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【歴史本の山を崩せ#022】『天下統一とシルバーラッシュ』本多博之

《戦国時代を動かしたカネの実態を追う》

より多くのカネ、ヒト、モノを動かせる者がライバルとの戦いを制する。
言い換えれば歴史の勝者は「経済」を制した者が多いといえます。

日本の戦国時代はまさにその典型的な例です。
金や銀の鉱山の開発が進み、カネ、ヒト、モノの流れに劇的な変化が起こった時代でした。
世界遺産として有名な石見銀山もこの時代に開発され、空前のシルバーラッシュは日本を飛び出して、東アジアを巻き込んでいく。

戦国期から織豊期を経て徳川政権に至るまでの経済・流通の変遷を描いたもので、タイトルにある銀ばかりを追うものではありません。
シルバーラッシュが東アジア地域への影響に関しての記述は近年注目されているグローバルヒストリー的な観点から見ると、少し物足りない感はあります。
ただ、このあたりは東アジア地域の大国たる中国側からの視点から描かれた他の本などと読むと理解が深まるでしょう。

国内経済の変遷という点から見るならば、例えば貨幣に焦点を当てた『撰銭とビタ一文の戦国史』(【歴史本の山を崩せ#018】)との併読がオススメ。
本書で金と銀を読み、『撰銭とビタ一文の戦国史』で銭を読む。
日本近世における金・銀・銭という三貨体制を概観することができます。

『天下統一とシルバーラッシュ』
著者:本多博之
出版:吉川弘文館
初版:2015年
定価:1700円+税

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