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ほんのり創作を

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現実と創作のはざま 全てが未完成
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2024年7月の記事一覧

隠しきれない02

隠しきれない02

「あーきたきた!こちらでーす」

「おつかれさまです」

「じゃあまた乾杯しましょうか〜」

とりあえずビールを2つ頼んで、席に着く。
隣室で泊まっている花さんには、行くとき声かけてもらえますかとお願いしていた。

私にはこういうところがある。
ひとりでどこにでも行けるのに、他人に任せてしまうズルいところが。

ホテル内のバーなので、おおよその時間を決めて直接お店に集まり、自由に飲み始めるスタイル

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隠しきれない01

隠しきれない01

彼女がはじめて挨拶に来たときのことをよく思い出す

「精進します」
と言っていた
たぶん緊張していたんだと思う

「自分あの…中国の方の…」
「いや…あ…フォンです、よろしくお願いします」

みたいな挨拶をしたと思う
ぶわっと顔が熱くなったことしか覚えていない

あれから2年経って同じ場所で働くようになった

先月の納涼会の前、明日の飲み会行くんですか、とつい声をかけてしまった
いやたぶんハッキリ

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隠しきれない00

隠しきれない00

「ではまたのちほどー」

バタンガチャン、というドアが閉まる音とオートロックが閉まる音がエコーのように続いている。
いい年した大人だけの、仕事でのホテル泊はある意味で気が楽で良い。各々シングルルームに隠れる。夕食・朝食もつき、ホテル内のプレゼンホールに終日通い詰める。
息が詰まる、という同僚もいるが、私はホテルから一歩も出ずにすべてが済んでしまう環境がなかなかに好きだ。職場の人たちが一緒だという緊

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お客様は大泥棒_02

お客様は大泥棒_02

また会った
彼女もすぐに私に気が付いた

定期的に通っている産婦人科からの帰り
彼女には私の姿がどう映っているっているのだろうか

コンビニとファミレスの前を素通りするバス停から乗ってきて
大きな駅まで行かずに早々に降りていく私を

「前に話したときのことなんですけど」

急に以前の会話の続きを始められると思ったほど
私が彼女のことをよく覚えていることを彼女が感じ取ったことを肌で感じた

「どんな

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