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【歴史本の山を崩せ#021】『ムハンマド・アリー』加藤博

《近代エジプトの基礎を築いた俊傑》

世界史上の人物100人を厳選。
廉価な小冊子という形で多彩な評伝集をなしている山川世界史リブレット人シリーズの一冊です。

ムハンマド・アリーと聞いてピンとくるひとはどれだけいるでしょうか?
ナポレオンとほぼ同時代にエジプトのリーダーとして君臨した君主です。
オスマン帝国の一地方総督に過ぎなかった彼はエジプトに独立国家ともいえる体制を築きました。
彼を近代エジプトの祖とするかどうかは評価が分かれるところですが、欧米の力を借りずに、しかし近代化を目指した開明的な君主であったこと。
エジプトの近代化の礎を築いた人物であったことは間違いないでしょう。
果たして、ムハンマド・アリーの目指した近代化が残した歴史上の意義とは何だったのでしょうか。

日本では西洋でも東洋でもないエジプトに関する歴史はマイナーな分野です。
このムハンマド・アリーの評伝自体が非常に貴重なものと言ってよいです。
エジプトの歴史と聞いても、多くの日本人は砂漠とピラミッドのイメージしかないのではないでしょうか。
かのナポレオンをはじめとする欧州諸国とオスマン帝国の間でしたたかに立ち回ろうとした俊傑の伝記から受けるエジプトの姿は新鮮です。
まだまだ、私たちの知らない歴史上の偉人や出来事がたくさんあることを感じさせてくれます。

ところで、この山川世界史リブレット人シリーズは人選がよいです。
全100巻(一部、一冊で複数人を主人公としているものもあります)という制限の中で、カエサルやナポレオンのようなメジャーどころを押さえながら、このムハンマド・アリーのような「通」な部分もカバーしています。
800円で多いものでも100ページ程度のコンパクトな評伝なので色々な意味で初心者にもやさしい。
刊行されるのが待ち遠しいラインナップがまだまだたくさん。
このシリーズでしか読めないような人物もあるので世界史好きは要チェックです。

『ムハンマド・アリー』
著者:加藤博
出版:山川出版社
初版:2013年
定価:800円+税

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