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【考察】ダリルバルデはラウダ主導で製作されたモビルスーツ

ジェターク社製最新第5世代モビルスーツ、ダリルバルデ。ジェターク社製モビルスーツであること、ジェターク社でも最高機密であり重大な存在であろう最新型であること、ガンダムと戦うためにヴィムが用意した虎の子のモビルスーツであることから、ヴィムが主導となって製作したモビルスーツである、と考えるのが自然ですが、私はあのモビルスーツはラウダが主導となって製作したものではないか?と考えています。

私はジェターク家、特にラウダが大好きなので、そういう贔屓目も多々あるとは思いますが、それでもつらつらと考えていくと、どうにもそれを除いても可能性が高いのではないか?と思い、こうして考察を記していく次第です。

では、レッツ。
※ただしモビルスーツにも兵器についても素人なので、武装についての考察や推測は誤っている可能性は多々あるものとします。
※また、ディランザは父親であるヴィム・ジェタークが開発したという仮定を前提に考察を構築しています。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。

ダリルバルデとディランザの製作コンセプトの違い


ジェターク社の汎用型モビルスーツ、ディランザ。ディランザの開発コンセプトは、とにかく「盛る」。
装甲を盛り、それで機動力が減衰したら推進力を盛ってカバー、武装もライフルサーベル背面にミサイルを盛ると、とにかく欠点を直すのではなく足して足して、プラス点をマイナスよりも多くして結果的にプラスにするという、ヴィムらしいパワープレイのモビルスーツです。

翻ってダリルバルデは、明確に対ガンダムを想定したモビルスーツであることはもちろんのこと、背面にサーベルをマウントした遠隔ドローン2基、双刃としても運用できるビーム槍と、それをドローン運用可能な着脱式の両腕、膝に仕込んだ機雷、射出して相手モビルスーツを拘束して電撃によるパイロット無効化も可能な足。こうして見るとダリルバルデもかなり武装を盛るタイプのモビルスーツかと思われますが、でもちょっと待っていただきたい。

ダリルバルデはディランザと比べてスマートな体型をしており、実際に重さも学生用ディランザが頭頂高18.2mに対し85.3t、ダリルバルデが18.7mに72.8tと、頭頂高はほぼ変わらないどころか0.5mダリルバルデの方が高いのに12.5tも軽量です(Ⓒ創通・サンライズ・MBS 機動戦士ガンダム水星の魔女公式ホームページhttps://g-witch.net/mobile-suit/より引用)。
装甲を分厚くして機動力も上げる、のではなく、装甲と機動力でバランスを取るような調整をしていることがわかります。

もちろん、装甲を改良してより薄くより軽いのにより丈夫な改良をしている可能性もありますが、エアリアルにボロボロにされているので、そこまでの技術的革新は見られません。むしろ盾受けをしたにも関わらず装甲が破損しているダリルバルデより、直撃を受けても(しかもコックピット付近)ダメージがほとんど見られず数本束になったビームでようやく四肢切断されたディランザの方が装甲が硬い可能性すらあります。

ディランザのダメージ ビーム攻撃のみ(汚れは恐らく土埃)
ダリルバルデのダメージ ビーム攻撃のみ

それより、装甲と機動力の最適なバランスを研究し、重すぎずしかし防御面も不安のない、マイナス点をプラスで覆い隠すのではなく、マイナス点はマイナス点と割り切り、マイナスの値をできるだけ少なくしていくという設計思想をしている可能性が高いのではないかと考えられます。

武装についても、まだ実験機ということもありますが近接に偏重しており、いくらドローンがあるとはいえ遠距離武装がほしいところ。(無線ドローンを遠距離仕様にするのは、ドローン技術については恐らく最先端をいくグラスレーが未だに有線なので、現在の技術ではGUNDフォーマットのパーメットの効率化がなければできないと推察され、現時点では武装を追加するか武装を変更するかのどちらかしかできないのだと思います)

