【小説】昭和、渋谷で、恋をしたり 1-7
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▼ 慣れた手つき それから他の従業員に佐藤さんのことを聞くと、その人柄からか、誰もが佐藤さんの復帰を喜ばしく話した。
博識、博学、そしてユーモアもある。ゆっくりとした口調は余裕を感じさせ、優しくて背が高くて、スマート。非の打ち所がない。そして誰かが言った。
「奥さんもきれいなんだよね」
「娘さんもかわいかったよな」
渋谷駅で見た夏奈恵のあの笑顔は、父親との再会の笑顔ではなかった。すると記憶の中のあの笑顔は色