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【考察】パーメット、GUNDによって繋がるアド・ステラの子供たち-中編

さて。前編ではスレッタとラウダ、特にラウダの勘が異常に冴えわたっている点、他者であっても心を理解しているような描写がある点に注目しつつ、パーメットについて、それを人が含んだ場合について考察してきました。

中編ではガンダムとパイロットについてと、スレッタがラウダのように心を理解している描写についての考察。そしてデリケートな話題と妄想度マシマシな考察をしていきます。

※3/26子宮のGUND、精巣のGUNDにヴィムの好みの女性についてを追加しました。サリウスの描写を少し削りました。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。

ガンダムに含まれるパーメットによる相互干渉


ガンダムはパーメットによる相互干渉を行うと言われています。そして相互干渉を行うというのは「ガンダム同士でだけ」だと。

しかしそうなのでしょうか?PROLOGUEでナディムの乗ったルブリスは、同じガンダムであるルブリス試作型だけでなく、戦っていたベギルベウ、全く関係ない艦船の通信すらもジャックしました。

これがなぜ起こったのか、作中では明らかにされていませんが、恐らくパーメットによる相互干渉です。

エアリアルがファラクトと相互干渉を起こした時、やはりハロの通信が乱れました。ハロがエランのようにガンビットがエリクトに見え、笑う彼女たちの声が聞こえた、というところまではいっていないでしょうが、それでもエアリアルとファラクトの干渉に巻き込まれ、通信に異常をきたした。

これは推測ですが、ガンダム同士だけが「相互干渉」できて、それ以外のパーメットを使用した機器はガンダムだけが「干渉」できるのではないでしょうか?ラジャンが「通信を切れ」と命じてもできなかったのは、ガンダムからの一方的な干渉であったからで、GUNDフォーマットを搭載していない機器ではそれを解除できないのだとすれば、つじつまが合います。ただ、何でもかんでも干渉ができるわけではないのではないか?とも思います。

あの時艦船は遠く離れていました。そしてナディムのルブリスの近くにいたのはベギルベウです。ベギルベウはドミニコスの機体なので、当然艦船との通信が可能です。恐らくルブリスはこの通信網によって、艦船へと干渉を行った。あそこまで歌が届いたのは多分偶然です。

このことからわかるのは、ガンダムはパーメットによって相手に干渉し、逆に言えばパーメットと触れ合ったり何らかの形で吸収して情報を共有しなければ干渉はできないのではないか?ということです。

エアリアルの干渉も、不思議な光がぶわっと放たれたから起きたことです。あの光は、ガンビットを展開している時にも見る光なので、恐らく濃厚なパーメットではないでしょうか?それを浴びたためにファラクトとハロはエアリアルに干渉された。そしてファラクトはガンダムなので、相互干渉を行いエアリアルの深層にいるエリクト(と仮定)を視た。あれは幻視ではなく、実際にガンビットの皮を引きはがした、パーメットの世界では「そう」形作られているのではないでしょうか。

9話でもこの干渉は行われています。ガンビットの繭のようなものが形成されて、シャディク達は包み込まれます。そして、アンチドートが止まります。この時「オーバーライド」と言っています。「乗り越える」の方ではなく、プログラミング用語の方のオーバーライドだと思うんですが、私はプログラマーじゃないのでよくわかりませんが、ざっくり理解した範囲だと「定義の書き換え」です。これが行われて「制御がきかな」くなった。あの時アンチドートを乗り越えたのではなく、定義を書き換えてアンチドートを「使えなく」したのだとすると、これはとんでもないことで、下手をするとすべてのモビルスーツがガンダムにひれ伏すことになるのではないでしょうか?アンチドートで動けなくなったガンダムとは逆に、ガンダムがその他のモビルスーツの動きを止めることができるようになったとしたら?

まぁそれは置いておいて。さらにもう一回、エアリアルはガンダムではない、今度はモビルスーツですらないものに対して干渉を行います。それが12話で地球寮とミオリネを探し出したことです。あれは恐らく、プラントの監視カメラや生態認証システムをハックして、彼女が今どこにいるのかを探し出したんだと思います。地球寮は「船」という同じ機械でありパーメットの巨大な塊であるから、繭を作り出さなくてもガンビットだけでわかり、ミオリネはそれよりも小さな人間のため、またも繭を作り出し、そして「どこにいるのか」をスレッタに教えています。

このように、ガンダムはパーメットによって情報を共有し、そしてガンダム同士で相互干渉し、ガンダム以外にも干渉できる。ガンダムの相互干渉はもうちょっと複雑な条件があるかな。という気がします。ソフィとノレアのガンダムとは相互干渉していないので。

ガンダム同士、モビルスーツ同士、機械同士でパーメットによる干渉ができる。

では人間は?

ガンダムと人間は干渉できないのでしょうか?

答えは「できます」。それもただの干渉ではなく、相互干渉を行っています。でなければ、エランがあれだけ苦しみ、スレッタにみんなの声が聞こえるはずがないからです。

エランは自分の視界がエアリアルとなっており、手をまるで自分のもののように動かせています。と同時に、脳に手を突っ込まれるようなざらついた感覚がない。と言っています。つまり、ファラクトからは「脳に手を突っ込まれるような」干渉を受けている、ということです。
そして「脳」に干渉を受けているので、ファラクトはエランの「心」や「考え」に干渉をしようとしている。と言えるのではないでしょうか?

GUNDとは身体拡張技術です。身体拡張と言うことは、機械を自分の手足と同じ感覚で動かすことができる、失った臓器を自分の臓器として身体が認識する。つまり、機械のパーメットと自分のパーメットが情報を共有し、「これは自分の身体である」と体にあるパーメットが認識する、肉体から機械への干渉を行い制御をしている。

通常はこのプロセスひとつでオールOKです。これならGUNDが安価な理由にもなります。医療技術のGUNDには恐らくAIが組み込まれていない、プログラミングがあったとして、突然止まらないようにするとか、そういう簡単なものなのではないでしょうか?極端な話、例えば心臓のGUNDは電源と心臓のような動きができるポンプに「これは心臓である」という情報を入れたパーメットを入れて、あとは人側のパーメットが「これは心臓である」という情報を共有、「だから一分間にこれだけの拍動を行わなければならない」と人間側が勝手に動かしていく。今のペースメーカーは「一分間にこれだけの拍動を行う」として作られた機械を電気で動かす、人間側ではなく機械に定められた回数で動きます。この動かすところを人間側で調整してもらう、ということですね。つまり本当に、「臓器移植」の臓器がGUNDになっているだけ、という代物なのだと思います。

ところが、GUND-ARMは違います。ガンダムはより複雑で、スラスターの制御や通信やらで、どうしてもAIを入れなければならない。つまり同じ体を使うのに、脳みそが二つ付いている、二人羽織というか、なんでしょうね…着ぐるみもまた独自の意思を持っている。というところでしょうか。

こう考えるとこれが異常なことであることがよくわかります。例えば自分が左に行きたいと考えていて、着ぐるみが右に行きたいと考えたら、さてどうなるでしょうか?

