います(ディランザについてはこれからグエルが出撃するので不快感ではなく緊張感かな。決闘の宣誓も、左手を脇腹に、足は組んで体を細く守るようにしているのでこちらも緊張かと)。大別するなら、スレッタに対しては「不満と怒り」、ミオリネに対しては「怒り」、プロスペラに対しては「緊張感」でしょうか。プロスペラに関しては「なんで自分が」と思っていた可能性もあるので不満もあるかもしれませんし、ラウダも慣れた様子なので今さら緊張?かもしれませんが、息子を愛していることが判明したヴィムが魔女を相手に注意するよう言わなかった可能性も低いし、仮面をかぶった怪しい女と屈強な男のコンビという何をしてくるかわからない組み合わせに、多少なりとも緊張していたと思います。護衛がいるとはいえ、逃げるに適さない狭い廊下で、助けを叫んでも聞こえない場所でしたしね。

あとは、9話のミオリネの前で髪に手をやった時は、「兄さんはどんな不利な条件でも決闘を拒まなかった」を言い終わるぐらいに指をかけているので、この癖がかかっているのは次の文脈、「ガンダムなら、どうにかできるだろ?」な気がしますし、マルタンの「そんな数のモビルスーツ、ウチにはないですよぉ!」という言葉を受けての言葉なので、不利な条件だっていうのはわかっているし、後ろめたいとも思っていて、ミオリネはともかくマルタンたちを見ないようにしているのかもしれません。

怒りをあらわにしていても、温室を直しに行った際には一度も髪に手をかけていない。この時は謝罪も兼ねて温室を直す、いわば償いの行為なので、正しい行いです。ミオリネは納得していませんが、ラウダの怒りには正当性がある。翻って9話の時には、経営戦略科という戦闘の素人であるマルタンもリリッケも動揺しているので、だれがどう見ても地球寮に不利な条件です。モビルスーツの数だけでなく、戦闘員の質も圧倒的に違う中での集団戦は、なぶり殺しとそう意味は変わりません。
この時ラウダはただ単に指を前髪にかけているのではなく、その前に軽く背を向けています。なので意識的には「ガンダムなら、どうにかできるだろ?」と澄ましていますが、無意識的には後ろめたく、本当はやりたくなかった可能性があります。後述しますが、ラウダは不正行為を嫌う割と公正な人間なので、根回しは決闘の暗黙の了解でルールの内とはいえ、明らかに地球寮に不利な条件を突きつけるのは、「性能が段違いのガンダムがいるから」という理由はあっても、それだけでは6対6の集団戦を是とするには足りない、正しい行いとは言えない、と思っていた可能性は十分あります。

いずれにせよこのラウダの指の動きを止めている時の癖は、兄以外の人間と話していたり注意を向けている時に見られ、多少なりラウダの精神に負荷がかかっている時に出てくるようです。
なのでひょっとしたら、指でくるくるする方の癖の中でもグエルへ向けるものは、「自分がグエルに不満を持ってる、怒ってるんだよ」と伝える、ラウダなりのグエルへの甘えの仕草だったのかもしれません。なにせたとえ喋っていなくても、誰かに注意がいっている状態では出てこない癖であり、序盤のまだ仲が良好で二人の間に緊張感のない時にしか出てこないものなので。

ちなみに余談ですが、一回しか出ていないので癖かどうかわからず省きましたが、もう一つラウダがやる特徴的な髪の触り方があります。

それが髪を下に撫でる仕草。

上から下へ撫でる自然な流れで手を離すので、明らかに上記2つの癖とは違うと思われます。
で、この仕草が出てきたのが、3話で「ドミニコスのエースパイロット、諦めてはいないんでしょう?」とグエルに呼びかけるとき。髪を撫でつけている、整えるような仕草なので、兄に改まった話をしようと髪を整えたのかなとも思ったのですが、タイミングがちょっと引っかかるので、もしかしたらこれもラウダの癖かもしれません。

これの前、「これは兄さんだけの決闘じゃない」と言っている時には、髪を撫でつけるどころか手をあげる素振りすらないんですよね。「ドミニコスの~」と言い始めてやっと手が上がり始める。その前にグエルの目線はラウダに行っているので、兄に整った自分を見せたいという理由なら、この時から髪を撫でつけていてしかるべしですが、実際は違う。

「兄さん」と呼んだ直後→「これは~」→「ドミニコスの~」

だとすると、これはラウダの「あなたを信じている」というサインなのではないか?と。この後このような深い信頼を向けあう場面がないので比較できませんが、「ドミニコスのエースパイロット、諦めてはいないんでしょう?」という言い方も、「当然」という枕詞がついているし、グエルが勝利するつもりなのも、彼が勝利するということも、ホルダーの本当の価値は自分たちにとって何なのか、それを自分も忘れていないという、強い信頼のこもったやり取りであったことは間違いなく、それがこのラウダの癖にも表れていた。そんな可能性もあります。

人の好き嫌いがはっきりしているし激しい


ラウダは自分が嫌いな相手やストレスを感じる相手とは徹底的に距離を取り、絶縁レベルで関わることを断つ傾向があります。

またもスレッタがわかりやすいですが、1話でグエルを止めることをすげなく断った後は目をつぶって存在しないものとして扱い、7話のインキュベーションパーティーでも関わることなく足早に立ち去り、10話で見かけた際にも近づこうとしないし、スレッタに対して何か言うこともない。

決闘委員会に対しても、6話では「さっさと決闘を始めてください」と、ラウダにしては珍しい「さっさと」という荒い言葉遣いをしており、「挨拶は不要です」とか、これまた「ようこそ」と歓迎したシャディクに対して非常に高い壁を築いている。