ディランザの考えを延長すれば、ミサイルなどの何かしらの遠距離武装を追加するか、槍を剣に変えて空いた片手にライフルを装備する、あるいは槍はそのままにライフルも追加する。そういう追加兵装で解決していくという流れになるはず。
しかし実際のダリルバルデは、そういった武装変更も武装追加もされていない。

設計コンセプトや、企画立案者自体が変わった、というぐらいディランザの設計思想が受け継がれていないのです。

では誰がダリルバルデを発案し、実際に開発しているのかといえば、まだ出ていないジェターク社の人間でないのだとすれば、それを行える可能性があるのはラウダだけに絞られるのです。

ラウダの専用ディランザを見ると、巨大な斧やラウンドシールド、近接特化型の機体設計から、「近接バリバリのアタッカーで、溶断武器で敵を切断する、結構ヤバイ系の機体コンセプト」にも見えますが、私は意外と「防御を重視した堅実な機体」なのでは?と思っています。

ラウダの巨大な斧は破壊的な印象が強いですが、特筆すべきはむしろ「盾として使える」点にあると捉えています。つまり、ラウダはディランザが通常盾1~2枚のところを、分厚い3枚の盾を有しているのです。そして両肩の盾もラウンド型なので、グエルのものと比べると防げる範囲が大きく、さらに斧も含めると、ほぼ上半身に隙がなくなる。

また実際にラウダは戦うことはありませんでしたが、グエルの戦い方を見るとヒントがあります。エラン戦で「触れさえしなければこんなもの!」「すり抜けてみせる!」と全方位ビームを打破するために、斧を積極的に盾として使っている。恐らくラウダも遠距離武器は斧を盾としてすり抜け、肉薄して敵を倒す。あるいは3枚盾で防ぎきり弾切れにさせる、という戦略を取っていたと推察できます。弾幕をすり抜けるのはグエルのスタイルとも捉えられますが、ラウダのディランザは91.1tと重いので実際にそういう動きが可能であると思えるだけの根拠があったはずです。

左:触れさえしなければ  右:すり抜けてみせる

そしてガンビットが使われるまでライフルを使っておらず、斧をメイン武器として近接戦闘を行い続けているので、ラウダもまた基本的にライフルを使わず近距離戦を主にしかけていたのだろうことも想像できます。

時系列左から右へ

この武装や戦闘スタイルからわかるのは、ラウダは遠距離武器を完全に捨てた特攻野郎というわけではないし、自分の命を軽く扱うような人間でもないが、彼自身がもっとも得意とするスタイルはバランス型ではなく近距離偏重型であるし、中距離戦闘は兄以上になれない。のならむしろ自分の得意分野を特化させて強みにする、ある種極端な合理主義と割り切り主義者である。ということです。

そしてこの思考はそのまま、上記で示した通りダリルバルデに受け継がれているのです。
できることはできる、できないことは「努力してもできない」のなら、リソースを割かずにできることを伸ばしてカバーしていく。

そんな徹底した割り切った合理性が、ダリルバルデからは読み取れます。

ヴィムの発言


ダリルバルデはグエルがエアリアルと戦うためにヴィムが用意した機体。だからヴィムが開発したと捉えられますが、その発言に注目すると違和感があります。

「このスタッフもダリルバルデも、お前を勝たせるために、俺が集めたのだ!」

勝利するために、お前のために、わざわざ用意したんだ!という恩着せがましいセリフですが、注目すべきは「集めた」というところ。

グエルに「ヴィムが、会社が、お前の勝利のために手間をかけているんだ」というメッセージを伝えるなら、「俺が集めた!」ではなく「俺が用意した!」「俺が造らせた!」でもいいはず。

しかも「集めた」というのは、元は別の場所にあったものをここにそろえた、というニュアンスが強い言葉なので、つまり「ヴィムが管理しているところとは別セクションが担当しているダリルバルデを」今回のために集めた、という意味とも受け取れます。