これが起こりうるのがガンダムです。ゆりかごの星で、「太陽を避けながら僕らは現地に向かう。」「「エアリアル、出力は私が調整する」」「僕は太陽に曝されないようにエルゴを懐に抱くと、大きく飛んだ。」と、エアリアルとスレッタが一緒に動き、時にスレッタが主軸となり、時にエアリアルが主軸となっている、という描写があります。(Ⓒ創通・サンライズ・MBS 機動戦士ガンダム水星の魔女公式ホームページhttps://g-witch.net/music/novel/より引用)
つまり、この二人は阿吽の呼吸で一緒に動きを同調させ、必要な場面で動く方を交代し、上手にひとつの体を使っています。

ただ、他のガンダムでこのように体の奪い合いが起きる、少なくともファラクトはエランが自分の機体を使うのに逆らおうとは考えていないんじゃないかと思います。彼らは元々機械であり、人に乗ってもらって初めて動く、そういうモノです。人間が話しかけなければSiriやOK Googleが勝手に起動しない、という感じでしょうか。

実際ファラクトは、眼前に岩の塊が迫ってきても、警告音を出すばかりで自分で避けようとはしませんでした。

彼らには自分が機体制御を奪ったり、人間が自分たちの体の制御権を持っているように、自分たちが人間の体の制御権を逆に奪い返そう、という発想は恐らくありません。そんなプログラミングはされていない。

ただし、「パイロットをより理解したい」という欲求は持っているのではないか?と思います。彼らはAI、人工知能です。そしてダリルバルデのように、彼らの目的はパイロットのサポートです。パイロットがどう動くかを学習し、その動きを補助するというのは、彼らにとってとても魅力的なことのはずです。なぜなら彼らは、そのために造られ、そしてそうプログラミングされています。

だから「脳に手を突っ込」んでいる。パーメットが全身で反応しているので、生体情報なども共有し、ありとあらゆる情報を共有して、ガンダムはパイロットを学習しようとしている。

これが恐らくエランの言う「呪い」のひとつです。人間はパーメットスコアを上げてガンダムをより精緻に動かしたいと思っていて、ガンダムはパーメットを共有してパイロットをより深く学習しようとする、相互干渉を行っている。その過程で苦痛が生じてしまっているのでしょう。ガンダムはあくまで「機械」であって「人間」ではないので、干渉も機械独自のやり方なのかもしれない。

そうして人間の方もパーメットスコアを上げてレイヤーを深くするというのを誤解しているのではないかと思います。

パーメットスコアを上げる時にイメージされるのは、パーメットとその先の光です。これはガンダムの内面なのではないでしょうか?すなわち「心」です。

このレイヤーとは何か、小説にも載っていません。しかしレイヤーが「階層」であるならば、心もまた「階層」でできています。
表層意識、表層の中でも会社などの比較的プライベートでない人へ向ける意識、家族などのプライベートな人々へ向ける意識、家族にも秘密の記憶、そして膨大な無意識領域。これがレイヤーの正体なのではないでしょうか?

パーメットスコア3を超えると人体に著しい負荷がかかります。と同時にガンビットを精緻に動かせるようになります。ガンビットは遠隔武器です。それを動かすには当然高度なAIが求められ、腕や足を動かすのではなく機能面にもっと深く切り込まなければならない。つまり、パーメットスコア3を過ぎると、ガンダムのAIとの干渉が始まる。

これが恐らくデータストームの正体です。単に18メートルの体を動かす、だけではなく、ガンビットという人間にないものを動かすから負荷がかかる、だけでもない。現にガンビットのないはずのソフィもスコア4以上で著しい身体的負荷を受けています。機械の思考や情報がダイレクトに脳になだれ込んでくる。そして機械からも干渉を受ける。
機械の思考やら情報やら、というのも、他人の思考が脳内になだれ込むなんて経験もしたことがないので、何が起こるのかはわかりませんが、恐らく脳に対してそうとうな負荷がかかっている。データストームに陥った人々は、みんな寝たきりになっていますが、身体的な損傷はありません。そして脳死状態になっているということもなく、眼球が動いている。パーメットも励起したままで、植物状態なのかどうかは大脳が動いているかどうかわからないので何とも言えませんが、膨大な情報を未だに処理し続けているとすると、ゆっくり眼球が動いているのもそのためなのかもしれません。スコアを4に上げたナディムは、息を切らして必死の形相で、かなり辛そうです。

ただ、最後の最後にナディムがハッピーバースデーを歌えたのは、ルブリス試作型、そしてそれに乗るエリクトと繋がっていたからではないかと思います。あの時に最終的に繋がったのは、エリクトのお誕生日会をとても楽しみにしていた感情だったのではないでしょうか?それを表すように、お誕生日会はエルノラとエリクトが「パパ~!」とやって来てから始まります。本編でもありましたが、あとの流れはちょっと違います。もっと前に言ったであろう「お誕生日ってなあに?」「エリイが生まれた日をお祝いするんだよ」「お祝いってなにするの?」「そうだな~」という言葉は、ケーキを前にしています。実際は、ケーキを前にしていた時は、エリクトは「ケーキ!ケーキ!」とはしゃいでいます。

エリクトはパパと死に別れることなど考えもしていなかったはずです。ルブリスで撤退していく中、つまらなそうに口をむぎゅっとして、左にかしいでいて、まだ4歳の子供であることも考えると、「お誕生日会、できなかった…」と残念に思っていたでしょう。ナディムもエリクトのお誕生日会を祝えなかったことが心残りだったでしょう。となると、二人の意識は「お誕生日会」で繋がります。思い出の前後がバラバラになっているのは、思い出を思い出すときに象徴的なあれこれが時系列がバラバラに思い出される、あの感覚と同じものと考えれば、不思議ではありません。「お祝いってなにするの?」「そうだな~」「まずは、お祝いの歌を歌うんだよ」とまず回答したのであれば、ナディムが続きとしてハッピーバースデーを歌ったのは自然で、エリクトも最後まで嬉しそうにしていたのはそのためです。ひどい日だったけど、ちゃんとパパにお誕生日をお祝いしてもらえた。

そして、データストームはAIからの干渉や機械からの情報の流入や感覚の違いによるものであるとすると、カルド博士がルブリス試作型を「希望」と言ったのは、人間と同じような思考ができる高度なAIを備えていたから、という可能性があります。

カルド博士はルブリス試作型を「寝返りも打てない生まれたての赤ん坊」と称します。そして、「外の世界を教えてやってくれ」と。そうして実際に、まるで友達や妹に語り掛けるように外の世界を教えたエリクトに、ルブリスはレイヤー33を開放し、エリクトは少なくともパーメットスコア3以上を初っ端からたたき出してもデータストームに侵されなかった。少なくとも、苦しがっている様子はありません。

