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日本の病床事情:さらに足りなくなる将来

 現在、日本の一般病床と療養病床は120万床弱あります。高度急性期と急性期のベッドはそれぞれ13%と45%ということであわせて病床の半分以上を占めています。本来は、療養病床がもっと必要なのですが、その転換がすすまない背景としては、急性期の加算がないと病院がなりたたないという事情があります。そのため、結局、病床の機能転換は進まないというのが実態です。

 昨今、問題となっているのは高齢者の増加ではあるのですが、そのなかでもさらに85歳をこえるような超高齢者人口の増加が近い将来問題となることが明らかになってきています。なにが問題かといえば、75歳の高齢者と85歳を超える高齢者とでは、その健康管理に必要な資源の質と量が全く異なるということです。もっと簡単にいうと、同じ人口であっても必要な労力が極めて多くなるということです。さらに当然ですが、死亡者数は徐々に増加していきます。ちなみに、2020年に138万人であった死亡者は2022年には156万人となっています。そして、さらに今後増加を続け、ピーク時には170万人となると予想されています。現在、一般的には、病院で死亡する高齢者の割合が非常におおいのが現実で、死亡者の10%ほどの増加というのは、おそらく間違いなく病床の圧迫につながることは間違いないでしょう。ちなみに、それなら病床を増やせばいいじゃないかというかもしれませんが、政府はこれ以上病床をふやすことは考えていません。

 当然このあたりのながれは厚生労働省も理解はしており、というかこう言った数字自体が厚生労働省などのデータなのですが、病院で人生の終末期を迎える現在の流れを在宅での看取りに徐々に移行していくようにいろいろと策を考えています。たとえば、2024年度の診療報酬改定では一部の状況におけるAdvance Care Planning(ACP)の導入に保険点数を設定しました。ACPが浸透すれば、人生の終末期に入院が長くなったから病院から追い出すというようなことをしなくとも、少しは自宅での看取りに道筋をつけられるということと思います。これは厚生労働省がよく使う手の一つで、医療にインセンティブを付与することで、最終的に国民の行動変容を促すという作戦と理解しています。そして自宅で管理しきれない人達のために、回復期病床を増やす対応を基本方針とする準備を着々と進めています。

 ただ、ここで問題となってきたのは、ここ最近、地方における人口減少が急速に進んでいることで、必要な医療ニーズに地域による大きな差が出てきたことです。厚生労働省は基本的な方針を提示する事は可能ですが、日本の各地方における医療事情をそれぞれ把握して、それにあわせて中央からそれぞれの地域にあった調整をおこなうというのは正直無理があります。いままではなんとかやっては来ましたが、それもさすがに限界に達してきたというのが現状です。そのため、地方における医療の体制の調整(病床の数の削減や医療機関の統廃合など)は、県を主体とした地方自治体に任せるような体制になっています。もともと地方における大きな基幹病院などに交付される補助金は基本的に地方自治体の公費から捻出されているのですから、当然の流れになっているとも言えます。地方においての人口減少についてはこんな感じですが、東京の中心では今度は医療介護の多国籍化が進んだりしていますので、またこちらの話しも今後いろいろと変わっていくことと思います。

 とにもかくにも、これから10年くらいの医療の変容は、かなり急激なものになるかもしれないと思っています。

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