そして何より、このチームはこのためだけに集めた急造チームで、ダリルバルデの開発チームではないことが、ヴィムの発言で明らかになっている。開発チームなら、わざわざ集める必要はなく、言い方も「来てもらった」等が正しいはずです。

このことから、ダリルバルデはヴィムが携わっているモビルスーツではないことがわかります。

さらに面白いのは、「ダリルバルデの開発チームはヴィムの強権を跳ねのけられるほどの胆力か地位かあるいは両方があるエンジニアが担当している」のだろうということ。

ジェターク社の中でヴィムは絶対的な権力を持ち、彼の言うことには誰も逆らえない。でも実は私たちはヴィムが周りに囲っている人間しか見ていません。彼が悪だくみをしている間もジェターク社で仕事をして、利益を上げているだろう人々を見てはいないんです。

そして後述しますが、ヴィムがやっていたことは本当にひどい、グエルにはもちろんダリルバルデを製造した人員すべてに激怒されてしかるべしなことをしている。

もし、開発チームがヴィムの裏工作を命じられたら、真っ向から反発しダリルバルデは絶対に渡さないと強硬して反対したでしょう。だからヴィムは急遽ダリルバルデを調整できるチームを集めなければならなかった。

もちろん、ヴィムも開発チームにいて、チームメンバーの心根を知っていたので別チームを作らざるをえなかった、という可能性もありますが、強権的なヴィムにしてはずいぶん気を遣った判断であり、そもそも自分が主導権を握れる状態なのに、自分の言うこときかないチームをわざわざ編成するか?と言われたらだいぶ疑問なので、ヴィムは最初から関わっていないとしました。

さて、そうなると新たな疑問として、ヴィムが会社の将来を担う新作モビルスーツの開発を誰に任せるのか。というものが浮上してきます。

子供の意見を上から押さえ込み、命の危険のあるモビルスーツ戦を護衛もつけずに飛びだすような、自分が優れていると心から信じている男が、未来を託す人間。

それもまたラウダ以外に考えられない。

ヴィムはラウダには積極的に社運のかかった役割を任せています。廃熱処理の裏工作も、プロスペラの足止めも、どちらも会社の将来に直結した大勝負。

それを任せられるに足る人物であるとラウダのことを認めているのなら、同じくこれからの会社の将来を担う新世代モビルスーツも託す判断をすることもあるのではないか?

でもグエルを跡継ぎに選んでいるんじゃ?もちろん「長男が跡を継ぐべきもの」という古臭い考えを持っているでしょう。
でもそれとこれとは違う。ヴィムは何度もグエルを叱りますが、それは役割を果たせなかったり子どもの幼稚なプライドからの反論であるからと言っています。一応。

つまり逆を言えば、役割を果たし子供ではなく大人の目線で話すのなら、ヴィムも認める可能性があるのです。

ラウダは、本編では、「学生以外が決闘に関わるのは」「あんなことをしなくても、兄さんは勝ちます」という子供や弟の理屈で反論しています。しかし叱られていない。ということは、すでにラウダはある程度ヴィムから信頼を得ていて、「社用だ」と理由をきちんと説明し、子供の理屈を振りかざしても流す、それだけの対応をするだけの価値があるとすでに証明しているのだとすれば?