そして人間と見紛う高度なAIがデータストームを起こさない必須条件であるとすると、エアリアルもまたそれを満たしています。それは、ゆりかごの星をご参照のほどを。https://g-witch.net/music/novel/

色々とガンダムの仕様を考察しましたが、まとめると、
1.ガンダムはガンダム同士との相互干渉はもちろんのこと、他のモビルスーツや機械類にも干渉を行える。その干渉はパーメットを介している。
2.ガンダムはパイロットとも相互干渉を行っている。
3.ガンダムはパイロットを補助するAIを搭載しているので、パイロットとの相互干渉ではパイロットの思考を学習しようと脳に直接干渉をしている可能性がある。
4.パーメットスコア3以上は人間からガンダムのAIへの干渉が始まり、その情報量とギャップに強いデータストームが発生しだす。
5.人間に近いほどの思考能力を持つAIが搭載されることがデータストームを起こさない必須条件。

ソフィがパーメットスコア4以上で、身体の不調や痛みを訴えていたので、スコア3以上でもAIへの干渉は起きないのでないか、とも考えましたが、脳に負荷がかかればあちこち痛くもなるだろうし、体へのパーメットの影響がなくなるわけではないでしょうし、人によってパーメットの許容量が違うようなので、結論はまだ出せません。

いずれにせよ、データストームが起こるのは「パーメットの流入量だけ」が要因ではない、データストームを起こさないための必須条件は人間と同じ思考ができる高度なAIが必要、というのは間違っていないのではないかと思います。

ガンダムと人間のことを考えると、ジレンマとガンダム側からのいじましい願いと、人間とガンダムの関係性について非常に面白いのですが、それはまぁ置いといて。

ガンダムは人間とも相互干渉を行える。

ではパーメットを体内に有する人間同士も相互干渉を行える、それもガンダムよりも低リスクで。という可能性もまた生じます。

相互干渉によるデータストームが起きない必要条件が人間と同じぐらい思考できるAIならば、そもそも人間同士であればデータストームは起きない。データストームが起きなければ死の危険性はない。人間同士の相互干渉は、心の相互干渉である。

突然オカルティズムな~という感じですが、カルド博士が意味深なことを言っているのです。

それが8話でのGUNDについてのPVです。ここで彼女は、
「スペーシアンの皆さん、こんにちは。私たちはパーメット研究機関、ヴァナディースです。宇宙に生命圏を拡大しておよそ1世紀。私たちは常に、宇宙環境との戦いを強いられてきました。無重力、真空、大気組成、宇宙放射線。ワクチンやインプラントアプリは、高額で、障害そのものを抑制することは難しい。だからこそ、私たちの提唱するGUND医療は、身体の脆弱性を補う希望の技術となりうるのです。GUNDには、生命圏の拡大だけでなく、地球と宇宙、双方の分断と格差を融和する可能性をも秘めています。どうか、私たちの願いに、人類の未来に、共に手を携える光が、あらんことを。」

スピーチの内容を書きだしてみました。要点は、「宇宙環境は過酷なのは皆さん知っての通り」「その治療は高額であり、根本治療でもない」「でもGUNDならできます」「それだけじゃなく、GUNDは地球と宇宙を繋ぐ架け橋にもなりうるのです」「この素晴らしい未来に、皆さんの理解とご助力を願います」

こんな感じですね。GUNDの未来ってすげー!地球と宇宙の分断と格差も融和する可能性があるのか!

…いや、ちょっと待ってください。GUNDはあくまで義肢や臓器の代わりとなる技術、あって宇宙服代わりに使えるというニュアンスなのですが、どうしてそこで地球と宇宙の分断と格差にまで話がいっているのか?

GUNDは単なる医療技術です。ミオリネもそう解釈しています。翻って「分断と格差」、「差別と身分格差」とは、人と人のいがみ合い、利害関係、人間の欲望によって引き起こされるもので、医療技術は関係ありません。

しかし、GUNDの最終目標が「人と人の心に相互干渉する」、「他人と他人の心を繋ぐ技術」であるとするならばどうでしょう?

いがみ合い、他者を下に見る言動。それらは相互不理解から始まります。

スペーシアンからアーシアンへの意識は、「こちら人種の方が優れていて、相手は劣等種族だ」という優生思想によるものでしょう。こうなるとアーシアンは「人間ではなくなる」ので、どんな残虐で残酷な手段も取るようになり、その行いは果てがなくなります。なぜなら、相手は人間ではない。人間とはスペーシアンだけなのですから。

アーシアンからスペーシアンへの意識は、その復讐でしょう。「あいつらが不当な扱いをした。だからあいつらも同じ目にあうべきだ」こちらもその行為に果てはありません。そして同じく、相手は人間ではなくなる。

この問題は根深く、果てがありません。今だって解決できない問題です。

しかし、心が通じ合う技術があるとすればどうでしょう?相手だって「悲しい」「痛い」「楽しい」という自分たちと同じ感情があり、家族を大切にする気持ちだってあるし、命令している人間はともかく、実際に動いている人間の中には「命令だから仕方ない」と思っている人がいるとわかれば。どうでしょう?

もちろん、それだけでラブアンドピースになれれば世話はないというのが、ガンダムの世界ですが、アド・ステラの物語は学生の物語。これから無限の可能性のある未来ある世代の物語です。

些細なきっかけで仲良くなれる、柔軟性のある世代で、「ガンダムなんて知らない」とのたまう世代であるのならば、親世代やその親世代、先祖代々受け継がれる呪いなど「知ったことじゃない」と跳ねのけて、スペーシアンとアーシアンで手を取り合う、そういう未来を紡ぐことのできる可能性は、ゼロではないはずです。

現にミオリネは、地球寮の子供たちと手を取り合っている、スペーシアンとアーシアンで合同で会社を設立しているのですから。

GUNDの最終目標は、他人と他人をパーメットによって繋ぎ、心と心をつなぎ合わせ、相互理解を行うことにより、根深いスペーシアンとアーシアンの意識すら治療しようとした、そういう技術である。

そういう観点で見てみると、その技術を受け継ぎ、完成形に近いエアリアルと、それに乗るスレッタもまた、ガンダムというGUND技術を通して心による相互…ではなく一方的な理解を行っている描写が見えてきます。

ガンダムに乗ると途端に相手の心の芯を言い当て始めるスレッタ


スレッタはお世辞にも他者の心がすぐにわかる、察しのいい人間ではありません。しかし、シャディク、エラン、グエルと、ガンダムで一度戦うと途端に相手の心を理解したようなことを確信を持って言います。

まずシャディクですが、8話のシャトルの中でも、「シャディクさん、ミオリネさんのことが、好き…!」と言いますが、この時はまだマジで言っているわけではないんじゃないかなと思います。

