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住宅メーカーの比較?


こんにちは、多田ゆかりです。今回はハウスメーカー等の耳障りの良いキャッチフレーズについて、個人的な意見を書いてみようかなと思います。

女性建築家の設計する住宅

うちの設計部では女性建築士が活躍していて女性目線の設計をしています

このようなフレーズよく見聞きするのではないでしょうか。若い女性が図面に向かっている写真と共に。
しかし、実際にはただ女性だからといって特別な設計ができるわけではありません。それに、建築の専門的な知識が身についていない若いスタッフに設計を任せない会社がほとんどだと思います。

もちろん、家事や育児を普段から経験しており、設計に生かせる女性建築士もたくさん存在します。ただし、年間何千、何万棟と住宅を建てるハウスメーカーでは、1棟にかける設計期間が非常に短く、そのような要素を求められることは現実的ではありません。

子育てしやすい家

類義語「子どもと共に成長する家」「家族の笑顔が広がる子育て応援の家」

最近よくみますねーこの手の広告

一昔前の住宅設計では、子供に個室を与えないことが良い設計とされていました。建築の専門誌でも有名な建築家たちは、"大人(夫婦)のための家"を提唱していました。当時学生だった私も、設計の授業で「子供が子供としてその部屋を使う時間は長くないので、そのために(子供の数に応じた)6畳の部屋と収納を、何も考えずに設計するのは良くない」と教わりました。

近年は事情が変わってきており、子供は成長に応じてプライバシー空間は必要(2階の個室)
ただ、キッチンは対面式で、子供が小さい間は母親がキッチンで家事をしながら宿題を見る。また、階段はリビング内に配置され、2階の個室への行き来を見守る。これらが一般的な流行りの間取りです。そして、そのような住宅を「子育てしやすい家」と表現しています。以上の説明を読んでいただければわかるように、特別に子育てに特化した設計ではなく、一般的な流行のプランです。

リモートワークに対応した書斎

奥様にもキッチンの一角に家事スペースご用意しました

私はこれらのフレーズをあまり好きではありません。
現代的ではないと思いますし、営業担当者が夫側の意見だけに耳を傾け、家を建てる権限が夫婦に平等にあることを忘れています。
しまいには奥様の為の家事スペースって、妻は使用人ですか?!

ここ数年、うちの事務所に設計を頼みに来るご家族のほとんどは、ご夫婦合算での収入で建設予算を立てられています。
そもそも誰のお金で建てようが、家族の財産であり、誰かの機嫌を取るのはおかしいのです。

在宅で仕事をする場合、家の中に仕事場を用意することは当然ですが、会社員でリモートワークがない場合は書斎は単なる趣味部屋になるでしょう。趣味が多い方などもいらっしゃいますので、完全に否定するつもりはありませんが、長時間過ごせる快適な個室を作ってしまうと、住宅を建てて数年後には「あれ?お父さんなんで今日はいるの?」と家族の中で居場所がない、なんて事になりかねません。

やりたいことに応じて色々な居場所があちこちにあり、リラックスする時は自然と家族がリビングに集まる。
そういう住宅にしないとただのシェアハウスの様な家になってしまう、と私は考えています。

当社自慢の〇〇工法は地震に強い!

高断熱!高気密!省エネ!

住宅の性能の話は以前も齋藤が記事にしましたが、現在は建築基準法を遵守している住宅しか建てられることができません。
毎年のように改正を重ねていて、構造基準も昔よりも厳しくなっています。細かい内容は長く難しくなってしまうので今は割愛しますが、今後今まで以上に最低基準を厳守しなければならなくなります。

建築基準法をしっかり守った住宅は最低限快適な暮らしは確保できると思います。最近建てたのに寒い、建物が揺れるといった問題は、工事の施工の問題であり、第三者機関の監理が入らなかったことが原因です。
経験上、住宅の施工中には間違いが全くないということはあり得ません。人間が手作業で行っていることなので、わざとではないですが、大なり小なり必ず間違えたり勘違いをしたりするのです。
大切な事はそれに気づき是正する事。そのために私達設計事務所の監理が必要なのです。
ハウスメーカーだと、会社の中で営業→設計→施工と担当が変わっていくのですが、統括して監理している人はいないですし、社内での検査には限界があります。

そもそも、建物を建てるという事は、出来上がったパーツを組み立てるわけではなく、0から作っていくので、耐震性を上げたいとか、断熱性を上げたいとかは設計で簡単にできることです。ただし、それに伴い当然建設コストは上がるので、どこまで必要かよく話し合って落としどころを決める。という作業がとても大切になります。
当社は〇〇工法で耐震性に優れ高断熱です、のようなフレーズは全く気にする必要はないと思います。


このような耳障りの良いフレーズは例をあげれば枚挙にいとまがないので、これくらいにしておきます。
悪いというのではなく、あくまで宣伝文句だという事。洗剤等のCMなんかは大げさで誰もそのまま信じないですよね。
住宅メーカーの広告もマーケティングの一部なのです。

とは言え色々魅力的に感じ、惑わされますよね。
『一生に一度の大きな買い物、絶対に損したくない』そういう思いになってきたら一度冷静になり、住宅メーカー巡りはやめた方が良いです。
『こんな生活をしてみたい』そういう楽しみだけを抱えて設計事務所に相談するのが、結果的に幸せな家づくりになりますよ。


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