見出し画像

【お仕事回顧】宗教国家を舞台にした双子の物語

【お仕事回顧】この記事はなにか?
・ポートフォリオ的に見せるものです
・自分がスランプに陥ったときに振り返るお話の作り方の備忘録
です

公開許可を取っていないものもあるのでタイトルはボカしてあります
お話の作り方などを記載してあるのでネタバレがあります
(タイトル非公開なのでネタバレも何もないですが)


概要

王道ファンタジーの世界観で翼をモチーフに双子の絆を描いた物語。アニバーサリーのナンバリング2作目


期間

2016年12月~2017年1月

依頼元、依頼経緯

ゲーム制作会社、リピート依頼

関係者

企画窓口担当の方、打ち合わせ無し

仕事内容

ストーリーシナリオ、キャラクター設定、ストーリープロット制作、ストーリーシナリオ制作、その他テキスト各種制作

資料

特になし

納品物

企画大枠、キャラ設定、ストーリープロット、シナリオ、キャラボイス台本

ボリューム

60分尺のアニメくらいのボリュームをイメージ

時系列

各ストーリー依頼→作業→納品

概要

 ひとことプロットは
「邪教の国にて双子の姉を犠牲にしてしまった主人公が、姉を取り戻そうと奮闘し、見事取り戻す物語」でした。

 ストーリーの型は「贖罪もの」です。 主人公が罪を犯すまでの経緯を描き、その罪を償うまでの出来事とカタルシスを描くストーリー型です。

 キャッチワードは「双翼」「双子」「天涯の地」「邪教」「宗教国家」などを設定しました。キャッチワードは、その言葉を思い描いただけでストーリーやビジュアルが連想されるキーワードとしていつも設定していますが、今回の「双翼」はストーリーやビジュアルが思い描けて、非常にマッチしたキャッチワードになって、個人的にもお気に入りです。
(翼とか羽根がイメージやモチーフとして好きというのもあります)

 描きたかった感情は「姉妹愛」「母娘愛」「幼児性との別離」「償い」などでした。

 登場人物は主人公の双子を中心として、双子の母親、双子に複雑な想いを寄せながらも警護の任務についている幼なじみなどを配置しました。
 また、対立する宗教の司教という立ち位置の男性と女性をサブキャラクターとして配置しています。2人はかつて恋人同士という設定にしました。かつて愛し合っていた恋人ですら、今は2つの教団のトップとして半目し合っているシーンを描くことで、双子がこれから歩むかもしれない未来を暗喩しています。

 アニバーサリー(◯周年、とか〇〇記念、みたいな意味で使っています)のタイミングで公開されるストーリーとして、ボリューム・内容ともに通常の2倍(たけのや比)の内容でした。長過ぎる映画は観る気がしない性格なので、ボリューミーにしつつもどこを削ってどこに力を入れて描くか、苦労はありましたが構成のしがいがありました。

あらすじ

(ストーリー上、双子に明確に姉・妹の区別はないですが、ややこしいので便宜上振り分けています)

 主人公はとある宗教国家に双子の妹として生まれました。
国の礎となっている宗教は光の教団と闇の教団に分派しており、生まれることが非常に希少な双子は、教団がそれぞれ信奉する光と闇の神の後継者となるため育てられます。光と闇の神はかつてはひとつの存在だった、と言われていますが今は分派し、対立しています。
 双子の姉は光の、主人公は闇の大司教の候補として成長していきますが、幼く甘えん坊の妹は、自分の将来への不満を姉や母にこぼします。しっかり者の姉は主人公の気持ちを理解しながら、共に成長するために自分たちの使命を説き、2人の母はそんな2人に愛を注ぎ、優しく抱きしめます。主人公はすぐそこに迫った決別の時を知りながらも目を背けて、幸せな狭い箱庭で温かく育ちます。
 そんな中、光と闇の宗派の対立に双子は巻き込まれます。闇の宗派が手を染めた暗部の影響によって、双子をかばった母が犠牲となって死亡してしまいます。
 闇の宗派が推し進める改革によって、主人公を人身御供として捧げる計画が立てられます。それは闇の神を主人公に降ろし、圧倒的な力を持って国を改革に導く、という計画でした。神を降ろすための依代となる対象は、記憶や人格を失い、実質的な死を迎えることになります。そんな計画を双子の姉は知ります。
 母を失い泣きじゃくる主人公を守るため、姉は主人公の身代わりとなって自分の身を犠牲にします。主人公が知った時にはすでに、姉は神の人格となっていました。主人公は姉を犠牲にしてしまった罪を背負うことになります。
 甘えん坊だった主人公は罪の意識を抱えながら、強くなること、姉を取り戻すことを決意し、姉の代わりに光の神の後継者となります。
 国の後継者としての勤めを果たしながら姉を救う方法を模索し続け、仲間たちもその姿を見て感化されていきます。
 ストーリーの後半、多くの助けを受けながら、姉が捕らえられている地へと向かい、姉の人格を乗っ取った闇の神と対峙します。
 主人公はかつての幼かった自分と決別し、姉の名を叫び、気持ちを訴え、魂の片割れを取り戻そうと力を振り絞ります。その努力が実り、主人公はついに双子の姉を取り戻すことに成功します。
 姉を失って己を律するために決して流さなかった涙が、せきを切ったように溢れ出します。互いを大切に思う気持ちが重なり合って、かつて2つに分かたれてしまった光と闇の神の力は、双翼となって復活します。