セセリアの「この間の決闘、まだ根に持ってんスか~?」という言葉に睨みつけているので、その通り前回のことを根に持っての行動、つまり怒っているが故にここまでぶっきらぼうな対応をしていると思われ(まぁ他寮と馴れ合いなんぞしないという意識もありそうですが。指を動かさない方の癖も出ていますし)、その後も決闘中に一言も言葉を発しないので、義務だから来てやっただけ、というのがアリアリと伝わってきます。

このように、一度嫌いになった相手とはどうしても関わらなければならない場合を除いて、ラウダは自分から積極的に関わりを持とうとせず、むしろ関わることを積極的に避けます。

ある意味すごい賢い選択ですね。イラだつならその根源から離れればいい、ストレス源に自分から関わってストレスを募らせるなんて無駄なことしたくない。

逆に言うと、ラウダがプライベートで付き合いのある人間は、彼にとって好ましい人間。好きな人たち、ということになります。

グエルはもちろん、フェルシーとペトラ、あとはジェターク寮生もラウダにとって好ましい人々でしょう(ジェターク寮生たちとの関係は後述)。9話でそれまであんな感じだったのが「シャディク、どうかな?」とまで口調が柔らかくなっていたので、シャディクも彼らには及ばずともまあまあ好ましいグループに入っていた可能性があります。

ではラウダにとって好ましい人の条件とは何かといえば、恐らく「グエルを好きな人」であると思われます。

フェルシーとペトラは、この二人は基本セットで、ペトラがラウダ個人を心配していたのでフェルシーも心配している可能性が高く、このやり取りから本人同士も仲がいいと思いますが、それ以上にグエルに尊敬の念を持っている同士的な繋がりです。

スレッタとミオリネはあからさまにグエルを嫌っていたり、苦手意識を持っている。

そしてシャディクもまた、実はグエルのことを、ミオリネを託そうと思うほど「気に入っている」つまりグエルのことを好ましいと思っている人物です。

このように、ラウダが関係性を構築しているのは、好意の大小や種類を問わず、本気でグエルのことを好いてくれている人物ばかりなのです。

そう考えると、ラウダにとってスレッタはそうとう複雑な人物で、彼自身は好ましく思ってないのにグエルが惚れてしまっていて、本来ならスレッタがグラスをひっくり返しても興味なく立ち去って視界に入れない選択肢をするところを、そうする訳にもいかなくて、でも個人を見てみてもやっぱり好きになれない…。という微妙な悪循環にはまってしまっているのだと思います。

10話では渦中の兄がいなくなったし、スレッタの決闘が一時ストップしており関わる機会が少なくなったと思われるので、また無関心に戻りつつあるようですが。
※ペトラとラウダの立ち位置とその後の進行方向を見るに、ラウダはスレッタを無視して歩いていたが、ペトラがスレッタがいることに気づいて立ち止まり、ペトラがついて来ていないことに気づいたラウダが振り返ってスレッタを見ていると思われます。あるいは角なのでお喋りでもしていたか。いずれにせよペトラが口火を切っているのでラウダはそれ程スレッタに関心はないはずです。

いずれにせよ、ラウダはグエルを好きな人を好きになり、反対にグエルを嫌いな人や避ける人を嫌いになり、そして嫌いな人間には徹底的に関わらないようにする。非常に人の好き嫌いがはっきりしていて、また激しい人間であるのだと言えます。

基本的に公正であろうとしていて、不正行為を嫌うタチ


3話で父親から命じられた裏工作を行ったり、9話でシャディクへ便宜を図っていたので、ラウダは不正行為を行うことに抵抗がない人間のようにも感じられますが、その後のラウダの態度や周囲の反応から、普段のラウダとは全く違う対応をしていることがわかります。

まず3話の裏工作ですが、ラウダは一応命令には従うものの、最後までヴィムに苦言を呈し、狙いが的中して得意げにはしゃぐヴィムに、あからさまにぶすくれた表情をしています。そもそも本当にやる気があったのかどうかすら疑問で、それは以前の記事で詳しく解説しています。

9話での交渉ですが、これはそもそも不正行為と言えるのかも微妙で、確かに地球寮がクリアできるか難しい条件でしたが、結果的にペイルからザウォートを借り受け、パイロットも無理やりですが選出しています。そもそも「バックにいる企業の強さも実力のうち」が決闘の暗黙の了解なので、ラウダ以外でも通した可能性が高いと思われます。
だいたい、エランも「きみが魔女なら切り抜けられるはずだ」と3話で不正だと気づいていながら、上記の理屈を持ち出してミオリネを論破し、シャディクも「(御三家のエランとグエルの対決)見たいんだ」という理由で決闘を止めなかったり、この二人も大概なので、ラウダが特別無理を押し通している、というわけでもないと思います(セセリアもロウジも止めてませんし)。

ただ、これが普段のラウダらしかったかと言えば大いにらしくなかったとは思います。

その証拠がこの後のセセリアとロウジの反応です。

セセリアは「兄弟愛重すぎ~」と茶化します。「兄弟愛」の部分に着目してしまいがちになりますが、注目すべきはその中身です。
ラウダがこの便宜を図った理由として兄弟愛のみを指摘しているということは、彼は兄がらみでない理由どころか、自分に関わる理由ですら、こんな便宜を図るわけがない。という意味の言葉でもあるはずです。

セセリアは悪口というか茶々入れの達人なので、相手の弱味には容赦なくつけこんで口撃を加えてきます。もしラウダが兄がらみ以外にもこうしたことをする人間なら、兄弟愛ではなくそこに焦点を当てたはずです。
兄弟愛を指摘したところで「そうだが?」「それの何が悪い?」と言われても、本当に「別に」以外の反論はないし、もしくは続くとしたら「お兄様が理由ならこんなこともしちゃうんですね~ビックリです」など、普段のラウダらしくないという指摘の言葉が連なるような言葉選びだからです。

