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熱融解積層方式3Dプリンターまとめ

前回の記事で「わが家に3Dプリンターが届いた」とお伝えしました。
実際に使用していろいろな物をモデリング、造形しています。
今のところで言えば、大満足、大活躍しています。

せっかく3Dプリンターを購入したので、改めて3Dプリンターの勉強をしなおそうと考えました。
そこで、今回は3Dプリンターの造形方式の一つである熱融解積層方式について、私の復習がてら記事をまとめる事とします。

ぜひ、これから3Dプリンターを購入してみようと考えている方は参考にしてみてください。


3Dプリンターでの造形

まず、3Dプリンターでの造形ってなんなのか?そこを軽く触れていこうと思います。

物の形を作る為には材料を加工します。
機械での加工方法には大きく分けて3つの種類があります。

・除去加工
材料を削って形状を作る加工方法
[切削加工 / 研削加工 / 放電加工]
・変形加工
材料に力を加えて形状を作る加工方法
[プレス加工 / 鍛造加工 / 射出成型加工]
・付加加工
材料に材料を加えることで形状を作る加工方法
[溶接加工 / メッキ加工]

3Dプリンターは基本的には材料を一層一層積み重ね、形状を加工していくので、3つ目の付加加工に属します。

付加加工では、除去加工や変形加工ではできない特殊な形状が加工できる事が特徴です。
部品内部にグネグネと曲がった経路を配置したり2つの部品を繋げて同時に造形したりなど付加加工でしか成し得ない面白い設計ができます。

付加加工

もちろん除去加工や変形加工を想定し設計した物も造形する事ができます。
3Dプリンターでの付加加工には大きな自由度があります。
初心者の方にも、小難しい加工条件や造形姿勢などを意識しない自由な設計を楽しんでもらえると思います。

仕事として設計を行うのもいいですが、個人的な趣味として最高のツールだと考えています。


3Dプリンターの造形方式

私が調べた結果、現状3Dプリンターでの形状を作り上げていく造形方式には、大きく分けて以下の6つの方法があります。

・熱融解積層方式(FDM / FFF)
・光造形方式(SLA / DLP)
・インクジェット方式(MJ)
・粉末焼結方式(SLS / SLM)
・粉末接着方式(BT)
・シート積層方式(LOM / UC)

これらの他には、3Dプリンター開発販売各社から、独自の造形方式も提供されていますが、方式的にはご紹介した6つに大別されます。

造形方式によって、使える材料の種類や、造形コスト、造形速度が変わってくるので、3Dプリンターを購入しようとしている人は、適した造形方式を選ぶ必要があります。

本記事の最後にYES/NOを選べば、自分に適した造形方式が分かるチャート図を用意しました。
よかったら活用ください。

今回の記事では、その中でも最も広く普及している熱融解積層方式について詳しく解説していきます。


熱融解積層方式(FDM / FFF)

材料となるフィラメントやペレットに、熱を加え溶かし、一層一層積み上げていく方式です。

基本的にはステージとなる造形ベッドに下から上へ材料を積み上げていきます。
特殊なものでは、造形ベッドがコンベアになっていて、横方向へ斜めに造形する3Dプリンターも存在します。

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熱融解積層方式のメリット

・本体価格が安価
・使える材料が豊富
・広い造形エリア
・メンテナンス性、機能拡張性に優れる

比較的低価格で3Dプリンター本体が購入でき、材料コストも抑えることが出来るので、一般家庭での個人利用目的の導入が多くされています。
最も広く普及している造形方式です。

材料には、主に熱で溶かせる樹脂材料が使えます。
ABSやPLA、PCなどの硬質樹脂材料から、軟質樹脂のTPU、スーパーエンプラのPEEKまで非常に多くの樹脂材料が揃っています。
個人利用としては材料選定に困ることはないと思います。
ちょっと変わった熱融解積層方式3Dプリンターとして、チョコレートやガラスを材料として使えるものも存在します。

造形エリアとしては広い造形エリアを持つ熱融解積層方式3Dプリンターが多く登場しています。
現状、造形エリアの広さに本体価格が比例しています。
現状家庭用としては向いていませんが車のフロントバンパーが丸ごと造形できる、非常に広い造形エリアを持つ製品もあります。

また、造形方式がシンプルな為、メンテナンス性や拡張性に優れています。
日々のメンテナンスは造形ベッドの水平出しや清掃を頻繁に行いますが、それ以外には数ヶ月に1度ヘッドノズルの交換、リニアシャフトやガイドレールへ油を差す程度です。
また、3Dプリンターの機能拡張として、3Dプリンター自体で部品を造形できるので、いろいろと自分で考えながら設計をし、部品追加をしている方も多いようです。