そして次世代モビルスーツの開発は、まさにその最後の試験であり、ヴィムが虎の子として使っていることから、父親の合格点に達していることにもなる。そういう風にも読み取れます。

まとめると、ヴィムの「集めた」という発言から、ダリルバルデは違う開発チームで製造された可能性が高い。そのチームを任されたのは、ヴィムから信頼を獲得したラウダである可能性もまた高い。と推察されるのです。

ダリルバルデ調整チームが明らかに無能


ヴィムが集めた調整チームなんですが、なんというかこう…無能。その一言につきる残念な集団なんだろうな、と見ていて思うんですよね。

そもそもグエルに対する対応がひどい。
御曹司呼びもこの時点で不敬だろレベルですが置いておいて、グエルの「このモビルスーツに何を仕込んだ!」という詰問に対し、「第5世代の意思拡張AIです。β版ですが」と、まぁ疑問には答えているんですが、グエルの剣幕にのほほんとどこか他人事なんですよね。

明らかに自分が担当しているモビルスーツに不満を抱いていて、しかも「仕込んだ」という言い方はこちらが悪いことをしているかのような強い言い方です。仕込んでいるのではなく、ただ単に今までとは段違いの性能をしたAIを載せているだけで何も悪いことなどしていない。プライドのある技術者なら「仕込んだ!?何言ってんだ!」と怒りが先にきそうなものです。

その後「俺の腕じゃ勝てないってのか!」というグエルの怒りにヴィムが割って入り、なあなあで終わってしまうのですが、これも分別ある大人なら大分おかしい。まずCEOであり何より親であるヴィムが子どもに暴力を振るうのをなんのリアクションもしないのもあり得ないし(普通驚くし「うわぁ…」という反応ぐらいするはず)、テスト機に乗せるのですからグエルの腕は信用しているし勝ってもらわなければ困る。何か勘違いをしているんだなとわかるし、それは技術的な誤解を解けば十分納得できる内容でしょうし、ヴィムが割って入るのは筋違いです。

彼らはダリルバルデのAIに細工をして、制御権をパイロットから奪うという裏工作を行うのだから、実際言葉の通りにグエルの腕を信用していないんだから反論しないのも止めないのも当たり前。ですがこの裏工作自体、まっとうなエンジニアであれば耐えられるような代物ではないはずなのです。

公式ホームページには「意思拡張AIによって自律行動を行う新型ドローン兵器を装備している」とあり、AIの専門はあくまでドローン兵器の制御をするものと説明されている。またダリルバルデのプラモデルの説明書も、「意思拡張AIによって自律行動を行うドローンを」とあるので、意思拡張AIはあくまでドローンを操作するためのものなのです。(Ⓒ創通・サンライズ・MBS BANDAI SPIRITS HGダリルバルデの説明書から引用)

ダリルバルデに搭載されているAIはあくまでドローンの制御を行うことであって、決してAIがパイロットの代わりを務めることではないんです。むしろ逆です。

つまり彼らはダリルバルデに全く想定外どころか専門外の動きをさせている、機体の持ち味を殺す調整を施したことになるのです。

現に、エアリアルとの戦いでは、白兵戦や攻撃についてはキレが悪く(右腕を落としガンビットを一個弾き飛ばしていますが、覚悟を決めたスレッタに押し返され、その後は特にダメージはありません)、両腕も切り落とされる始末。

ドローンによる四連撃
槍をはじかれ、両腕を切り落とされる

逆に盾ドローンによる防御は、スレッタに「うそぉ!?」と言わせるほどの精度を誇っている。

このことから、ダリルバルデはβ版時点では、盾ドローンによる防御偏重のAIを組み、攻撃に関してもパイロットが白兵戦を行うのを補助し、その他モビルスーツのように操縦を補佐する前提で設計されていると考えられます(パーメットの情報伝達をする特性を利用して出力を上げるので、その調整はAIなどで自動でやっていると推測)

ダリルバルデ本体の動きにデモ用でも何でも、パイロットの動きをトレースさせたAIを仕込めばまだ戦えただろうけれど、恐らくそれもできていない。

勝手に動くダリルバルデの画面に映っている文字は、SEMI-AUTONOMOUS MODE、直訳すると「半自律モード」。あくまで「半自律」で「全自律」じゃない。つまりパイロットがいる前提の状態で戦っている。

