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『日本はなぜ開戦に踏み切ったか』~「両論併記」と「非決定」~

とてつもなく面白い本だった。
アメリカと開戦するかという局面にさらされた日本の対米交渉の緊張感溢れる「紙の上のバトル」。
開戦に踏み切りたい陸軍統帥部と、開戦回避したい政府外務省。
交渉条件をめぐる両者の綱引き・駆け引きは外交のシビアさをリアルに描いている。
読んでいて胃が痛くなりそうな緊張感を味会わせてくれる。

真珠湾攻撃の直前まで繰り広げられた開戦派と回避派のせめぎあい。
回避派の先鋒は東郷茂徳外相。
かの東条英機首相さえ、天皇の意向をうけて対米交渉による開戦回避を選択肢として排除していなかった。
実際は開戦には高いハードルがあり、開戦回避の可能性は十分にあり得た。

積極的に開戦を意図していたのは陸軍の統帥部だけだったにもかかわらず、なぜ日本は開戦という選択をしたのか?
開戦後の見通しを示せず、本音ではその無謀さを承知していたのにメンツに拘り、開戦を否定できなかった海軍。
「両論併記」と「非(避)決定」という「決められない組織」であった大日本帝国。
別の選択肢を持ちながら、開戦を選択せざるをえなくなった日本の意志決定プロセスの弱点は、昭和、平成を経た令和日本においても「鑑」となるものだ。

歴史を語る際に心に留めておきたいのは、私たちは、歴史上になされた選択の善し悪しを判断するための情報を当事者たちよりも知っているということである。
なによりもその選択によってもたらされた結果を知っている。
一見、不合理以外のなにものにも見えない選択にも理由があるのだ。

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