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【自家製サッカー概論】41 マークをはがすのは個人技術か、集団(リターンパス)か

 J1は第4節を消化。順位をずらっと眺めれば、得失点差で首位神戸に名古屋が肉薄する状況。
 この2チームは4試合で勝点9、これは「スタートダッシュ」成功と言っていいだろう。この結果にクラブ関係者は安堵の一言ではないだろうか。
 
 だが、目を降ろして下位に目を向ければ、勝点を掴み切れなかったチームがもがいている様子も見えてくる。
 これはクラブ関係者もヤキモキしているだろう。そして、そんなチームの一つが川崎ではないだろうか。
 
 川崎の試合を全て追いかけている訳ではないが、新潟戦を少し見ると、得点機会も少なからずあり、きっかけがあれば浮上する様な気もする。
 
 …とは言いつつ、そんな川崎の戦いを見て、一つ感じたことがあったので書いておこうと思った。
 
 川崎といえばJクラブ屈指のポゼッションのチームである。
 最終ラインと中盤で相手をいなし、サイド、中央とボールを動かしゲームを支配。最後はボールと人が連動し、ゴール前に人数掛けて迫っていく。
 そんなイメージがある。
 
 その川崎が最終ラインから中盤に当てられたボールで、中盤の選手が個人技で打開している場面があったのである。
 
 中盤選手に技術があるため、目立つ感じではないが、こちらははっとした。
 
 以前、リターンパスについて書いたことがあるが、こちらの考えに次の様なものがある。

 「ポゼッションを得意とするチームはリターンパスを巧みに使う」
 
 つまり、川崎くらいのチームになると、リターンパスを混ぜた連続したパス交換で相手のプレスをかいくぐれる、…はずである。
 だが、川崎のポゼッションは、それがぎこちなく見えたのだ。
 
 これは意外だった。相手がプレスを掛けて来ても、リターンで返して動き直し、同時に、別の選手が動き出しスペースにポジションを取る。
 
 そこにパスが通る…、と思ったら、受けた選手がさらにリターンで返す。
 ここまで連続すると、守備側は、どこでボールを奪うか、“的を絞れなくなる”のである。
 
 かつて、攻撃サッカーで鳴らしたガンバ大阪や広島もこうしたリターンパスが上手かった覚えがある。
 
 リターンを連続で使い始めると、観ている方も目が追い付けなくなるくらいでクラクラする感じがある。
 
 今でも、その最高傑作だと思うのは、セレッソ大阪時代の香川真司選手と乾貴士選手のコンビである。
 観ていて、次にどこにボールが動くのか全く分からなかった覚えがある。
 
 ただし、注意したいのは、リターンパスをしてもボールは前に運べていないという点だ。
 ボールを前に運ぶためには、周りの選手が、パスを受けられる位置にポジションを取り続けることがミソになってくる。
 
 相手に「喰い付かれて」もワンタッチでいなし、動いた相手の脇のスペースに走り込む。よく言う「釣り球」というヤツである。
 こうして、ボールを動かし、相手を惑わし、ボールを前方、或いはサイドへ運んでいく。
 川崎が圧倒的な攻撃力を誇っていた時は、こうした場面は多かった様に思う。
 
 得点を急ぐあまり、連続して前へ前へとボールを運ぼうとすると、相手にとって“的を絞りやすい”攻めになってしまうのである。
 
 それをいなすためのリターンパスである。結構役に立つプレーだと確信している。
 
 ただ、個人技が高いと、中盤で詰まっても個人技で突破できてしまったりする。
 海外のビッグクラブを見ると、そんな選手がゴロゴロしている。
 そんな力技も、また、見応えがあったりする。
 
 川崎はどちらできっかけを掴むのだろうか。個人がチームを浮上させるか、それとも、集団性を取り戻すのか。
 そんな点にも注目しつつ、川崎の浮上を観るのも面白いかも知れない。

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