しかし9話で戦う時には「ミオリネさんのこと、好きなんじゃないんですか!?」と、よりシャディクがミオリネを好きなことを確信しています。

しかし、8話で地球寮にやって来た時も、9話の決闘前に会った時も、シャディクはミオリネに対する気持ちを表してはいません。9話では「花嫁の暴走を止めてやれ。今ミオリネを守れるのは花婿のきみだけだ。勝ち目のない決闘なんてさせるなよ。…。なら、俺ももう躊躇はしない。スレッタ・マーキュリー。きみからガンダムと花嫁を、奪い取る。」
「ミオリネさんのこと、好きなんじゃないですか!?」と啖呵を切れるほど確信できる要素はないようにも感じます。何より言葉を正面から受けるスレッタでは、ミオリネとの湿度マシマシなやり取りを知りませんし、敵意ぐらいしか感じられないのではないでしょうか。

しかしエアリアルに乗って、戦って、スレッタは確信を持っています。シャディクはミオリネを好きなんだと。

エランの時も、スレッタはエランに対しては最初からぐいぐい行ってましたが、エランはそれよりも彼女が自分と同じなのではないか、という期待を持ってスレッタに近づきます。傷つけられ、それでも一歩進んでも言葉は届かず、エランの態度は軟化することはありませんでした。

ところがエラン戦の最後、「そんなの、おかしい、です。誕生日を祝ってくれる人、います!私もいます。エランさんに何もないなんてこと、絶対にないです!」この言葉にエランは、「そうだね。おかしいね。」と、ほほ笑みます。この時はじめてスレッタは、エランの心に本当に届く言葉を送れたのでしょう。

これもエアリアルに乗った後です。

そしてグエル。

これはスレッタにとってはすべて何気ない言葉ですが、どれもこれもグエルのハートを撃ち抜いている。グエルに必要で、不可欠で、最適なタイミングで言葉を送っている。

まさにたった今、父親とラウダから否定された強さを肯定される。

認めてもらえなくても、信じてもらえなくても、それでも父親が好きなことを察してもらえた。

これらはダリルバルデ戦の後、やはりエアリアルで戦った後です。

その前の、「進めば二つ」もグエルの心に届きましたが、あれは聞かれたから答えたもので、スレッタから自発的に言ったわけではありません。

こうして見ると、やはりすべてエアリアルと戦ってから、スレッタは相手の心や相手が欲しい言葉が理解できるようになっている、と見ることができるタイミングなのです。そしてただ戦ったのではなく、彼らは長い時間戦っています。ディランザとも戦っていますが、あのあとは上記のようにそこまでスレッタの理解は深くありません。そうなると、彼らの共通点は時間です。ディランザはスレッタに代わってからはほぼ瞬殺で、他の戦いはすべて長時間にわたっている。

シャディクはチュチュの制圧に行っていましたが、長い時間戦場には立っています。干渉はパーメットの量によって決まるのならば、長い時間同じ空間にいれば、それだけ感じられるパーメットは増える。

このように、スレッタはどうもガンダムを通して他者のパーメットと情報を共有し、彼らの心の奥底にある願いや思いに気づき、それを指摘しているような描写なのです。

ここで例外として、ミオリネが1話でエアリアルに乗り込んでいるのにスレッタからの理解は進んでいない、という点もありますが、この時エアリアルはミオリネに対してGUNDフォーマットによって繋がっていません(多分)。そのため、パーメットの流入もずっと少なかったはずで、それでは理解が深くならない。

そうなるとやはり、スレッタはガンダム=GUNDを通して他者の心を理解しているという仮説が立つのです。

実際、地球寮の子たちとも、相互理解をしているようでしていません。あれだけ関係を深めていそうだったのに、「使えねー」の一言だけで自分のことを言っているのではと思うぐらい、彼らと築いたはずの信頼が瓦解しています。

スレッタが育った水星の環境が「人の役に立たなければ評価されない」という環境だったのもありますが、それにしてもあの時つまずいたのはミオリネとの間です。それなのに地球寮全員に適用してしまうというのは、あまりにも範囲が広い。それだけミオリネとのことがショックだったのでしょうが、それにしたって背中を押してくれたニカに泣きついたっていいのではないでしょうか?恐らくエアリアルにだったらしたんでしょうし、家族と他人を比べてはいけないでしょうが、それにしたって両極端がすぎますし、エランとのことはアリアたちに相談しています。

これは恐らく、ミオリネと地球寮の子たちを同一視している、仲間だと思っているからなのだと思います。
ミオリネは会社の社長で、その会社は地球寮にあり、地球寮の子たちは社員です。当初は険悪でしたが、一緒に進むべき道も決めて、運命共同体のような関係にあります。なので恐らく、スレッタの中では彼らはひとかたまりの仲間で、ミオリネに「いらない」と言われたらイコールで地球寮の子たちからも「いらない」と思われている。そういう理解をしているのです。

これは水星の環境どうのこうのではなく、やはりスレッタはガンダムに乗らない生身の状態では、人間関係や彼らの気持ちについて推し量ることがイマイチなのだと思います。水星でも自分に優しい人、自分に厳しい人がいます。多分スレッタは恐らくそこも「水星」という環境でごっちゃに考えています。そして好意的なのはもしかしたら、水星を統治する人間が優しいから「みんな自分に優しい」と考えている、のかもしれません。そう考えると、彼女に厳しいエルゴの言葉にも特に気分を害さないのは、「みんな優しい」からで、エルゴという個人のことを見ていない、のかもしれません。

ラウダは生身でもパーメットの情報共有を行え、スレッタはガンダムに乗らなければ情報共有は行えない。こう考えると、ラウダはナチュラルボーンに他者理解をできる人間なのか、と考えられますが、彼の生育環境を考えると、もしかしたらこういう可能性があるんじゃないか?というものが浮上します。

子宮のGUND、精巣のGUND


いきなりのセンシティブワード!?いや、待ってください、ブラウザバックなさらないで!

あのアド・ステラの世界ですが、「兄弟」とされるのはわずかにグエルとラウダだけです。しかも彼らは異母兄弟なので、同じ母から生まれてはいません。

もし、本当にあの世界では同じ母親から兄弟が生まれない、妊娠率が著しく低いのであれば、すさまじい少子化の世界です。

現に、今現在ですら晩婚化だったり、精子の運動が低かったりで受精率が低く、そもそも人間自体が受精しづらい身体構造をしているようですが、アド・ステラ世界ではさらに「宇宙」という環境問題もあります。

強い放射線は男女ともに生殖機能を破壊し、BBCの記事によると、「男性については、宇宙へ行っている間に精子の数や質が下がることが分かっています」とあり、「地球に戻れば元に戻る」とあります。しかしスペーシアンと、宇宙に上がったアーシアンは下手したら一生宇宙で暮らします。女性については、恐らく生殖器が体内にあるので、肉体が盾となってそうそうダメージを受けることがないので「女性の生殖能力にどう影響するのかは、まだ分かっていません。」とされていますが、一生涯滞在した場合についてはまさに未知数です。(BBC NEWS JAPAN https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-50179338 より引用)