そしてロウジの「私情入ってますね、ラウダさん」というセリフ。ロウジは基本的に機械関係には積極的に絡んできますが、人に対して何かを言うのは非常に珍しい。(しかもちゃんと名前まで呼んでるのもビックリ)
そんな彼が思わず指摘してしまうほど、こうした行為に手を貸すラウダは珍しく、また私情を挟むのも珍しいから口をついて出てしまった、と捉えられます。セセリアよりも前に言及していますし。

この二人の反応から、ラウダは普段から試合の便宜も取り計らわず、私情も挟まない、公正で不正行為を嫌っている人柄であることがわかります。特に今回の決闘相手は地球寮なのですから、この不利な条件も相手がアーシアンという被差別階級だから行った、と見てもいいのに、そういった指摘が茶化しでも出てこないので、この学園というか世界でも珍しいアーシアンへの差別意識が低い人間なのかもしれません。
とはいえ「あんな田舎者」と言っているので、人に優劣は付けるタイプだとは思いますが。実際スレッタの挙動は田舎者丸出しで、給仕の女性にぶつかってグラスを割って「愚鈍な女」評をしていて、孤児で養子で同学年のシャディクには恐らく決闘委員会だからと敬語を使っていたので、生まれはどうあれふさわしい振る舞いや優秀な能力を身に付けた人はきちんと評価するというタイプなのかもしれません。グエルのことも人として好きなのはもちろんでしょうが、努力して磨いているのであろうパイロットとしての腕もラウダは評価していますからね。「水星女」というのはグエルが最初に使いだしたので、真似して蔑称として使っているという感じで、ラウダにとって特に深い意味はないんじゃないかなと思います。フェルシーとペトラも使っていますし、この世界では水星=ド田舎、辺境というのが共通認識のようですし。

そんな人柄なのに、推測であるとはいえ、兄がらみではやるのか?…まぁ、うん。ただ兄がらみだけでここまでやるかはわかりません。
恐らくシャディクがグエルがらみ…例えば「グエルを寮に戻すようサリウスからヴィムへ口をきいてもらう」などの交換条件をもたらされたとして、「シャディク、どうかな?」とちょっと近い距離感になるほど心を許すか?と言われると微妙かなと。キャンプ生活でそれなりに苦労していたグエルでさえペイルにもグラスレーにも助けを求めたり取り引きをしようとしなかったので、ラウダも条件を飲むにしてもグラスレー社にイニシアティブを取らせないために全部飲むことはしなかったかもしれません。

それにホルダーがシャディクに移ったとして、主に集団戦を行い負けなしと言われるグラスレーと戦って勝つのは、今回で戦い方を研究したとしても個人戦が主なジェターク寮にとっては、エアリアルを倒すのとどっこいどっこいか、ダリルバルデで戦っていたら勝てたかもしれないので、むしろ上の難易度の可能性があり、そんなに旨味もないんですよね。スレッタへのうっぷん晴らしもあったかもしれませんが、同じ御三家であるラウダがその後のことも考えないで飛びつくとはどうも考えづらい。どうせ取り引きをするなら、引き分けかシャディクが勝てるギリギリの条件にして、両者の損耗を狙うか、最初から受け付けないと突っぱねる方がラウダらしい気がします。裏工作を拒否しきれなかったから兄を怒らせてしまったばかりですし。

決闘の立会人はラウダであり、ラウダが承認しなければシャディクがどんなにゴネても集団戦じたいを拒絶することもできるのです。つまりこの交渉は圧倒的にラウダが有利な立場にあり、シャディクが丸め込もうとしても、譲歩はしないと繰り返して首を振り続けられれば勝ちなのですから、自分が好ましい人間以外には冷めているし、挑発して怒らせれば「嫌いな人間」カテゴリーに入れてますます距離を取るであろうラウダなら、もっとジェターク寮に有利な条件で飲むことも可能だったはずです。

むしろ先ほど言及したように、シャディクがグエルを気に入っているのを知ったので、多少なり好ましいカテゴリーに入ったから協力したのではないか、と見ています。兄が大好きなのもありますが、後述しますが、ラウダもジェターク家の男として、身内や懐に入った人間にはかなり甘い傾向があるようなので、シャディクに対してもそれが発動したからここまで甘い対応をした、という可能性の方が高いと思います。

ジェターク寮生にとってラウダは頼りになると同時に支えてあげたくなる存在


ジェターク寮生とグエル、ラウダの兄弟がどういう関係性だったのか、寮長と副寮長という役職についていた割に寮生との直接的な絡みはフェルシーとペトラしかありませんが、この少なさでも推測できることはあります。(カミルはトレーニングルームではフェルシーたち、格納庫では他の子たちへ指示だしや一回しか声掛けしていないのでカウントしていません)

顕著なのがそれぞれが不機嫌になった時のリアクションです。

4話ではグエルが、10話ではラウダが不機嫌な様子で二人に接していて、そしてそれぞれで全く異なるリアクションをされています。

まずは4話、グエルへのリアクションを見てみましょう。

「フェルシー」と呼びかけられた二人は、びくっと肩を震わせ、その後震えながらグエルへ振り返ります。

これも、まぁギャグ描写だからというメタ視点で見ることもできますが、あくまで観客のいない生の世界であるとして見てみると、少しおかしいんですよね。

なぜならグエルに情報をもたらして、動くように説得しに来たのはフェルシーとペトラなので、望み通りグエルが動くというのにあそこまで怯えるというのは、どうにも矛盾していると思うのです。
水星女に対しての告白を見ていて、デートしているのを「大変」だと思って報告しに来たのなら、それこそエランに対して怒りを向けるのは想定通りのはずです。だから怯える理由がない。むしろグエルが動くことに、喜ぶか指示がくるのを粛々と待つというのでも良かったはず。

