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僕の独立記念日。

思い出の曲~ECHOES vol.7『デラシネ』


高校を卒業して、アパートを借りアルバイトしていた。

やりたい事はあったが、何をどうすればいいのかもわからず、生活するために、ただ毎日アルバイトに行くだけだった。

「フリーター」っていう言葉がまだ浸透してなくて、大学にも行かず、就職もしない者は「ぷー太郎」と呼ばれた時代だ。転じて、友達からは「ぷー」という新しいあだ名をつけられた。

最初は楽しかった。自分で稼いだお金で遊べる。アパートは溜まり場となり、毎晩の様に騒いでた。

でも、やがて少しずつ孤独になった。大学や専門学校に行ってる友達は勉強やサークルで段々忙しくなっていく。こちらはバイトを転々としてるから、収入が安定しなくなってくる。

生きてくために必死でアルバイトしてるうちに、俺は何でこんな生活してたんだっけ?と自分がわからなくなっていく。

ついに電気が止められた真っ暗なアパートの部屋で、ウォークマンで音楽を聴く事しか出来なかった。

ECOHESの『デラシネ』。この曲はアルバム『Dear Friend』に収録されている。

お金もなく、友達は去っていき、描いてた夢や理想もぼやけて見えなくなってしまった夜。電気の無い部屋では外から差し込む灯りを頼りにするしかない。窓際にただ座って、この曲を聴きながら、胸が苦しかった。

でも、絶対にこの状況から抜け出してみせる、と自分に言い聞かせた。


『デラシネ』はフランス語で『根無し草』という意味だ。そして『故郷や祖国から離れたもしくは切り離された人』『故郷を喪失した人』という意味もある。

『故郷を喪失した人』という響きが僕には痛かったが、その通りだなとも思った。

だからこそ、ここで生きてやる、独立してやると決心した。

その時、ひとりでニヤッと笑う事ができた。



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