そして宇宙空間での妊娠出産リスクについてはもっと未知数です。プラントは重力を作り出していますが、それが地球と同じ環境であるのかはわかりません。もしハイリスクなのだとしたら、生命倫理上、女性はそう簡単に子供を産むことができませんし、「宇宙で人体に起きる変化は、加齢を加速させるようなものです。」ならば、加齢していくごとにリスクが跳ねあがっていって、30代前半での妊娠が現在の高齢出産に相当するということになれば、やはり二人以上を望むのはリスクが高すぎます。(BBC NEWS JAPAN https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-50179338 より引用)

もしこうなのだとすれば、同性婚が認められているのに単純に「子どもが少ないから」という理由が加わります。人工子宮だとかができていれば、もっとバンバン兄弟姉妹があふれているはずですし、彼らは裕福なのですから、跡継ぎは多ければ多いほど好ましいでしょう。

しかしそうなっていない。それはつまり、未だに生身で出産しなければ子供は生まれないのです。(実際人工子宮で調べてみても具体的なニュースはヒットしませんし、化学番組を見てみると母親と胎児は多くのものを引き継いでいるのが最近になってわかってきたりしているので、まだまだ先の分野な気がします)

アド・ステラ世界は、北欧神話の名称が随所で使われていたり、ミオリネの母の葬式がキリスト教系の教会っぽいところで行われていたり、現行の宗教がまだ息づいている、現実世界と地続きな部分も見えるので、現実的な延長線上を考えていくと、恐らく突拍子もない技術は生まれていない。これだけ発展しているのは、パーメットを発見したから、なのでしょう。

妊娠出産がハイリスクで、そもそも受精の確立が著しく低い。

身体的な問題に直面し、それが身体機能を補うことで解決できるのならば、GUNDが解決できるのではないでしょうか?

子宮や精巣をGUNDで置換する、というのは身体拡張である以上できないと思うというか、健康な子宮や精巣を摘出してしまうというのは思いきり過ぎているので(腕の力を補いたいので腕を切り落として義肢に付け替えるみたいな…)、チップのような装置を取り付けるのならば、できるのではないでしょうか?医療の知識もないのでうかつなことを言いたくないんですが、ホルモン分泌を促したり、妊娠の諸症状を辛くないように身体機能を整えたり、そういう機能を拡張できるとしたらどうでしょう?

そしてそれができるなら飛びつきそうな人物がいます。

エルノラです。

エルノラはいつのタイミングかわかりませんが、恐らくスレッタが生まれる前にエリクトを何らかの形で失っています。その後、年齢が合わないのにエリクトにうり二つの、恐らく彼女のクローンであるスレッタを産んでいるので、その別れは壮絶なものだったのではないでしょうか?

そして今までの情報を繋ぎ合わせれば、エリクトが死んだのはガンダムのせいです。

エリクトはナディムの死を理解できないままですし、スコア3以上を記録してもデータストームを起こしていないので、あの後すぐ死ぬことはなかったとすれば、一向にナディムが現れないことに疑問を持ったのではないでしょうか。エルノラもナディムを失ったばかりですし、彼女たちは仲のいい夫婦だったので、まだエルノラもその死を受け入れられていたとは言えないでしょう。だとしたら、エリクトにナディムの死を上手く伝えられなかったかもしれません。

予算や人員的にエアリアルにはルブリスの骨格とか流用してんじゃないか?疑惑があるので、解体も捨てるのもできなかったとすると、エリクトがナディムと最後に交信したルブリスに再び乗り込んで、ナディムともう一度話そうとした可能性はゼロではありません。その結果、スコアを上げ過ぎて、さすがのエリクトも流入するパーメットに耐え切れず死んでしまった。データストームを起こさなくても、エリクトはまだ4歳という体の小さな子供です。流入するパーメットの方に耐え切れずに死んでしまう可能性は高い。

そうであった場合、エルノラが再びエリクトを産み落とす上で必要となる条件が二つあります。

1つは高い操縦技術、もう1つはパーメットへの高い耐性です。

ガンダムに乗らせたりなんかしたくないでしょうが、もし乗ってしまっても大丈夫なように、パーメットに耐えられず死んでしまったのなら高い耐性を備えていればいい。そしてパイロットとしての操縦技術は、過酷な世界で生き残るのに必要不可欠なものです。モビルスーツを破壊されなければ、パイロットは死なない。

操縦技術というものは、いろいろな素養が必要だと思いますが、それでもまず目の良さだとか、反射神経だとか、遺伝によってカバーできるものはありそうです。

パーメットへの高い耐性も、強化人士がどうやってできてるのかわかりませんが、多分これも遺伝でクリアできそうです。

エルノラは「お前じゃなきゃ誰にもできない」と、ルブリスのレイヤーを開く期待を受けています。ルブリスは赤ん坊なので、4歳という幼い子供の母親であるという意味でも適任だったのでしょうが、パーメットの流入量を調べているので、レイヤーをクリアしていくとパーメットもまた増える危険性があるかもしれないのであれば、エルノラもまたパーメットの許容量が多い人間でしょう。

そしてその娘であるエリクトもまた、スコア3以上でもピンピンしているので、パーメットの許容量が多いはずです。

モビルスーツの操縦技術、パーメットの許容量の多さ、それらは遺伝子によって操作がある程度可能である。これらの仮説を立てたならば、次はその仮説を実証する番です。

パーメットの許容量の多さについては、自分とエリクトというデータがあります。次はモビルスーツの操縦技術です。

グエルとラウダは、二人とも優秀な能力を持つパイロットです。そしてその父親であるヴィムもまた、優秀なパイロットです。彼らの遺伝子を比較すれば、どの部分がパイロットしての優劣を決めるのかがわかるはずです。

…なーんで急にグエルとラウダが出てきたんじゃい。

この二人は同い年の異母兄弟です。つまり、母親は二人います。普通に考えて、彼らがあれだけ仲が良く、確執もほとんどないという生育環境ではありません。父親であるヴィムも、グエルのことは長男として、家を継ぐものとして厳しく当たってはいますが、自分が今まさに死にそうでも彼の無事を喜ぶほどに本当は愛しています。ラウダのことも、恐らく長男を支える次男として仕事を手伝わせているのだと思いますが、彼に負担をかけているのはわかっているのか、グエルよりも接し方は優しいため、彼のことも愛しているはずです。

そのため、恐らく二人は幼いころ、生まれた時から一緒の環境で育ち、ヴィムもまた二人の母親を等しく愛していたという仮説が成り立ちます。

そしてこの兄弟は容姿に似通った箇所が結構あります。同じ褐色肌でもシャディクよりも薄い色をしているのもそうですし、作中でもかなりの高身長で、下まつ毛までしっかりと描写されるほどまつ毛が長く豊かです。