しかし実際には、グエルが静かな怒りをたたえていることに怖がり、怯えています。

これは、グエルの怒気がエランに向けられているとわかっているにも関わらず目の前で発せられるそれに思わず反応してしまったか、もしくはここまで素直に激怒するとは思っていなかったか、のどちらか、あるいは両方だと考えられます。

グエルはジェターク寮以外に好意を向けたり、素直にそれを表現しないタイプの人間です。脳直プロポーズをしたのに「くしゃくしゃ頭の田舎者に、俺が惚れると思ったか」とスレッタに言ったり、シャディクの「お前を気に入ってる」という発言には自分を哀れんだ、馬鹿にしたと受け取り、3話で後輩やラウダに向ける素直な好意の応酬とはまるで違う対応を見せています。

なのでここでも、「なんでそんなこと俺に言う」とか、「俺には関係ない」というやり取りがまず挟まるはずだと二人も考えていた可能性は高いです。しかし実際は、グエルはノータイムでエランに対しての怒りを爆発させたので、予想と違う怒気に怯えたというのはかなりあるだろうと思います。

ただ、それにしても怯えすぎだろうという気もします。しかも震えあがったのは「フェルシー」と声をかけた段階なので、「場所はどこだ」とかなり低い明らかに怒った声で言った段階ではありません。

このリアクションを見るに、グエルが本気で怒るとめちゃくちゃ怖いし恐ろしい、ということがフェルシーとペトラ、ジェターク寮全員の共通事項であり、万が一にも自分たちに向けられたら…と深層意識で思われているのだろうということが推測できます。
とはいえ、ミオリネの温室を破壊していた時も、スレッタにペトラが盾にされていた時にも、二人は怯えてないどころか、「横恋慕さん?」に吹き出してすらいるので、全くリラックスしています。

ミオリネの時には、すぅっとグエルの表情が消えて、それから暴れ始めているので、かなり本気で激しい怒りです。スレッタへの怒りも、その延長線上であり、邪魔したのだから余計腹立たしくもあり、自分が盾にされているのですから、距離も近く直接的な被害を受けそうだと及び腰にもなりそうなものです。

ところがそうはなっていない。ではその時とエランの時で大きな違いと言えば、ラウダがいるかどうかです。

ラウダがいる時にはグエルが怒り狂っていて、それを目の前で爆発させていても全く怯えず、ラウダがいない時には静かに怒りをたたえているだけでも怯えてしまう。

ということはつまり、普段は1話の時のようにグエルの言動を受けてまずリアクションを返すのはラウダで、冷静にたしなめたり普通に接してクッション役となり、そのやり取りを見て大丈夫だと寮生たちも安心し、何度も兄を止めようとしていたところから、これは危ないなと思ったら事前に止めたりと、うまく立ち回ってくれていた可能性があります。ミオリネの場面ではラウダは後ろに控えていて何もしていませんが、すでに「ラウダがいれば大丈夫」と思えるほど厚い信頼を獲得していたとすれば説明がつきます。

それがラウダが不機嫌になった時のリアクションにも表れていて、10話で「水星女がこなければ」とつぶやくペトラにラウダは、「仕方ないだろ」と強い口調で言い、その後ペトラが振り返るのを待たないで踵を返します。その後の「行くよ」や、ミオリネへの「手伝うよ」「言われたから」などの言い方を見るに、ラウダは怒っていても柔らかい言葉遣いが基本のようなので、これはそうとう余裕がない言い方です。しかも声を荒げているので、「八つ当たり」として見てもいいし、言われたペトラは「怒られている」として捉えても自然です。上記のようにグエルの声色に敏感に反応していたのだから余計に。

でも実際には、むしろハッとした顔をして、心配そうにラウダに声をかけています。明らかにグエルの時とリアクションが違うのです。

これを見るに、ラウダは怒り過ぎて慣れられてしまっているか、あるいは本気の怒りを自分たちに絶対に向けたりしないという信頼があるか、のどちらかであるはずです。

怒り過ぎて慣れられている、というのは、グエルに怒りを向けられることに震えあがっているということは普段怒られたりしていないということなので、たしなめたりするのはラウダがしていた可能性もありますが、それ以上に後者が強いと思います。

だからこそラウダの八つ当たりに近い言葉に、ペトラは傷つくのではなく真っ先にラウダを心配した。理不尽な八つ当たりどころか怒りさえ向けてこないはずの人がしてしまっているのなら、それはラウダがそうとう余裕がないという証であり、その後に「グエル先輩まだ行方不明なんですか?」とペトラが声をかけているので、ラウダが不機嫌になっているのは自分が原因ではなく、グエルがまだ見つかってすらいないからだと一瞬で見抜いています。

加えてこれよりも前、寮長であるグエルが長期的に不在にしているので、寮生たちの統率が乱れて勝手な行為に走る子が一人二人出てもおかしくありませんが、特にエラン戦の後に血気盛んにスレッタに絡んだり決闘を挑んだりしている描写がない、ということはそういう勝手なことをすることなく寮として一つにまとまっているということになります。

この時点で、グエルだけが強烈なリーダーシップを発揮して寮をまとめていただけではなく、ラウダが定めた方針を守ろうとするほどラウダのこともリーダーとして認めていて、あるいは寮長になったばかりのラウダに負担をかけてはならないと、彼ら自身が行動を自制していた可能性すらあります。

「ジェターク寮に睨まれたくないから」と言ってスレッタへの協力を拒んだ生徒がいたし、フェルシーとペトラもミオリネに嫌がらせの言葉をかけていたので、ジェターク寮はイジメをしない集団かと言ったらする集団である可能性の方が高い。

だからそうしなかったということは、ひとえにラウダに迷惑がかかることを嫌ったから、ラウダからやめるように言われていたから、と考えると、すっと意味が通ります。

そしてグエルが寮どころか学園から出奔してしまいましたが、ヴィムですら今わの際に出てしまうほど心配していたのですから、兄が大好きなラウダはそれ以上に心配していたでしょう。グエルが寮から出ていかされた後にはあれだけ情緒不安定な様子も見せていたし、上記のようにラウダは意外と感情を隠せないので、寮生の前でも憔悴した様子を見せていたかもしれない。

