チェンソーマン72話10Pのかっこいい演出
週刊少年ジャンプ2020年27号に掲載されている
「チェンソーマン」72話に抜群にかっこいい演出があったので
書いていきたいと思います。
72話はこれまでのスリリングなバトル展開から一転
アキ(黒髪青年)の墓参りに主人公デンジとパワーちゃんがついていき
馬鹿騒ぎする楽しい回です。
(一応アキの重要なドラマ部分もあります)
バトル回の時も毎回映画的演出で驚かせてくれるのですが
今回も9P〜10Pにかけて「おっ」と思わせてくれる演出がありました。
↓9P
旅館でアキとデンジが雪景色を見ながら浸っているシーンで
旅行パートが終わります。
そしてページをめくり10Pへ↓
この10Pの1コマ目で読者は違和感を感じると思います。
前のコマ(9P最後のコマ)では旅館にいたのに
次のコマで、どうやらアキは違う場所にいるようで誰かに声をかけられています。
3コマ目でその声の主が分かり
5コマ目でコーヒーショップにいることがやっと分かります。
映画ではよくありそうな演出だと思います。
ただこれを漫画でやると読者が少しの間、置いてけぼりになります。
では何故少しわかりづらい演出を描いたかというと
「読者の読解力を信頼して、キャラの感情を優先したからです。」
個人的解釈としては
この後、アキはある決断をするのですが
その説得力を上げるために
前日の旅行の感情をひきづっているような
演出にしたかったと思います。
(なので「アキ」と声をかけられて、わざわざ1コマ使って
気づかせています。)
作家は読者にわかるように描きがちです。
例えばこの10P目を、よくある漫画の構成に直すと以下のようになると思います↓
一般的に漫画は「どこで」「誰が」「何を」しているかの順で描きます。
そうしないと読者が混乱するからです。
↑の修正10Pのように、1コマ目でコーヒーショップを描き
2〜4コマ目で誰が何をしているのかと言う順に描くと読者は
「ああ、違う日になって違う場所にいるんだな」と理解します。
しかしこれだと「アキ」と声をかけられるまでにワンテンポ、
時間経過が生まれてしまっているので
読者はアキの感情が一旦リセットされたような感覚になります。
これを少しでも緩和すると以下のようになります↓
1コマ目に「アキ」というセリフを持ってきました。
これでも十分だとは思いますが、やはり背景シーンがある事で
少しアキの感情が途切れた感じになります。
これよりもっと効果的なのが本来の10Pの1、2コマ目です
「どこで」「誰が」「何を」が基本だと書きましたが、これは
「何を」「誰が」「どこで」の順で描かれています。
こうすることで、よりアキの感情と読者の感情が途切れない工夫がされています。
後半のアキの感情の変化をよりいい形にするために
計算して作られているかっこいい演出でした。
(ただかっこいいから描いたのかもしれませんが笑)
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