熱融解積層方式のデメリット

・積層痕が目立つ
・熱による寸法誤差
・中空造形が不得手
・平面解像度の低さ

熱で材料を溶かし、1層1層積み上げていくのでどうしても造形物の側面に特徴的な積層痕が残ります。
この積層痕によってデザイン性を損なう可能性があります。
対処法としては、積層ピッチを小さく設定することや、後処理での表面研磨や薬品での表面処理で限りなく目立たなくする事ができます。

積層痕

ABS樹脂などの熱収縮率が高い材料を使う場合には、熱による寸法誤差が発生する可能性があります。
また、熱収縮によって造形物が造形ベッドから一部が剥がれ、いわゆるソリが発生し、大きく寸法誤差がでる事があります。
対処法としては、造形ベッドへ吸着力向上のためにノリを塗る事や、ヒートベッドで熱収縮を遅滞させ緩和する方法があります。

造形ベッドに対して、下から1層1層積み上げるので空中に浮いた部分には、下から支える様にサポートが必要となります。
このサポートが造形物に付く下面部では、造形品質が極端に低下します。
また、完全に浮いた物ではサポートに射出した材料が上手く付かず、造形自体が失敗することも多いです。
対処法としては、サポートが不要な形状を設計する事や、積層ピッチを小さくして細かく形状を造形する方法があります。

造形エリアの高さ方向に向けては、積層ピッチとして細かく設定ができます。
しかし、幅と奥行の平面方向の解像度は、ノズルの穴径に依存しています。
現状多くの3Dプリンターではノズルの穴径は直径0.4mmが主流です。
このノズルの穴径以下に平面解像度を下げる事はできません。
これにより造形物の角部では必ず僅かなRが発生します。
対処法としては、ノズルを穴径がより小さい物に変更する事や、後処理での表面研磨による角出しが必要となります。


熱融解積層方式スペックまとめ

熱融解積層方式の3Dプリンターでも、機種ごとにスペックは変わってきますが、現状でのスペック数値の上限と下限をまとめてみました。

スペック数値の上限下限を把握しておくと、3Dプリンターを選定する際に役に立つと思います。

本体価格(万円):1 ~ 5,000
材料コスト(¥/kg):1,000円程度
造形エリア(mm):X100×Y100×Z100 ~ X914×Y610×Z914
本体価格/造形エリア比(¥/10mm³):10 ~ 98円程度
積層ピッチ(mm):0.3 ~ 0.01
ノズル穴直径(mm):0.8 ~ 0.2(現行0.4mmが主流)
材料:ABS / PLA / PETG / ASA / PC / ナイロン / TPU / PVB / PEEK 等々


オススメFDM3Dプリンター

販売されている3Dプリンターには完成品組立品の二種類があります。
組立品は、3Dプリンター部品がバラバラの状態で手元に届くので、自分で組み立てる必要があります。
初めて3Dプリンターを購入する方は、完成品をオススメします。
ニトリの家具が難なく組み立てられるぐらいに腕に自信があれば、組立品でもいいと思います。
組立品は3Dプリンターの構造や仕組みの勉強になるので、後々の機能拡張などで理解していた方がいいことが学べると思います。

オススメ完成品3Dプリンター

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FLASHFORGE ADVENTURER3
本体価格:¥63,800
積層ピッチ:0.05mm~0.4mm
造形エリア:150×150×150mm
ノズル直径:0.4mm
使用可能材料:ABS、PLA
注記:まだ販売はされていませんが、後継機となるADVENTURER4が発表されているので、購入時期には注意してください。

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XYZプリンティング ダヴィンチ1.0 pro
本体価格:¥69,800
積層ピッチ:0.02mm~0.4mm
造形エリア:200×200×200mm
ノズル直径:0.4mm
使用可能材料:ABS、タフPLA、PLA、PETG

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FLASHFORGE GuiderII
本体価格:¥195,800
積層ピッチ:0.05mm~0.4mm
造形エリア:280×250×300mm
ノズル直径:0.4mm
使用可能材料:ABS、PLA、PETG、TPU


オススメ組立品3Dプリンター

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ANYCUBIC i3 Mega S
本体価格:¥36,999
積層ピッチ:0.05mm~0.3mm
造形エリア:210×210×205mm
ノズル直径:0.4mm
使用可能材料:ABS、PLA、PETG、TPU


適した造形方式の選定チャート

どの造形方式があなたの用途に向いているのか、質問にYES / NOで答えるだけでわかる選定チャート図を用意しました。

機種によってはこのチャート図に当てはまらないものが合ったりしますが、参考になればと思います。

このチャート図はフリーでどこにでも使ってもらってかまいません。
保存しようが、人に渡そうが、改変しようが自由です。

造形方式選定チャート

このチャート図を作っていて気づいたんですが、大体今回紹介した熱融解積層方式に集まるんですね。
それだけ、熱融解積層方式が自由度が高く、汎用性に優れている結果だと考えました。

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