それでもペトラはラウダを心配し、行動を共にしています。そして寮生たちも、この期間でもまた問題行動を起こしていない。グエルを失って取り乱すラウダを見ても、あるいは何とか隠そうとして隠せていないラウダを見ても、痛ましいと思いこそすれ、軽蔑も落胆もしていない。それはペトラの本当に心配そうな表情からも明らかです。

このことから、ラウダは寮生たちから頼りにされているだけでなく、困っていたり落ち込んでいたり、傷ついていたら積極的に支えたいと思うような、グエルとはまた違った信頼関係を築いていた。そんな想像ができるのです。

恐らく(概念的な意味で)、グエルは強くて頼りになるけれども少し怖い、いわゆる父親役。ラウダは万事そつなくこなしグエルや寮生たちの間を取り持つ、いわゆる母親役。そういうコンビでジェターク寮を引っ張っていたのではないかと思います。

だからトップのグエルを失っても、ラウダの元で寮生たちはまとまることができるし、彼らが乱れていても、突然いなくなるなんてことが起きても、統率を失うことなく彼らを支えて手助けするために、動くことが、律することができる。

こう見ることもできるのです。

そして寮生にとってラウダが大きな存在であると共に、ラウダにとっても彼らは大切な存在であろうこともまた伺えます。

10話はグエルが失踪してから二か月もの時間が経過した段階で、まだグエルは見つかっていませんでした。
ところが、ペトラはてっきりもうグエルは最低でも見つかってはいるのだろうと思っています。だから「グエル先輩、まだ行方不明なんですか?」と聞いています(むしろ語尾が下がっているから尋ねるまでもなく確信しているかも)。そして声を荒げるラウダの様子に初めて、ひょっとしてまだ行方不明で、ラウダも知らないのか?と察しているので、これは逆にラウダは少なくともグエルの動向を知っているのだろうなと思えるほどには、精神が安定して見えていた、ということになります。

グエルのことにあまり関心を割かなくなったから平静だったのかと言えば、グエルの話題になったら感情が乱れているので、ラウダは今でもグエルを心配しているし、忘れているわけでもないことがわかります。

じゃあ何故ラウダは近しい間柄であるペトラでも勘違いするほどに精神が安定していたのか、と言えば、恐らくジェターク寮生たちに心配をかけているなと気づいたり、彼らが彼らなりに頑張って自分を気遣っているのが伝わって、ちゃんとしなきゃなと思い直したからだと推測できます。

そして最初こそ無理をして平気なフリをしていたでしょうが、今となってはわざわざ思い出さなければ心が乱されないほどに、本心からいつものように生活することができるようになっているのだと思います。風化した思い出というか、どんなにつらくて悲しい出来事が起きてもいずれ人間は日常生活を送れるようになっていく、という心境と言いますか。

何度も言いますが、ラウダは自分の感情に素直ですぐに顔や態度に出てしまうタイプです。7話でプロスペラ相手に営業スマイルだろう笑顔で対応していますが、ちょっと挑発されるとビジネスの場だというのにすぐに化けの皮が剝がれていたので、最初こそ完璧でもその後「はぁ?」と思ったら「はぁ?」という顔をしてしまう、腹芸が実は全く上手くない種類の人間です。なので、自分の心を押し殺してずっと演技をし続けることはラウダの特性的にも不可能なのです。

だから今の、グエルのことはもちろん心配だが日常生活では半ば忘れているラウダは、演技ではなく本心であるはずです。たった2か月、いや実際にはもっと短い期間でそこまで精神を回復させられたのは、周りが献身的にサポートし、それにラウダも応えたからのはずで、それはつまりラウダにとっても彼らが大切で大事な存在であることの証左であるでしょう。
兄は第一で他はどうでもいいという人間だったら、そういうサポートもどうでもいいと切り捨て、それよりも兄の方が心配でたまらないと、未だに暗い顔で過ごしていたでしょうが、ラウダはやつれた描写もなく、ペトラに対して当たってはしまいましたが、その後は「行くよ」と柔らかい口調に戻り、ちゃんと気にかけている。(遠景になってもやつれた描写がされているので、ラウダもやつれているならそう描写されるはずです)

元気だった頃の二人→やつれた二人
遠景でも目の下に疲れが残る二人→つやつやなラウダ

こう見ると、ラウダがグエルに対して「どこに行ったんだ、兄さんは…!」とラウダにしては珍しく兄に腹を立てている様子なのも、寮生に余計な心配をかけている、というのも一因なのかな、という気がします。
さんざん止めたのに自分の機体をスクラップにされた挙句、謝罪もなしに寮長業務どころか決闘委員会の仕事までおっ被せてきたグエルに対して心配しかしておらず、「兄弟愛重すぎ~」と茶化されようが兄のために自分の矜持も曲げて御三家に便宜まで図るラウダなので、自分だけなら気にしないけど、今回は寮生にもさんざん迷惑や心配をかけたので本気で怒っていると考えた方がいいのかもしれない…。
…グエルとの絡みではないですが、要所要所で兄に対してだけは許容の範囲が明らかにおかしい様子があるのもそうだし、そんな兄でも寮生たちに負担をかけるのだけは許せないと思っているかもしれないのが、本当にラウダの面白みというか、不思議なバランス感覚ですね。

グエルだけではなく寮生も大事にしているというのは意外かもしれませんが、ヴィムもグエルも愛社精神が強く、身内のことも彼らなりに大切に思っているので、そんな彼らと肉親であるラウダもまた、グエルに対する態度を見ればわかりますが情が深い性質をしていますし、寮生に対してはことさら甘い対応をしていたのでは?疑惑があります。