なのにどうしてあんなにフルオートのように動いていたのかといったら、恐らく認識しているパイロットが「気絶している」などの操縦できない状態であると誤認させられ、攻撃をしのいだら撤退するというプログラムが消去されている、という「その場しのぎ」の対応をずっとせざるを得ない、そういう歪なプログラミングをされていたからだと思います。

この観点で戦闘を見てみると、攻撃はすべて単調なものばかりで、エアリアルの手から近接武器であるサーベルがすっぽ抜けて、切断されたドローンを射出して不意を突き、せっかく相手の体勢を崩した絶好の攻撃チャンスに、畳みかけるのではなく距離を取っている。

両腕切断→すっぽ抜け→ロケットパンチ→体勢崩れる→離れる

スレッタを驚かせるような攻撃は、最初の槍の投擲からのドローンによる奇襲ぐらいで、それも含めてすべてスレッタに看破されています。

ヴィムの動きをトレースした実戦用のAIで機体を動かしているとしても、こうなると今度はあまりに動きが稚拙すぎる。

ヴィムは遠距離武器も使っていますが、最後に白兵戦を挑んできたデスルターに対し、自らも真正面から白兵戦を挑んでいます。息子であるグエルもラウダも近接戦を得意としているので、ヴィムも近接戦を得意としていた可能性は非常に高く、だとしたら本人でないとはいえ、あまりにも弱すぎる。

抜刀→突貫

ではなぜ、ヴィムの集めたエンジニアたちはこのような調整をしたのか。
恐らく彼らは狙ってこのような調整をしたのではなく、このような調整しか「できなかった」。そして彼らもヴィムも、ダリルバルデの意思拡張AIがどういうものか、そして意思拡張AIが現時点で何ができるのかを理解できていなかった。そういうことなのだと思います。

あくまで現時点で盾ドローンの制御に特化した、パイロットを補助するためのAIなのだと知っていたら、ヴィムは自分のデータでも何でも入れ込んで使ったはず。

ですがヴィムはそれをしていない。それはつまり、彼が意思拡張AIについて「戦うためのAI」などの雑な認識しかできていない証であり、やはりダリルバルデの開発には深く関わっていないことの証でもあるのです。

そして技術職であるチームメンバーの無能さも。彼らはヴィムよりも専門家のはずであるのに、意思拡張AIがどのような技術であるのかを理解していない、あるいはヴィムに説明をするのもその後の対応を行うのも面倒くさいからあえて何もしなかった。

…両方かもしれない。
そうだとすると、あの他人事な態度も、表面的な説明も、本当にそれ以外知らないからできなかったにすぎず、根本的にAIを変えることも、後入りでパイロットの操縦を行うAIを入れることもできない、せいぜい元あるAIの仕様をすこし弄る程度の技術しか持っていない人間たちだった、としか考えられないのです。

ラウダはグエルの「エースパイロットはく奪」よりも「ダリルバルデ回収」の方に重きを置いている


4話でラウダはグエルに「エースパイロットのはく奪だけで済ませたかったんだけど、ダリルバルデまで引き上げだなんて」と言っています。つまりラウダはエースパイロットの称号よりもダリルバルデを手元に残す方を優先している。

しかし、改めて考えるとちょっとおかしいんですよね。

エースパイロットという称号は、グエルにとって特別なもののはずです。それがたとえドミニコスではなくジェターク社のものだったとしても。しかしラウダは、ここでグエルのプライドよりも、ダリルバルデの方に天秤を傾けている。
ヴィムに反論してまでプライドを守ろうとし、ドミニコスのエースパイロットになりたいという夢を応援しているラウダが、傷ついたであろうグエルよりも機体の方に重きを置くのは若干違和感がある。

しかも、ダリルバルデは新進気鋭のモビルスーツ。乗るまでグエルも詳細を知らず、また乗っても恐らく知らされておらず、まだまだ試験段階にあるモビルスーツ。直前の戦闘でも大半がズタボロにされていて、やっと本調子に戻った後半でもエアリアルに敗北している。

