『ヒンジ』×『3Dプリンター』
今回は、3Dプリンター造形に適したヒンジの検証結果をまとめました。
ヒンジは、ドアのように部品同士が接続し、1つの直線軸上で可動する設計に用いるものです。
3Dプリンター造形では、複数個の部品を同時に造形することができ、ヒンジ形状も一度に造形することで、組み立ての手間の排除、ヒンジ部の強度向上、組み立て不可部品の造形が可能です。
ヒンジには、内部の形状とスキ設定がとても重要となります。
内部形状によっては、ヒンジがスムーズに動かなかったり、軸がぶれたりします。
また、スキ設定によっては、部品同士のがぐらついたり、ヒンジとして機能しなくなります。
今回は、3Dプリンター向けに複数部品の一体造形を念頭に置いた、ヒンジの内部形状、スキ設定を検証しましたので、その結果をまとめた記事になります。
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検証環境
今回の検証は以下の検証環境で行っています。
使用3Dプリンター:FLASHFORGE GuiderII
材料:Pxmalion PLAフィラメント Φ1.75mm
積層ピッチ:0.08mm
ノズル温度:210℃
ベッド温度:50℃
サポート:無し
ラフト:無し
造形速度:50mm/s
造形環境によっては、検証結果が変わります。
今回の検証結果を基に、自身の造形環境に適した設計を行ってください。
ヒンジ内部形状検証
ヒンジの内部形状を検証します。
今回検証するために用意したモデルがこちらです。
検証する内部形状は、赤丸で囲った、ヒンジの軸となる部分です。
ここの形状によっては、スムーズに動かなかったり、軸がぶれたりします。
検証では、動きのスムーズさ、軸のブレ具合を重点的に見ています。
検証する内部形状は4パターンを用意しました。
①円柱形状
➁山形状(大)
③山形状(中)
④山形状(小)
3Dプリンターで造形し、形状によって差異があるのかを検証しました。
検証は、3Dプリンターでの造形品を手を使って動かしやすさやガタツキを比較しました。
その結果が以下です。
×:悪い結果 △:中程度の結果 〇:良い結果
①円柱形状
動きのスムーズさ:×
軸のブレ:△
➁山形状(大)
動きのスムーズさ:△
軸のブレ:△
③山形状(中)
動きのスムーズさ:〇
軸のブレ:〇
④山形状(小)
動きのスムーズさ:〇
軸のブレ:×
感覚的な検証方法ですが、わずかに山形状(中)の形状が動きのスムーズさ、軸のブレ具合において良い結果となりました。
スキ設定検証
それでは、次はヒンジ形状のスキ設定の検証結果を見ていきましょう。
検証するために用意したモデルがこちらです。
ヒンジ内部形状はすべて前述で良い結果を残した山形状(中)にしています。
断面ルールは画像の様に、X寸法スキのみ変更しています。
X寸法は、0.0mm、0.1mm、0.2mm、0.3mmの4パターンで検証しています。
3Dプリンターで造形して、スキ寸法によって差異があるか検証しました。
検証方法は、3Dプリンター造形物を手で動かし、部品のがたつき、ヒンジの硬さを比較しました。
検証結果が以下になります。
×:悪い結果 △:中程度の結果 〇:良い結果
X寸法:0.0mm
部品のがたつき:×(動作不可)
ヒンジの硬さ:動作不可
X寸法:0.1mm
部品のがたつき:〇
ヒンジの硬さ:硬い
X寸法:0.2mm
部品のがたつき:〇
ヒンジの硬さ:引っ掛かりなく可動
X寸法:0.3mm
部品のがたつき:△
ヒンジの硬さ:ゆるゆる
感覚的な検証方法ですが、0.2mmが一番ヒンジとしての用途に適していると感じました。
ヒンジ最小板厚
ヒンジの形状、スキ設定検証を板厚を変え、ヒンジとして最低限の強度を保てる板厚を検証しました。
設計条件としては、ヒンジ形状は山形状(中)、スキ設定は0.2mmで板厚のみを変えて検証します。
板厚は、1.0mm、2.0mm、3.0mm、4.0mmの4パターンを検証しました。
検証方法は、3Dプリンター造形物を手で引っ張り、ヒンジ部が壊れるか比較しました。
検証結果が以下になります。
×:悪い結果 △:中程度の結果 〇:良い結果
板厚寸法:1.0mm
引張強度:×(弱い力により破損)
板厚寸法:2.0mm
引張強度:△(強い力により破損)
板厚寸法:3.0mm
引張強度:〇
板厚寸法:4.0mm
引張強度:〇
感覚的な検証方法ですが、ヒンジ形状の最小板厚は3.0mmが限界だと判断しました。
ヒンジ検証結果まとめ
以上がヒンジ検証です。
検証結果をまとめると、ヒンジ形状は山形状(中)、スキ寸法は0.2mm、最小板厚は3.0mmということがわかりました。
ヒンジは部品同士をつなげ、動かすことができる便利な要素です。
今回の検証が誰かの役に立てば嬉しく思います。
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