フェルシーとペトラですが、まぁお口が悪いし、ミオリネを煽ったりラウダと違って裏工作後にも楽しそうに観戦しているので、性格も悪い。それこそ裏工作にしても、ラウダは不承不承でしたが、彼女たちはラウダやグエルほど思い悩んだりはしていないのでしょう。

むしろ、こんなことをフェルシーとペトラにやらせたくないけど他に頼める人がいない、と思い悩みながらも頼むラウダに、任せてください!と明るくやる気をみなぎらせたか、あるいは自分でやろうとしたラウダを見つけて、自分たちがやると志願したか、どちらにせよ先輩二人の役に立てるとむしろノリノリだった可能性すらある。

いずれにせよ、上記のように公正でありたいと思っているし、自分の行動を律してむやみに他者を害さないように努めているラウダにとって、他者を遠慮なく害し不正行為にもノリノリで手を貸せるというのは、嫌悪の対象になってもおかしくないのですが、ラウダは彼女たちの発言も行動もたしなめていません。たしなめていたら、もう少し行動が抑制されているはずなので、彼女たちのやることなすこと、ほとんどラウダは目くじらを立てたことはないと思います。実際「横恋慕さん?」と言われたグエルに思わず吹き出してもスレッタを睨むばかりで注意していないので、相当ですね。

人に注意しない性格なのかとも思いますが、敬愛するグエルにも言いたいことははっきり言うし、呆れているのを隠しもしないので、逆に親しければ親しいほどきちんと注意するタイプだと思います。親しくない人はどうなろうが構わない(むしろ関わらない)ので、スレッタのようにグラスを全壊しても何も言いに行かないし手伝いもしない。

なので、フェルシーとペトラの物言いについては黙認しているというか、問題にしていないというか、まぁ甘やかしているんでしょうね。

もうひとつ、アニメ本編でラウダがわかりやすくフェルシーとペトラを心配している場面があります。

それがミオリネの襲撃を受けて廃熱処理が止まった時です。

私たちはフェルシーとペトラが襲撃されたから止まった、彼女たちが大ピンチに陥ったことを知っていますが、現場ではまだ報告がありません。ヴィムがラウダに「おい、どうなっている!?」と詰め寄っているのが証拠です。

ただラウダは、リアクション的にも頭の回転的にも、フェルシーとペトラに「何かあった」ことについては気づいているんじゃないかなと思います。というのも、二人はのんびりと観戦しているので、扉はきっちり施錠している可能性が高く、二人が自分から開ける訳がないので、施錠した扉をこじ開けるような野蛮人が二人を脅したか危害を加えたかでやめさせられた可能性が非常に高い。
ただそんな今すぐ警備員呼んで!という事態にしては、魂が抜けてるのかと言うほど呆然としているので、二人が操作ミスしたり自分から止めたりするわけない…ということは二人は…しかしそれなら扉…どうやって…まさか、いや、さすがにそんな野蛮なことする生徒はいないだろう、でも…という大混乱に陥っているのかなと思います。想定外の野蛮人に思考停止するのは、後述の考察通りと考えるとさもありなんという感じですし。…それにしても呆けすぎじゃないかというのはもうひとつ可能性が浮上しますが、これはまたの考察で…。

実際はモビルクラフトに乗ったミオリネが窓をぶち破って侵入して、アームで脅しつけるというもっと想定外な状況でしたが、いずれにせよ彼女たちが大ピンチに陥ったことは変わりありません。

この時のラウダは非常に狼狽していて、想定外の状況に弱いのかな、とも思いますが、1話で初めて見たエアリアルのシールド展開に「シールド!?」とむしろ身を乗りだしています。あれもガンビットが一般的ではないあの世界では、十分想定外の状況だと見ていいでしょうから、想定外の事態に驚きはしても思考停止まではいかないはずです。

なのでここまで呆然としている感じなのは、どういう状況なのかという動揺、そんな野蛮人が学園にいるのか…?という信じがたい気持ち、何より二人が害された可能性など、想定外がいくつも重なって大混乱に陥っているのだと思います。

廃熱処理が止まって兄さんが危険…!という考えはたぶんないです。「あんなことしなくても兄さんは勝ちます」ですし、たかが廃熱処理がなくなってすぐに負けるような兄ではありませんし、あんな裏工作よりも二人の安全が脅かされている可能性の方がラウダにとっては深刻な問題のはずです。元々やりたくもない裏工作に後輩を巻き込んでいるのも業腹でしょうし、あまつさえ怪我をさせてしまったなど、考えたくもない。

このように、ラウダはフェルシーとペトラのことを頼りにしているし、危険が迫ったら可能性でも心配するし、普段兄をたしなめるようには二人の行動に口を出そうとしない、むしろ甘やかそうとしているのではないかと見受けられるのです。

恐らくですが、自分が行動を抑制している分、他人の目など気にせず常にグエルの側に立って行動する彼女たちのことを、頼もしいなと思っているし、そういうところが可愛いなと感じているのかもしれない。基本的にラウダはグエルが好きな人が好きで、それは恐らくグエルの味方になってくれる人が一人でも多くいて欲しいという気持ちもあってのことだと感じるので、スレッタがエランに横取りされたらグエルは嫌だろうと考えて走ってくる、そんな彼女たちはラウダにとって理想で、とてもかわいい後輩なんだと思います。多少お口や態度が悪くてもスルーできてしまうぐらいには。

そしてジェターク寮は、グエルを打ち負かした相手に協力するならこぞって立ち上がると恐れられており、ほぼ全員がグエルのことを敬愛している集団だと推測できるので、そんな彼らをラウダが愛さないはずがないんですよね。