はたから見ている分には、そして兄の力量を知っているだろうラウダにとっては、「グエルとは操作相性が悪かった」「まだ不完全だった」「グエルの腕をフィードバックできない」そんな機体印象のはず。

私たちはダリルバルデがグエルの操縦を反映していない、故に負けたのだと知っていますが、ラウダは廃熱処理の工作は請け負っても、この卑劣な処置については知らなかった可能性が高い、というより完全に知らないでしょう。そうでないと、決闘の前の激励が完全な嘘偽りになってしまうし、その後ヴィムと言い争うグエルに「今は戦いに集中して!」と声をかけるのも矛盾してしまうのです。ダリルバルデが自動で戦闘することを知っていたのなら、グエルが戦闘に集中していようがいまいが、遊んでいたとしても問題ないからです。しかし知らないのなら、父親との喧嘩に集中し、エアリアルが目の前に来ているのに何の反応もしていない現状は非常に危険です。だからラウダは声をかけた。グエルが自分で操縦していると信じて疑っていないのです。

ならばなぜ、ラウダはグエルよりも、敗北したダリルバルデを選んだのか。

それはダリルバルデを造ったのがラウダだから。機体性能を知り尽くし、この機体でもう一度戦えば、何度だって戦えば、必ず兄が勝利することを確信していたから。

だから兄よりもダリルバルデを選んだ。それがグエルの誇りを取り戻すために一番必要な、そして最後の手段だと、彼は知っていたからです。

ダリルバルデの競合モビルスーツはグラスレー社製の対ガンダム専用機


ガンダムであるエアリアルと対決し、十八番であるガンビットに対抗するような無線ドローン、プラモデルの説明書にあるガンダムを「呪い」と称するアンチガンダム発言、それらからガンダムがダリルバルデの競合モビルスーツだと私は思ってしまったのですが、恐らくでもなくダリルバルデの競合モビルスーツはグラスレー社のモビルスーツ、特にガンダム特化型です。

これはすこし考えなくても当然だったのですが、ガンダムは全面的に禁止されている禁忌の技術であり、エアリアルが出てくるまでこの世には存在しないものだったはずなのです。だから、存在しないものを競合として想定するはずがない。

ならなぜ急にGUNDフォーマットやガンダムの技術を使っていないこと、「呪われた技術で作られたガンダムとは違い」「正当な進化系としての矜持が込められている」と、ディランザでは影も形もなかった強いガンダムアンチアピールが入ってくるのかといえば、ガンダムを倒すべく開発されたグラスレー社のモビルスーツが想定競合であるから(武装も敵をつかむ足は恐らくベギルベウを意識してますし)。(Ⓒ創通・サンライズ・MBS BANDAI SPIRITS HGダリルバルデの説明書から引用)

そう考えると、「次世代のドローン(遠隔操作無人機)兵器技術をモビルスーツで運用することが最優先課題に上げられた」と、無線ドローンにこだわっているのも、対グラスレーだから。(Ⓒ創通・サンライズ・MBS BANDAI SPIRITS HGダリルバルデの説明書から引用)

グラスレー社のモビルスーツは、初期のベギルベウの時代からドローン技術を使用しており、その技術について一日の長がある。しかし最新鋭のミカエリスもまだ有線ドローンを装備しており、無線ドローンを標準装備とすることができれば、ダリルバルデが一歩抜きんでることができる。

そしてそう考えると、背面の無線ドローンを現段階でサーベルとして運用しても問題ないとしているのも、グラスレーのドローンは武器としてよりももう一つの役割の方が大切だから、今の段階では武器まで完璧にできていなくてもいいと判断したと考えられます。

それはアンチドート。ガンダムを無効化する対ガンダム専用装備(ガンダム専用かはグラスレーのプラモデルを購入してないので怪しいですが…便宜上)