高身長、淡い褐色の肌、まつ毛が長い。これらがヴィムの性癖であるという可能性もありますが、もう一つの可能性があります。

それは二人の母親が姉妹であるという可能性です。それも、双子の姉妹です。

姉妹であれば、これらの特徴が一致していても不思議ではありませんし、性癖どストライクの正妻をもらったのにどうしてもう一人の女性を…という不可解な点も解決します。

そして双子であれば、同い年なのに明確に「グエルが兄で、ラウダは弟」と彼ら自身が自然と思っていることにも説明がつきます。母親が同い年の姉妹で、姉と妹という意識をしていたのなら、彼女たちをロールモデルとすれば、自然と兄弟という意識が強くなります。
さらに、双子や姉妹であれば、一人の男を子供を産むほどに二人して愛するというのもまぁわからない話でもなくなりますし、ヴィムが誰か一人を選べずに両方愛したのもまたストーリーが生まれます。

ヴィムはPROLOGUE時点で、「ジェターク社CEOの息子にして部下。同社の次期CEO候補。」とあり、CEOの息子でありながら叩き上げです。「ライバルの頭を直接ぶっ叩いてのし上がってきた男だ」と本編でも言っているので、CEOの息子という本来将来が約束されている立場であるはずなのに、並み居るライバルを蹴散らさなければCEOとなれなかった男です。

この時代のヴィムを支えたのがグエルとラウダの母親なのではないでしょうか?ヴィムは調子乗りなところがありますし、殺してでも奪えばいいと思考が極端にはしりますし、ダリルバルデのAIを改ざんするなどメカニックを軽んじているような態度も目立ちます。そういうタイプが成功するには、ジェターク社は大きすぎます。それこそ立ち上げからいたというのならまだわかりますが、すでにカテドラルに席を並べる重要企業に成長していますし、ジェターク社は御三家として時には業績1位を獲得しているので、優秀で有能な人材が離れることなくいついているはずなので、ヴィムのキャラクターでは二代目という立場では嫌われかねません。

その部分を補ってくれたのが、恐らくグエルとラウダの母親です。

その部分を補ってくれたのが、恐らくグエルとラウダの母親です。

ヴィムのような典型的なワンマン社長タイプが妻に選ぶのは、貞淑で反抗しない従順な女性か、逆にバシバシ意見を言って時には夫を尻に敷くような下町のお母さんタイプなのではないかと思います。
そしてヴィムの好みは後者である可能性が高いです。

理由はラウダがこっちのタイプだからです。ラウダは一見従順ではありますが、ヴィムに臆することなく自分の言い分を伝え、ヴィムの言葉を無視する描写も随所にあります。

それでもヴィムはラウダを信頼し、自分の狙いが的中したらはしゃいでラウダを見て、プロスペラとの交渉では魔女と相対させるのが心配だったのか、二人に対して護衛を6人も付けます。このように、ヴィムはラウダを大切にしているので、逆説的にそういう人間をパートナーに選びがちということも言えるのではないでしょうか。

それに、ラウダは二人と違って「授業中だよ」「手伝うよ」「行くよ」と、柔らかい言葉を使い、仕草もどこか女性的なので、多分ラウダはお母さんっ子です。感情が高ぶると「この決闘は無効だ!」「仕方ないだろ」と、二人のように荒い口調になるので、父親の影響もきちんとありますが、より影響が強いのは母親です。とすると、普段父親や兄をたしなめているのもお母さんの影響である可能性もあり、特に父親に対しては母親の付き合い方を参考にしたでしょう。

というように、二人の母親は双子の姉妹で、ヴィムを支えてくれたかけがえのない大切な女性たちで、三人とも互いを深く愛しているとすると、「正妻はどちらがなるか」問題が出てきます。

上記のような関係性ならば、どちらがなるかについては、ヴィムも母親側もどっちでもいいと思っていたと思いますが、どちらがジェターク社の正妻としてふさわしいと世間から見られるか、またそれに適性があるかを話し合って、穏当に決まったと思います。

では次は何としても正妻側が先に子供を宿さなければなりません。順番がちぐはぐになってしまえば、生まれてくる子供にとってもどっちが後継者なんだという疑念が生まれますし、「俺が兄です」「あ、じゃああなたがジェタークの」「いえ、ジェタークは弟です」ということになれば、世間体も悪いし説明がめんどくさい。

かといって自然に受胎するのを待っていては、いつになるかわからないし、もう一人を待たせてしまうことにもなる。そうなると今度は人工授精になりますが、信頼できるものは誰かという問題も発生します。ジェターク家の新たなる命を宿すだけでなく、若い身空で人工授精に頼るという選択を行い、できればストレスを溜めないためにも自分たちの関係を理解して、外部へ漏らさないと担保できるだけの信用ができる人物。

ここで浮上するのが、ミオリネの母でデリングの妻であるノートレットです。彼女は遺伝子工学の専門家…かどうかはわかりませんが、トマトの新しい品種を作るほど遺伝について深い知識があり、恐らく遺伝子組み換えなども使っているとすると、素人の生兵法よりも知識と技術と設備がある。そしてヴィムと長い付き合いであるデリングの妻で、一方が死んだら我が子を残った方が育てようと決める、肝の据わりようと聡明さのある女性です。もし家族ぐるみで付き合いがあれば、医療的なことは彼女に相談したのではないでしょうか?彼女はトマトを作っていましたが、ミオリネが個人的に栽培していて、どうも発表していなさそうですし、「植物が専門」とは言われていないので、トマトは趣味だった可能性もあります。そうでなくとも遺伝子研究ですので、医者とも繋がりがあったでしょうし、それこそ人工授精の専門家が友人にいたとしてもおかしくありません。

ここでようやくプロスペラ=エルノラと繋がります。

この時には逃亡生活でしょうから、もうプロスペラと名乗っていたとして、ノートレットはミオリネの感じを見るに地球に対して好意的な人です。そしてプロスペラはあの後どこに身を寄せたかと言うと、恐らく地球です。

ヴァナディース機関であるプロスペラもベルメリアも生き残っているので、それよりは捜索が苛烈ではなかったであろうオックス・アースはもっと生き残っていたでしょう。未だに「あなたはヴァナディースの人間ですか?」とは追及されど、オックス・アースについては追及されていないので、ヴァナディースよりもオックス・アースの方が監視の目がゆるい。

そして、オックス・アースは元々地球の企業で、宇宙の支配者であろうベネリットグループの監視の目も比較的届かない位置にあり、何よりどうも残党が生き残っていて不穏な動きをしているんじゃないか?という描写があります。

それがルブリス・ウルとルブリス・ソーン。そしてソフィとノレアの存在です。
彼女たちは「「フォルドの夜明け」に派遣された」とあり、ガンダムは「「フォルドの夜明け」に提供された」とあるので、どちらも元々はフォルドの夜明けではなくどこか別の組織が用意していた手駒です。
(©創通・サンライズ・MBS 機動戦士ガンダム水星の魔女公式ホームページ https://g-witch.net/character/38/ より引用)
(©創通・サンライズ・MBS 機動戦士ガンダム水星の魔女公式ホームページ https://g-witch.net/character/39/ より引用)
(©創通・サンライズ・MBS 機動戦士ガンダム水星の魔女公式ホームページ https://g-witch.net/mobile-suit/17/ より引用)
(©創通・サンライズ・MBS 機動戦士ガンダム水星の魔女公式ホームページ https://g-witch.net/mobile-suit/18/ より引用)