だからラウダは、ジェターク寮生のことも大切に思っているし、そして寮生たちもラウダのことを大切に思っている。そう私は捉えています。

ラウダは大人に可愛がられるタイプの可能性


これまでラウダの性格について様々な可能性を示しました。冷静で理性的な大人びた判断を下せるけれど、感情豊かで表情や態度にすぐに出てしまう。身内や自分が好ましいと思った人々、仲間には、愛情深く甘い態度を取ってしまう。不正についてはよっぽどの理由がない限り忖度せず、嫌いな相手やストレスを感じる相手とはできるだけ関わり合いにならないよう避けようとする。

寮生からも好かれているので、子供から見てもラウダは思わず助けたくなってしまう、そんな魅力がある人物なのだと推察できますが、大人の目線から見るとさらに可愛らしいところがあるんですよね。

それは相応に子供であること。

感情を隠さないところもそうですが、ラウダは大人の悪意が考えつく最悪には気づいていない可能性があります。

7話を見てみると、ラウダは偶然か意図していたのか、スレッタと会っています。一方的な邂逅なのでスレッタはラウダを見ていませんが、ラウダはスレッタを見ている。

そんなラウダはこの後何をするのかといえば、母親であるプロスペラをスレッタから引き離す。そしてこの後スレッタは、ガンダムについての詰問を受けます。大衆の目の前で、何も知らないのに罪があると叫ばれ、説明を求められ、母に助けを求めても声は届かず、だれも助けてくれない。まさに魔女裁判の地獄を味わうことになる。

そんなスレッタをわざわざにしろ偶然にしろ、見ても何も思わずむしろ悪態をつくというのは、性格が悪いと称された本物のエランと同じか、それ以上に悪辣です。

しかしラウダがそこまで性格が悪いかと言われれば、ここまでの考察と矛盾します。
そしてラウダ自身のセリフとも違和感があるのです。

ラウダはスレッタを見て「なさけない。なんだって兄さんはあんな愚鈍な女を…」とこぼします。

これから魔女裁判にかけられ、もしミオリネが助けなかったら、スレッタは大衆の面前で大人から容赦なく詰められて、答えを知らないのに断片的な情報だけで魔女だと決めつけられて、エアリアルが家族であることを考えるとさらに大ダメージですが、そうでなくとも17歳の子が受ける仕打ちとしては過酷です。

そんな末路を辿る相手に向ける言葉が、「相手の至らないところを罵倒し」「兄がどうして惚れたのか心底わからないと嘆く」。
演技をしていたエランはそういうわけにもいきませんでしたが、それでも笑っているので、ラウダも底意地が悪いのなら兄を悩ませ惑わせた魔女に罰が下されることを喜んでもいいのに、実際はただただうんざりとしているだけ。

恐らくですが、ラウダはこの時「シン・セー開発公社にガンダムについての責任追及を果たさせるためにCEOを引き離す」というのが自分の役目で、責任を追及されるのは普通にシン・セーのメカニックだろうと思っていたのではないかと思います。

インキュベーションパーティーは、そもそも各社が自分たちが支援を受けたい新規事業を発表する場であり、コネ作りや情報交換をする社交場。CEOとその身内だけでなくメカニックや営業もやって来ているはずです。

本来は何も知らない子供であるスレッタではなく、一緒に招待されているであろうメカニックに詰問が行われるべきです。問われている内容は技術的なものであり、責任が追及されるべきは呪われた技術であると知りながら製造した技術部門の人間であり、それを止めなかった経営陣であるべきだからです。

現にペイル社は「決闘委員会と弊社監査部門の報告で発覚した」と技術部門の独断専行であると語り、処置についても機体の廃棄と開発部門の解体を「CEO」が宣言しています。一緒に来ていたパイロットではないのです。

ラウダは上記で考察したように、自分では不正を行わないタチです。つまりそれは不正な手段を考えつくこともないか、考えついてもそこまで悪辣な手段までは思いつかない可能性が高いということです。
プロスペラの足止めも、悪い顔こそしていましたが、審問会での時のように、CEOであり開発責任者でもある彼女が口八丁でまるめ込んで、技術部門への追及を妨害するのを阻止するためであり、スレッタに訳も分からず罪を認めさせて勢いのままガンダムを廃止させるためでは決してなかったはずです。まさかモビルスーツ、それもガンダムが、たった一人で製造開発などできるはずがないのですから、協力して事情も深く把握しているメカニックはプロスペラ以外にもいるはず。そうラウダは考えたはずです。なにせ通常ならそれが普通なのですから。

これまたラウダと私たちで知っている情報や前提条件の出し方の妙なのですが、ラウダたちのいる位置からはスレッタの叫びは聞こえていないと思われるのです。聞こえていたらプロスペラはスレッタが呼んでいることを理由に退出してもいいし、何かしら言及があるはず。
「お母さん!」と叫ぶスレッタでフェードアウトしているので、プロスペラたちにも声が聞こえていると思いますが、恐らくこれは聞こえていない。この後もスレッタは色々と叫んでいるはずですが、廊下は静かです。

その後のミオリネの声は届いているのでさらに誤解が加速しますが、この時ミオリネは扉に近い側にいて、マイクを通して喋っている。

それからラウダたちがどこの扉から出たのかわかりませんが、デリングが正面から出ていこうとしているので、扉が開いて声が漏れ出たのかもしれない。その前、デリングに交渉し頭を下げている時にはマイクを通していない素の声なので扉の外へは間違いなく聞こえてこない。

このように細かく見ていくと、ラウダは事前にヴィムから聞かされているという前提条件がなければ、スレッタが詰問されることを知る機会がほぼないのです。そしてヴィムが教える可能性があるかというと、詳細を明らかにせず責任の所在もはっきりさせずに終結させるのも、何も知らない田舎者を締め上げて見世物にするやり方も、真面目で不正を嫌うラウダにとっては、何の意味もない茶番でしかないでしょう。どのくらい抵抗したかはわかりませんが、ヴィムが説き伏せるのが面倒だと思うぐらいにはめんどくさいことになったのではないでしょうか。少なくともエランやシャディクよりお行儀よくいかなかったのは、プロスペラの足止めを部下でなくラウダに任せて、もちろん信頼しているのもあるでしょうが、体よく追い払ったことからも察せられます。