これを搭載することを前提とするのなら、むしろ無線ドローンにアンチドートとサーベルまで搭載できるのか、というレベルでの話になるし、対ガンダム戦闘が行えるだけでなく対モビルスーツ戦闘でも高レベルな戦闘が行えるという、ガンダム特化型よりも幅広い選択ができるようになり、プラス点となりうる。

ではなぜガンダム特化型に勝つ必要があるのか。

Daril(最愛の)Balde(ヒト)に贈る最高の機体


それはこの機体が、いずれドミニコス隊のエースパイロットとなるグエルを乗せることを想定しているものだから。

デスルターの次がディランザ、ディランザの次がダリルバルデ。
ベギルベウの次がベギルペンデ、など、水星の魔女のモビルスーツは恐らく10年単位で使用することを想定している、他のガンダムシリーズと比べると非常に長いスパンで開発や運用を行っていると思われるのです。

そうなると、ダリルバルデもまた、10年単位での運用を想定しており、グエルが卒業してエースパイロットになるであろう3~5年後にはドミニコス隊のエースパイロット機として採用され、その後のアップデートや新機体の開発へ繋げていく、という想定で開発しているという可能性が非常に高い。

何よりダリルバルデの武装がサーベルと槍と、グエルのメイン武装で試験運用をしているというのが、この機体の正式なパイロットはグエルであるという意思表示なのです。

ダリルバルデのスペルはDarilbalde。 Daril、は実はLが1つ足りませんが1単語とするために省略したとして、Darillは英語圏で男性名であり古いフランス語で「最愛の」を意味する、Baldeは広く人名として使われている。最大の意訳をして、「最愛のヒト」と名付けられたモビルスーツ。

「ドミニコスのエースパイロットになる」というのは、恐らくグエルがずっと思い描いていた夢です。しかし、これをヴィムが知っている可能性が高いか低いかで言えば、私は低いと思います。

ヴィムは非常に強権的で、子供をコントロールできる範囲に置いておきたいタイプの人間です。グエルを呼びだしたり決闘に干渉したり、グエルの意思を確認することなく子会社に入れて自分の管理下に置こうとしていることからも、全く子供を手放せないタイプの父親です。

関係ないですがこの横顔、髪の生え際と眉の形が似ていて親子~

何よりヴィムはデリングが殺したいほど大嫌いで、そんな彼が長を務めるドミニコスへの入隊を許可するかと言えば、間違いなく許可しないでしょう。
仮に知っていたとしたら、デリングを暗殺するということはすなわち、ドミニコスもまたどうなるかわからなくなるわけで、いずれにせよグエルの夢はへし折られることになる。

何よりグエルは直系の息子であり、ジェタークの姓を受け継ぐ人間。姓の違うラウダに会社を引き継がせるのは少々整合が取れない。

でもラウダはその夢を知っていた。そして「これは兄さんだけの決闘じゃない。ドミニコスのエースパイロット、諦めてはいないんでしょう?」と発破をかけている。

グエルがこの夢を共有し、一緒に追いかけているのは父親ではなくラウダで、ラウダは兄の夢を全力で応援している。
ならばドミニコスのアンチガンダム用の機体として設計開発したダリルバルデは、ジェターク社に兄の代わりに残る決意をしたラウダにとって、簡単には会えなくなり、すぐ傍で守ることのできなくなるグエルに贈る盾であり剣であり鎧である、まさに「最愛の兄へ贈る最高の機体」。そういうものだったのだろうと、私は思うのです。

まとめ


ダリルバルデの設計思想の違い、ヴィムと調整チームの不審点、ダリルバルデの想定している将来目標から、ダリルバルデの開発を主導したのはラウダであり、その設計思想にも深く関与していると、私は考察しました。

次回は、そんなラウダがジェターク社においてどのような位置づけ、権力を持っていたのかを考察していきます。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。