そしてガンダムを製造していたのはオックス・アースだけであり、改修ができるぐらいの知識があり、ドミニコスよりも先にまだ売り出していなかったルブリス量産型を回収できるのは、オックス・アースだけです。(ナディムが「上が焦ってルブリスをロールアウトしなけりゃ」と言っていて、そのために健全性実証テストの納期が短くなっているようなので、まだ明確に「売れた」訳ではないはずです。購入予算も決議案の段階ですし。っていうか、多分まだまだ実験段階ですよね…どれも試作機ですし。…その割には現地にもう運んでいるのは早すぎますが…)

この組織の前身はオックス・アースなのではないでしょうか?もしくは、オックス・アースを吸収した政府とか。そしてソフィたちが仮にガンダムに対応した強化人士だとしたら、それを生み出したのは誰なのか。

ベルメリアは「ほかに選択肢、ありませんでしたから」と言っていました。4歳の幼い子供と目立つガンダムを抱えたプロスペラには、もっと選択肢はないはずです。そこで宇宙よりも衆人環視の危険性が少ない地球に降り立ち、オックス・アースの伝手を頼るのはもっとも生存確率の高い選択です。

やがてエリクトを失ったとしたら、彼女をもう一度蘇らせるために、彼らの施設と資金を使おうと、強化人士を作ろうと提案するか、強化人士を作ろうとしている彼らに手を貸すようになったとしても、不思議ではありません。

んで、より優れた強化人士を作るためには多くのサンプルが必要です。地球の孤児もアリですが、もっと身元が確かで、優れた能力が担保されているとわかっている優秀な遺伝子サンプルが。そのために、遺伝子工学の集まりに顔を出して施設の宣伝をしたり、GUNDの身体拡張を利用した安全性のある妊娠出産技術を口コミで広めたり、そういったロビー活動をしたのではないでしょうか。

その過程でノートレットとプロスペラが繋がった。あるいは、彼女の出自が謎ですが、それからのデリングを見ると彼女はカルド博士の娘か、ヴァナディースの関係者なのではないかとも見えてくるので(これについては長くなるのでいずれまた)、カルドの一番弟子であるエルノラがプロスペラと名を変えて地球で活動しているのを知り、コンタクトを取ったかもしれません。

まずは地球の子供たちで実験をしたとして、ここでもGUNDの技術は役に立ちます。兵士を量産したい、つまりたくさん子供を産ませたいと考えた時、ネックになるのはやはり受精率の低さと妊娠出産の過酷さです。それがクリアできれば、産んだらすぐに次を妊娠、次を妊娠と短いスパンで子供を産むことができる。倫理としては最っ低ですが。

しかし仮に安定した出産ができるのならば、スペーシアンの富裕層に対する宣伝にもなります。

その第一号となったのが、安全にジェターク家の第一子を授かって産み落とし、自分が何としても先に赤ちゃんを産まなければならないグエルの母親だとしたら。

グエルの母親がどういう人だったのか、それは現時点でも影も形もないのでわかりませんが、仮にグエルを参考にすれば、彼女もまた高いパイロット技術を有していた可能性はゼロではありません。そしてそうすれば、ヴィムとグエルの母という高いパイロット技術を持つ遺伝子の参考データを手に入れられ、彼らの遺伝子を比較してどれがパイロット技術に影響するのかを分析し、生まれてくる子供の遺伝子をさらに比較してどの程度子供に遺伝するものなのかも調べることができる、まさに降ってわいた幸運です。

そしてここで関係すると、ヴィムがプロスペラに対して「3年前の社長就任以来だったか」とちょっと親しげなのも、「総裁へとりなしてくれという話なら受け入れんぞ」と一回は口利きした感じなのも、グエルの産婆とでも言える立ち位置だったからだとすると、違和感は消えるのです。

そして恐らくラウダの産婆でもあると思います。母親が仲のいい姉妹なら、一方が覚悟を決めてGUND手術を受けるならもう一人も合わせて手術を受けたでしょう。それに妊娠は女性だけではないので、ヴィムも手術を受けているかもしれません。宇宙では男性の方が生殖機能への影響は大きいですし。

ただ、ラウダは恐らく人工授精ではなく、自然受精だったのではないかなと思います。もしこれが正しければ、無事に受精して定着したことに安心したヴィムとラウダの母親の気が緩み、うっかり妊娠したとしてもあるあるです。生殖機能が元に戻っていて、GUNDによって補助を受けていたらさらに妊娠しやすくなっていたでしょうし、それが二人の特性の違いに繋がっていたのかもしれません。

いずれにせよグエルの妊娠が無事に済んだら、ヴィムは大はしゃぎしたのではないでしょうか?まだ誕生日がわからないので、仮にグエルが3年組の中で一番年上だとしたらですが、グエルの妊娠がわかったタイミングではまだ誰も子供がいません。総裁であるデリング、御三家であるゼネリ、ペイルに先んじて我が子がいるという事実は、ヴィムが得意になって自慢して回ったとしても不思議ではありません。

そして実際、誰かが起爆剤になったように、御三家はみんな同学年の子供なのです。初めての我が子に浮かれる友達を見て、「子どもが欲しいな~」と思うことはままあるので、ヴィムがきっかけになって御三家全員が子どもを欲しくなってプロスペラを紹介してもらったという流れでも違和感がありません。

サリウスとシャディクは養子なんですが、若いころの画像とシャディクを見比べると、なんかこの二人…本当に血のつながりがないのか疑問なんですよね。同じように濃いめの茶褐色の肌をしていて、上のまつ毛もあまりバシバシになっていなくて、サリウスは驚くとすごく丸っこくなりますし、年を取るとまぶたは重くなってきますし、二人とも結構強い垂れ目です。

仮にシャディクは本当はサリウスと血が繋がっているとして話を進めると、グラスレー社は孤児院を経営しているので若くて健康な母体を複数用意できる。…実際サリウスはそこまで冷血漢ではないと思いますが、当時のサリウスは、「老練で強か」と称されているので、デリングから屈辱を受けたばかりではまだ冷静な判断ができなかったかもしれません。

そこでデリングへの復讐として、ベネリットグループ総裁の座を我が子に奪わせようと考えた。そうして生まれた中で一番優秀な子供を引き取り、あとは孤児とした。そしてこの考察通りとすると失敗作であるシャディクを結局引き取っているので、最初の子供は死んでしまったのでしょう。

