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「コーダ-あいのうた-」を観た話

こんにちは、タケイユウコです。

無類の映画好き……ではない私が“観たい”と強く思った映画『コーダ-あいのうた-』を観るために久しぶりに映画館に行ってきました。
今日は映画館だからこそ味わえた感動の瞬間を文字で残しておきたくて、感想を書きます。

作品との出会い

そもそも、なぜこの作品を観たかったというと、私が手話を学んでいるからです。地域の手話サークルで手話を学び、ろう者と交流しているため、聴覚障害やろう者、コーダ(聞こえない両親から生まれた聴者の子どものこと)という言葉は耳にしますし私にとっては特別ではありません。しかしながらろう者を題材にした映画は多くありません。また、私自身がろう者の暮らしや不便さを理解しているかと言われるとそれも十分ではありません。
偶然にもCMで歌手を目指すコーダが主人公であることを知り、ろう者の生活について理解や学びを深める機会になるのではと感じ劇場を訪れました。

以下、ネタバレを含みます。これから観る予定の方、また検討中の方はご注意ください。

***
あらすじ
ろう者の両親から生まれたコーダのルビー。彼女の家族は兄のもろう者で、家族の中で“聴こえる”のはルビーひとり。幼いころから家族の耳となり、漁の手伝いや手話通訳を担ってきたルビーには、家族が知らない好きなことがあった。それは、歌うこと。
高校で想いを寄せているマイルズと同じ合唱クラブを選んだことで、ルビーは自身の将来について考えることになる。彼女の才能を見いだした音楽教師から音楽大学受験を勧められたのだ。
試験に向けて特訓を始めたものの、ろうの家族に理解を得られず苦しむルビー。
そんな中、家族に危機が訪れる。ルビーは音楽の道をあきらめてしまうのか……。
***

描かれているのは家族の日常

物語の舞台は、アメリカにある海沿いのまち。ルビーは緑に囲まれた湖や青い海など自然豊かなまちに暮らしています。
家の中では手話、高校に行くと声、ルビーは聴こえない世界と聴こえる世界を行ったり来たりしています。聴こえない家族との暮らしが当たり前で、でも煩わしい時もあって……。両親のプライベートな部分のケアまで高校生のルビーが担わなければならない事実に驚きました。「私だったらどうするだろう」と、ルビーが感じる不安や葛藤や羞恥心などにめいっぱい感情移入してしまいました。

物語のキーマン

本作には珍しいクセ強めなキャラクターとして登場する音楽の先生は、ルビーの触れてほしくない痛いところに躊躇なく踏み込んでいくので、「もっとルビーに優しくしてあげて」とヒヤヒヤする時が何度かありました。しかし、先生との会話をきっかけにルビーの心は開放されて、さらにのびやかに歌えるようになります。生徒の可能性を信じる先生の情熱と愛情に胸をうたれました。そして、試験当日も先生はいい仕事をしてくれます。実際の試験なら、それは絶対あかんやろーと思いましたが(笑)。個人的に大好きなキャラクターです。

家族の愛に涙

音楽大学への受験を反対したあと、夫婦で話し合うシーンがあったの「だって私たちのベイビーが……」「もうずっと前から大人だよ」というやりとりに涙があふれてしまいました。
親にとってはいつまでたっても(私なんて42歳ですけど)子どもは子どもなんですね。ただ、通訳として頼っているだけではなく、可愛い娘が心配でたまらない親心が伝わってきました。このあたりからは、ずっとハンカチを握りしめていました。

そして、見どころの高校で開かれる秋のコンサート。きっとルビーが素敵に歌って、音楽が盛り上がって泣かせるところなんでしょう?なんてことを考えていた直後……

最高の仕掛け

音楽が消えました。無音です。まさかの「聴かせない」演出です。
この瞬間、私は“聴こえない世界”を体験しました。

もしも自宅のテレビを無音にしたとしても、わたしたちにはちょっとした生活音が耳に入ってきます。しかし、映画館という空間と設備のおかげか、ソワソワしてしまうくらい静かで長い時間に感じました。

目の前で可愛い娘が歌っている、けど、もちろん声は聴こえない。でもなんだろう…周りを見渡すと笑顔の人、感動して涙している人が見える。そうか、娘の歌声はこんなにも人の心を震わせることができるんだ。
そう、いつの間にかルビーの父に感情移入して涙が止まらない私がいました。

もうひとつの見どころは、終盤の入学試験で歌うシーンです。娘を全力で応援する家族と家族のために歌うルビー。ルビーは声だけでなく手話を交えて生き生きと歌いあげます。そして物語はエンディングへ向かいます。

さいごに

『コーダ-あいのうた-』は、物語の軸になる歌唱シーンが素晴らしさはもちろんのこと、ルビーと家族、そして周囲の人たちの愛に感涙する作品でした。
また、ナチュラルな手話表現が魅力的で、あとでパンフレットを見るとろう者の役者が出演していることが分かりました。当事者が作品作りにかかわったからこそ、ろう者とコーダの生活をリアルに体感することができたのだと思います。

ちなみに、長く手話を学んでいるからといって、劇中のアメリカ手話を理解できたわけではありません、字幕をめっちゃ見ていました(笑)。英語やフランス語、中国語の映画だってそうですよね?手話が分からない人は字幕を見ればよいだけ。手話は言語が違うだけだということを、もっと多くの人に知ってほしいし、一人でも多くの人にこの作品を観てもらいたいと思いました。
久しぶりに映画館にいってよかった!次は何を観ようかな。

本日も読んでくださりありがとうございました。

#映画感想文

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