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祝・単行本化! 「ただの空気」が吸えなくなりました。 〜化学物質過敏症で無職になった話〜

2020年9月10日、ぶんか社様より、原作を担当した漫画が発売されます!

電子コミック雑誌で連載していたもので、いったん電子版のみで単行本化していたのですが、今回はなんと…紙の単行本になります!



あらすじ

都内の大手保険会社で契約社員として働くユリ。大変ながらもやりがいのある仕事と、料理上手で気の合う友達・ケイとの同居生活で充実した楽しい生活を送っていた。 ところが、会社の席替えがきっかけで、ユリは原因不明の咳と、のどの痛みにさいなまれるようになり――!?
化学物質過敏症になり、すべての日常が奪われたOLの実録闘病記!

ぶんか社 公式サイトより

という、実話に基づいたコミックエッセイです。

実録闘病記としての正確さ

掲載誌の性格や漫画という媒体上エンターテイメントでもあることから、実際に起きた出来事をそのまま描いていない部分もあります。
制作陣の体験を混ぜたり仮名を使うことで、個人が特定されたりしないよう、注意して作りました。
しかし発症者としての経験は誇張なくリアルに描くことを心がけてます。

どこで買えるの?

全国どの書店からでもご注文いただけます。店頭に並んでいるかも!
または、ぶんか社のサイトから「紙版を買う」をタップすると、主なネット書店が列挙されています。

ぶんか社↓

honto↓

個人的なおすすめ「honto」
大日本印刷が運営するハイブリッド総合書店。丸善、ジュンク堂、文教堂と提携していて、店舗在庫も分かるし購入した本を店舗で受け取ることもできる。電子書籍もあり、WEBと店舗でポイント共通という便利な書店です。

読める本を作るために

発症者にとって気になるのはまず、「その本は手に取れるのか?」ということだと思います。それは買えるかどうか、ということではなくて、病状として、言葉通り、手に持つことができるかどうか。
当事者でないと何を言っているのか「???」かもしれません。
ですが、本というのは紙を生成するために使用される薬品、インキ、製本するための糊、流通段階でのニオイ移り(「移香」と呼ばれています)などによって、我々には「近づくことさえできないもの」のひとつなのです。
編集さんや印刷所さん、みんなでこの問題に立ち向かいました。その苦労の奇跡はぜひ描きおろし取材漫画でご覧ください。

献本の曝露状況

化学物質過敏症の発症者は、著しく体調を崩すなどの反応を示す化学物質にさらされてしまうことを「曝露」といいます。

さて、制作者には店頭に並ぶ前に、献本として実際の単行本を送ってもらえます。発売の1週間前、手元に届きました。

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携わってくださったすべての方の力によって、あまりにも綺麗に完成していて、嬉しくて感動して、すぐにでも共有したいと開封、写真を撮りました。が、実はこのとき、ちょっと曝露していました……

こればかりは誰も責められません。
先ほども書いたとおり、本はインキだけでなく、紙、糊、流通、いろいろな工程でたくさんの反応する”なにか”をつけてきます。それらに反応した可能性もあります。一生懸命考えた工夫がうまく機能しないこともあります。私としては、携わってくださった方すべてに感謝しつつ、次回への課題といたします。

化学物質過敏症を発症している方、気味の方、ご注意を

発症されている方は、本を買うときはご承知のとおりだと思います。何日も干して、風をあててからでなければ読めないことを。分かって買うから大丈夫と言ってくださると思います。
それでも作者のひとりとして、責任を持って申し上げます。
十分にお気をつけて開封してください。

この漫画が目指すところ

「化学物質過敏症」という言葉を聞いたこともない人が読んで、
「なるほど、こんな病気があるのか」
「もしかしたら自分もなるかも。気をつけよう」
「あの人が言ってた症状ってこれかも。日用品を見直そう」
そんな風に思ってもらえたら。

すでに発症している人のための本は、少ないながらも出版されるようになってきました。発症者による発症者のための対策も、検索すればネットで(玉石混淆のきらいはあれ)見つけられます。

でも知らない人に向けた、わかりやすい、共感できる出版物というのは、なかなか見かけないような気がしました。
そこで、発症者も頷けて当事者じゃなくても納得できる、その中間を着地点に見据えて、編集さんと一体になって作ったものです。
至らない点もあるでしょうけれども、この単行本が全国の書店に並ぶことが、よい風になりますように。そしてそれが力強い清風を呼び、この吸えなくなってしまった空気を一掃してくれることを願っています。


〔追記〕





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