もう妄想でしかないんですが、どんどんいきますと、最後のエランについては、あの四人のうちの誰かが産んだようにも見えないので、あの世界では珍しい五人目の妹がいたか、瞳の色が同じなのでニューゲンとカルが姉妹、ネボラとゴルネリが姉妹で、エランの母親は仲良し四人組にとって妹のようにかわいがっていた血のつながらないもう一人の妹とかですかね。そしてGUNDによる医療に憧れていたベルメリアが苦肉の策とは言え就職先に選び、強化人士という肉体改造をしているところを見ると、ペイルは元々医療系の会社で、それこそ義肢メーカーとかだったんじゃないかな~と考えています。となると、ノートレットではなくペイルは独自ルートでプロスペラのことを知ってコンタクトを取ってきたかもしれません。ガンダム特化の強化人士なんて一体どこでそんな技術知ったの?という技術を知ってますし、ガンダムへ異常な執着を見せていますし。

それで本物のエランについて、大根演技はあるんですが、パーメットの情報共有で他人の心がわかる描写とか、操縦技術もあるように見えないので、何らかのアクシデントがあってどちらにも優れた能力のない子供が産まれてしまったのではないでしょうか。そしてそのアクシデントのせいでエランには両親がおらず、ペイルの四人は強化人士という影武者を使ってエランに優秀なガンダムパイロットという肩書をつけてあげたいのだと考えると、ガンダムを開発したのも、強化人士などという非合法な存在を作り出したのも、それをエランの顔にわざわざ整形しているのも、すべては「何の価値もなくなってしまった」エランに、「そんなことはない」と彼に偽物であろうと特別を証明する贈り物を贈るためだとしたら、すべてに理由が付きます。

…エラン4号を始末したから血も涙もない、この作品のヴィラン枠なのかなとも思いましたが、よく思い返せばエランはもうパーメットスコア4を出して、データストームに飲まれる寸前のボロボロの状態です。あのままベルメリアの言う通りファラクトに乗り続けていたら、もしかしたら次の瞬間にはデータストームによってPROLOGUEの彼らのようになっていたかもしれなかった。その前のエランたちがどうしていなくなったのかはわかりませんが、彼らはデータストームによって寝たきりになっていて、それを見ていたのだとしたら、せめてその前の人間としての自意識があって体が動くうちに死なせてやりたいという思いもあったのかもしれません。どちらがエランにとって、いや、名前もわからないあの青年にとって救いがあったのかはわかりませんが…。

はい、妄想をつらつら書きましたが、まとめますと。まず、エリクトを失ったプロスペラが、GUNDによって宇宙進出によって衰えた男女の生殖機能を補い、妊娠出産を助ける装置を作った。その噂を聞いた遺伝子工学に明るいノートレットが、ヴィムの子供を先に産みたいと望んでいたグエルの母親に話をして、彼女は装置を取り付けて人工授精によって確実にグエルを身ごもった。その妹であるラウダの母親も装置を付けており、計画通りに進んだ安心感からうっかり彼女も身ごもり、同い年の異母兄弟であるラウダもそう遠からず身ごもった。初めての我が子の誕生に浮かれたヴィムの熱が伝搬し、シャディクとエランの両親も装置を取り付け、シャディクとエランもまた生まれる。

順番としてはこんな感じでしょうか。
(グエル→ラウダ→シャディク→エラン)

そのため御三家は全員3学年生となった。まぁ妄想ですが、一応筋は通るのではないでしょうか。

そしてまだまだ妄想は続くというか、描写されていないものを考えているのですべてが妄想でしかありませんが、パイロットの技術はある程度遺伝子操作も可能で、遺伝も比較的容易にするとして、パーメットの許容量については人工授精ではなく自然受精の方がより多くなるのではないかと想定しています。

理由は恐らく自然受精で生まれたであろうラウダがパーメットの許容量が多く、人工授精でもしかしたら遺伝子操作も実験的に行われたシャディクが、決闘終了後のパフォーマンスで踊るスレッタに、ようやく憑き物が落ちたような顔をしていて、何となく心が通じ合ったような描写をしており、他には不自然な描写はないのでラウダよりも感度は低いですが、彼もグエル達に比べればパーメットの情報共有能力がありそうな気がするので。ちなみにグエルは多分ほとんどないです。関係性の深いラウダのこともよくわかっていませんし、リアクションがワンテンポ遅い描写が結構あるので、彼はむしろ鈍いタイプだと思います。

ラウダは自然受精、シャディクは人工授精であるとすると、ラウダを受けて作られてもラウダとは比べ物にならないほど低いので、人工授精ではパーメットの許容量は少ないと仮定できます。

そして完成形たるスレッタですが、正直人工授精、自然受精、今の時点では半々かなという気がします。

エリクトの遺伝子を培養するのに成功しているとして、確実に妊娠するためには人工授精がやはり強く。相手の男性の精巣の機能をいじって、エリクトの遺伝情報のある精子のみを生成させるようにするというのができるのであれば、まぁ可能ではあります。卵子も、胎児は精子と卵子の遺伝情報を半分ずつ渡して胎児を作るので、いじることができるのならば、上手い感じに半分になった遺伝子どっちでも合わさればエリクトになるという加工ができるのであれば、自然受精も可能であるはずです。できるかできないかがわかんないんですが…

仮にできるとして、プロスペラと性交した疑似的なスレッタの父親は多分ゴドイなんじゃないかなと思います。この人常にプロスペラと行動を共にしていますし、腹心の部下であり、彼女がエルノラでヴァナディース事変の生き残りであることまで知っているので、かなり親しい間柄です。プロスペラは彼を利用する立場なので重用するのはわかりますが、ゴドイ側からのペイは何かって考えると、まぁ…

こうして生み出されたとすると、スレッタと御三家の繋がりが、GUNDとプロスペラによってもまた繋がり、彼ら全員が主要な人物である群像劇となります。

そして、GUNDを搭載した母体と、その子宮から生まれる子供というのは、GUND-ARMとパイロットの関係に非常に似ているという点が出てくるのです。

まとめ


中編ではガンダムはガンダムだけでなく、パイロットとも相互干渉を行っている。スレッタはガンダムを通して戦っている相手のパーメット情報を共有し、彼らの心を読んでいるような適切な対応を取れるようになっている。そしてアド・ステラ世界が少子化が著しい世界であり、それは宇宙環境による生殖機能への影響だとすると、それをGUNDで補うことが可能なのではないか?
可能だとすれば、それはプロスペラからノートレット、御三家へもたらされ、御三家の子供たちは全員同学年となった。得られた莫大なデータによって、プロスペラはスレッタという最高のガンダムパイロットを生み出した。

このように考察しました。まぁ、これは妄想マシマシで考察と呼べる代物かわかりませんが…しかし、そうなると、プロスペラが若々しいのは女性ホルモンが大量に分泌されているから、という理由も生まれてくるんですよね。

さて、後編では。母体にGUNDを取り付けられるとしたら、その関係性はガンダムとパイロットに似ている、クワイエット・ゼロとは何か、GUND・GUND-ARM・パーメットによって狂わせられる主要キャラたちについて考察していきます。

※なお、この考察はあくまで私の考えであり、確定情報ではありませんので、この先設定が明らかにされて否定されても、私自身に責任は発生しないものとします。
当ページに載せているスクリーンショットは考察による説明の補足として引用しているものであり、三次利用はいかなる理由があろうとも禁止とします。