感想

 今回大ボリュームということもあり、1つのストーリーの中で物語の起承転結を全て詰め込むのはあまり得策ではありませんでした。急に登場した人物が四苦八苦してもあまり感情移入することは難しく、そのキャラクターがどんな苦難を乗り越えたとしてもカタルシスが得られません。厳密にいうと、得られないわけではなく尺が足りません。そのため、なるべくこのストーリー以外の場所でも主人公の存在を見せたり、別の物語軸に登場させたりして、 事前にキャラクターのすり込みや事情の説明を行って、ストーリーの余分なボリュームをカットしていきました。
 その点は時間と共にストーリーがリリースされて展開されていくソーシャルゲームの特性を活かした施策だったと思います。

 国の、特に地形上の特性は三国志の蜀をイメージしています。 たどり着くまでに苦労する非常に険阻な土地。天然の要害となっている天涯の地。人や物の交流が薄いからこそ醸成される独特の文化。そういう土地に住む人々の考え方や文化、というものをイメージして設定しました。

 イメージしたクライマックスシーンは、キャッチワードにも設定した「双翼」が表現されたシーン。片翼を持った存在が抱きしめ合うと、それぞれの片翼がそれぞれを補い合って、左右の翼を持ったひとつの存在(双翼)になる、というシーンを表現するために全体を構成しました。

 ストーリー中、天涯の地の国に伝わる祭りが登場します。モチーフは超有名なランタン飛ばしの祭り「平渓天燈節」です。物語の舞台の国の成り立ちにも関係していて、双子によって双翼が復活したシーンにも関係するように設定して構成しました。

 ストーリーのタイトルに使われている言葉にも「復活」という意味が使用されています。響きがカッコいいでおなじみ、ラテン語から引用しています。今考えるとかなりストレートなタイトルですが、漢字と横文字の組み合わせはタイトルとして非常に座りが良くなるのは、ジブリ映画が証明していますね。

 クライマックスを表現するために必要なパーツは、主人公が味わう試練や悲劇でした。幼なじみの負傷、母親の死、姉を失うシーン、いずれも自分を守るために大切な人が傷つくことは、主人公が背負ってしまう罪になるように展開しました。
 3部作となっていて、1部と2部に、クライマックスに至るまでの過去の事情説明、3部にそれらを回収する現在の展開となるように構成しました。

 登場人物の名称は宗教関連のワードを使わせていただきました。
 宗教をモチーフにする際は創作物であれ要注意です。◯◯はモチーフとして使用しない、◯◯という用語は避ける、など案外NG項目が多いです。  今回もなるべく特定の宗教や教義に寄らないように注意しました。翼をモチーフにした、主人公が生きる国の教義の内容や、それが2つに分派した経緯などを考えるのは楽しかったです。
 サブの登場人物の命名についても宗教を絡めるようにしました。 イスラム教の楽園と呼ばれるジャンナ、聖書に記された約束の地カナン。 色んな宗教で「楽園」とされる場所から命名するなどしています。続編となるストーリーの登場人物にもひそかに採用されているルールです。

 双子を使った入れ替わりのネタを構成に入れ込んでみました。双子Aかと思ったらB、双子Bかと思ったらA、という双子の特性を使ったトリックはたくさん存在します。今回使用したトリック自体は単純なため、見ているユーザーさんをびっくりさせることは難しいと考えていましたが、物語の展開をドラマチックにする役割は果たせたかと思います。
 ただ、リリース後、双子のどっちがどっちかわからない、という意見も多く見られました(申し訳ない……) 。こういうネタを使う場合は双子それぞれの個性をどうつけて識別しやすくするのか、が課題だなと感じました。

 双子の姉が妹のために犠牲になるシーンで、相手に宛てた手紙を朗読するシーンを入れたいと考えました。ドラマや映画だと定番の手紙朗読シーンです。
 ただ、それをゲームで表現しようとするとウィンドウの文字数やタップ過多になりがちなどで冗長になってしまう、という仕様上の壁がありました。 そこで、仕様を逆手に取ってゲームのバトル画面にオーバーラップする形で朗読のボイスを再生する形にしました。 言葉で説明してしまうと陳腐ですが、映画やドラマといった映像では定番のシーンをゲームの仕様の中で表現できたことは、演出の可能性を広げられたいい例になったと思います。
 これを実現してくれた制作チームの方にはなにより感謝しています。