ラウダは前回でも触れているように、主に父親からですが情報をかなり絞って与えられているため、恐らく作中でもそんなに事情を知っているキャラではありません。そのため、何が起きていてだれがどういう思惑を持っているのか大抵把握しきれていないのだと思います。ダリルバルデのAIへの干渉も、スレッタへの魔女裁判も、グエルが子会社へ行かされるということも、ヴィムがデリングを殺す気でいて兄の未来の就職先であるドミニコスがなくなる可能性があるのも、ラウダは知らされていないのです。

それでも、わからなくても傷ついても、とりあえず何とかしようとしているところが、ラウダの偉くて強いところですが。

このように、ラウダは真面目で腹黒くはないので、物事を正面からとらえてなるべくルールや常識の範囲内で解決しようとしているし、周りもそうだろうという思考傾向が見られます。敵から見れば甘さであり、プロスペラは恐らくそういう目で見ていて侮っていますが、味方から見ればこれは好ましい部分に変わります。

冷酷な手段でも腹黒な手段でも、勝てばよかろうと手を染められる人物も確かに味方からすれば頼もしいですが、賢いのに愚直で、世の中の悪意をわかっている顔をしてもぜんぜん想像が足らない、隙はあるし危なっかしいけれど、そういう人はだからこそ魅力的で支えたくもなる。

ただラウダは実際優秀だと思うので、あくまでルール無用のダーティーな手段に対して免疫がないだけで、普通ならそうそう負けないのではないかと思います。

ダリルバルデの開発チーム、というのは私の考察なので置いておくとしても、決闘のオッズは7位。兄がバンバン決闘を受けていて、本来ラウダが受けるべき勝負も弟だからと引き受けそうなので、実際に戦った数は少ないのでしょうがそれでもベストテンに入っている。決闘もほぼルール無用のようなものですが、あくまで子供の考えつくことで、大人の悪意のそれとは比べるべくもなく、ラウダも3年あの学園にいるのでやられることはだいたい想像できるでしょうし、グエルが「どんな不利な条件でも決闘を拒まなかった」ので、そもそも見慣れているはず。

ビジネスにおいてもヴィムから信用されているので、こちらでも大きなミスは犯していないはず、ということはある程度なら自衛もできるし想像もできてはいるんですよね。ただあまりにも常識外れというか、ルールや倫理観を度外視するのは、そんな人間いたのかレベルであるだけで。

こうして考えていくと、あくまで私が勝手に考えているだけですが、ラウダは多分、いつまで経っても人間の悪意には慣れることなく、甘さを抱えて生きていく人間なのかもなと感じます。

そして人生経験豊富な大人にとっては、最悪の可能性を教えたらぎゅっと眉をしかめて、意味が分からないという顔をするラウダは、甘い人間であり同時にまぶしくもある。そして多分ラウダは、最悪の可能性を教えてくれた相手にそんなこと考えるなんてあなたもそんな人だったのか、ということは思わないのではないかと思います。むしろ理由を聞いて納得したら、あるいは納得できなくてもそういう可能性もあるのかと、教えてくれたことに素直にお礼を言える人なのかなと。これは美化しすぎかもしれませんが、ラウダは裏工作ではフェルシーとペトラの力も借りて、自分の声が届かないと思えばすぐさま決闘委員会を頼っているので、他人に助力を乞うことをためらわない、他者に助けてもらうことを素直に受け入れられる人間です。

要は甘え上手ですね。そして甘え上手な人というのは、往々にしてお礼だったり称賛の言葉だったりを惜しまず、素直に相手の好意を喜ぶので、相手ももっともっと助けたくなる、そういう正の循環が上手い人でもあります。というのは、あくまで私の考えですが。

いずれにせよ、ラウダは感情を隠せないところといい、甘え上手な面があるところといい、大人として見てみると、結構かわいらしいほほ笑ましい一面があることがわかります。しかも基本的に賢くわきまえているので、甘える対象を選んでいるし、公としての場では仏頂面かプロスペラへの営業スマイルのどちらかで、こういう可愛らしい一面があることに気づかないことも多そうなので、そりゃもう前回の記事でちらっと言及したように、頼られたジェターク社の大人たちはベタベタに甘やかして大切にしているんだろうな~というのが想像できます。

まとめ


ラウダは冷静で理性的「判断」を下すが、感情面においてはむしろ素直に表現して取り繕うことができないし、人の好き嫌いが激しく嫌いな人間とは徹底的に距離を置きたがる。ただ好きな人に対しては距離が近く、甘い傾向があり、寮生たちはその筆頭。不正を嫌うが故に手段を選ばない人間の思考回路がわからないという弱点があり、そんなところもまた大人から可愛がられるであろうタイプで、ラウダ自身甘え上手で、人に頼ることを苦に思わない、そんな性格であると私は考察しました。
字面にするとスゴイいい子みたいですが、歯に衣着せぬ物言いをするし、好きな人相手にしか心を開かないし、それもジェターク社の内に入らない人間に完全には心を開かないであろうことから、実際にあの世界にいたらジェターク寮生にならない限りは冷たい怖い人なのかな、という印象で終わりそうだな、と思います。

さて、なるべく今回はグエルとの絡みを除外して性格考察をしていきましたが(完璧に除外しきれないのは許して…)、次回は積極的にグエルとの関係性からラウダを、そしてグエルが彼に対してどう思っていたのか、お互いがお互いにとってどういう存在だったのかを考察していきたいと思います。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。