まとめ

 アニバーサリーのストーリーとしてふさわしい内容になるように、アイデアとネタを凝らした物語にする努力をしました。この作品でアニバーサリーのストーリーと銘打ったものは個人的に5作目まで続きますが、いずれも思い入れの深い作品ばかりです。
 一方、思い入れが深いゆえに苦労も多く、増えるボリュームに比例してかかるストレスもまた増えていくのです……。

 「アニバーサリー」「周年」という言葉を見たり聞いたりすると、いまだに胃が「ヒュッ」となる感覚は、たぶんこの頃から始まりました。
 緊張感、ストレスと共に気合が入るというか、「外しちゃいけない戦いがここにある」という感覚。ホームランを打たなければ行けない打席、みたいな。当然美味しい料理作ってくれるんでしょ?みたいな。すべらない話してくれるんでしょ?みたいな。自意識過剰ではありますが……。

 決してネガティブな意味ではないです。
 ストレスが高すぎてリリースされるまで気が気じゃない日々が続きますが、リリースされたストーリーの感想などをちらほら見かけ始めると、様々な苦労が報われます(ポジティブな意見だとさらに嬉しいです)。
 物語の主人公と一緒に、僕もカタルシスを味わっているのです。

印象に残っているシーン&セリフ

双子と母親の絆を描いたシーン


甘えん坊の主人公の代わりに双子の姉が使命を果たして、誰にもバレずに済んでいたのに、母親にだけは見破られて説教されそうになり……。

「お帰りなさい、2人とも。
 さて……。ティアナ。私に何か言うことはない?」

「えっ……と。特に……ありません、大司教様。」

「本当に? それじゃあ、どうしてシンシャがあなたの代わりに
 指導を受けていたのか、理由を教えて?」

「えっ……と、あの、その……。」
「ど、どうしてわかったの……?
 誰も気づいてなかったのに……。」

「私の目はごまかせません。さあ、ティアナ。」

「あ、あう……ご、ごめんなさい。大司教様。」

厳しい目で娘を見つめる母

「反省している? ティアナ。」

「は……はい。」

「ティアナ。私の目を見なさい。
 私が何に対して怒っているかわかりますか?」

「闇の教理の指導を……抜け出したことに。」

「違います。双子であるシンシャに入れ替わるなんて……。」
「そんなワクワクすること、私に黙ってしたことに対してです。」

「大司教様……。」

「気づいたのは私だけよ。これは3人の秘密ね?またのけ者にしたら、
 今度はカナンとジャンナにバラしちゃうからね?」

「……………………っ。」

「いらっしゃい、ティアナ。」

母の胸に飛び込む主人公

「シンシャも、いらっしゃい。」

「でも、その……。」

「本当はいけないんだけど……。3人でいる時くらい、
 あなた達の母親でいたいのよ。ね、シンシャ。」


主人公の姉が遺した手紙


 あなたがこの手紙を読んでいる時、私はもう、あなたが知っている
シンシャではなくなっているかもしれないね。
私達の愛したグラージャは、これから破滅への道を歩き始めるのかもしれない。……私はそれを止めたかった。
でも……ごめんね、止められなかった。ごめんね、ティアナ。

 ティアナ、私は弱いね。お母様が亡くなった時、胸が張り裂けそうだった。自分の中の大きな何かが、失われたようだった。ここから先、あなたまで失うことに、私はきっと耐えられない。
……卑怯な真似をしてごめんなさい。私を許さなくていい。恨んでいい。
それでもあなたには、生きていてほしいから。
ごめんね、ティアナ。どうか、グラージャを出て、どこか遠く……。
平和な場所で、生き延びて……。

 ティアナ。いつも将来のことを話したね。あなたはいつも、
お母様と私だけ守れればそれでいいって言ってたね。
それじゃダメだよって私は言っていたけど、結局……結局ね、
私もティアナと同じだったよ。他国の人々に恨まれても、平気。
グラージャの人々に殺されたとしても、全然平気。

 これから私は、どんなにひどいことをするかわからない。
あなたに嫌われるかもしれない。でも……。
あなたを失うことだけは耐えられない。
血も、力も、魂も分け合った姉妹だもの。
勝手なことを言ってごめんなさい。それでもあなたには……。

 それでもあなたには……笑っていてほしい。
私はあなたの、キラキラした笑顔が好きだから。
私のことは大丈夫。大丈夫だよ。さようなら……ティアナ。


最後まで読んでいただきありがとうございました!
面白ければぜひハートマークをポチり、お願いします。
ではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?