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私と酒の陣

竹徳かまぼこ株式会社の代表の竹中です。今年で20周年を迎えたにいがた酒の陣、この20年間の酒の陣を私なりに振り返ってみました。



にいがた酒の陣とは

2003年5月に開業した朱鷺メッセを使用し、新潟県酒造組合が設立50周年を記念して、当時40代の若手メンバーが中心となり2004年2月に初開催されました。
ちなみに2003年11月に第56回全国蒲鉾品評会新潟開催が同じく朱鷺メッセで開催したこともあり、新潟県蒲鉾組合として酒の陣初回開催に参加させて頂きました。

初開催の来場者が実行委員会の予想を上回る、5万人が来場し、継続を望む声が多く寄せられたことと、低迷していた日本酒業界に光明が注いだことから、現在も開催が続いていると思います。

にいがた酒の陣

初期の頃の酒の陣

初開催では入場料無料で試飲もできた。
蒲鉾組合も併催で開催された「スローフード・スローライフ展」にて参加し、自慢のかまぼこを持ち寄り、試食として振る舞った。
来場者は「これも無料でいいの?」「これもいいの⁉︎」と戸惑いながらも、各酒蔵、自慢の銘酒を試飲し、新潟の地元料理やおつまみも楽しむことができた。
出店者も参加者も勝手がわからず、参加者の中には飲み過ぎてしまったり、救急車のお世話になった方もいたが、大半は新潟のおいしいお酒と料理を堪能することができ、地元客だけでなく、観光客からも人気が出て来た。
2回目以降、回を重ねる度に修正を繰り返し成長を続けてきた。

毎年変化してきた会場レイアウト

色々な取り組み

東京からのお客さんを呼ぶために、JRが酒の陣専用新幹線も出して、東京駅から芸妓さんを乗せて会場までを結ぶイベントなどもあった。
鍋の陣も会場内で行われた。
予約制の席を用意して、海鮮おでん鍋を提供した記憶がある。
たしか大助さんと、とん八さんも鍋の陣に参戦してた記憶がある。
初期は食の陣と力を合わせて開催された。

鍋の陣 海鮮おでん鍋(竹徳かまぼこ)


当時の会場内のレイアウトは食ブースが真ん中にあり、囲む様に酒蔵のブースが並んでいた。

2009年の会場レイアウト 鍋の陣があった

米の陣、利き酒コーナー、寿司組合加盟店の各店が会場で握る寿司組合ブースも出店されてた。
後に寿司組合で取り組んでいたメニュー「極み」もこの頃、2007年新潟市が政令指定都市になる時に誕生した。

寿司組合による出店ブース

番外編、日本橋三越にて行われた酒の陣日本橋。

酒の陣in日本橋

新潟での酒の陣の盛会の噂を聞きつけ、全国の百貨店からも開催の要請が多かったそうです。

日本橋三越本店の特設会場
新潟清酒がずらりと並んだ

2011年3月11日

その日は設営日だった。
前年の2010年の酒の陣では過去最高の87,000人以上の来場者で溢れた。
旅館もホテルの予約で満杯、出店者も多くの来場者を見越して仕入れや仕込みをして準備をしてきた。
午後2時46分あの震災がおきた。
電話は繋がらずテレビで見る限りとんでもない事がおきていたが、その時はまだ実感が湧かなかった。
朱鷺メッセの会場に着くと、まだ設営の準備をしていた。
まもなく会場アナウンスにより酒造組合から中止の判断がなされた。
10万人が来るとも予想され、出店者の期待値が高まっていたなか、素晴らしい英断だった。
目先の利益にとらわれずに、判断を誤らない決断力には脱帽した。

2011年開催予定のレイアウト
プレミアム席が用意されてた

行き場の無くなった商品やおでんを被災地に送ったりしたが、今思えば良かれと思ったことでも、現地では生ゴミになってたのかも知れない。
必要な時に必要な物が的確に届く事の方が大切だと今では思える。

復活した酒の陣

2012年、来場者が初の10万人を超えた年。
酒蔵をウェブマーケットのセンターに集め、壁側を食品ブースが並ぶレイアウト。

2012年 脇を固めた食品ブース

これにより酒蔵がメインとなり、上越・中越・下越・佐渡とエリアに分けたことで新潟県内の個性あふれた地酒の強みが伝わる良い方向だと思った。

店舗内側から

ウェブマーケットの壁面側に食品ブースが並び大盛況に終わった2012年、これ以降、会場のスペースを更に広げるためと、裸火を使う食品ブースの安全性を守るために、食品ブースは会場の外に配置して、多くの来場者に対応する仕組みへと舵を切っていった。

竹徳と酒の陣

弊社、竹徳かまぼこは新潟市中央区東堀の本社で製品を製造し、現在では県内外の6店舗にて販売しています。
当時はスーパーなどには卸さず、対面販売が主な営業のスタイルでした。
酒の陣は竹徳かまぼこにとっても一大イベント。

酒の陣 竹徳ブース

各店舗から販売員を派遣して、本社からは全員で会場内に製造ラインを作りお客様を迎える。

各店舗スタッフと

普段は工場でかまぼこを製造しているスタッフは、どの様なお客様が購入し、どの様に売れているのかは分からない。
製造肌のスタッフは人前に出るのが苦手だが、自分たちが作っている商品が飛ぶように売れていくのを目の当たりにして、心の中では喜んでいる。
この時ばかりは自然と皆んな笑顔になる。

閉店まで欠品することなく販売続けた

一方で、普段は店舗で販売しているスタッフは、どの様な人たちが製品を作っているのか顔が見えない。
店舗では自分でかまぼこを揚げて陳列して販売するが、この日ばかりは背中に本社製造スタッフを背負って販売に専念できる。
実は各店舗の販売スタイルには違いがある。
おススメの口上にも各自のオリジナルがある。
接客販売の技の見せどころがここにはある。
竹徳かまぼこにとって酒の陣は売り上げも去ることながら、スタッフ同士の繋がりと育成に、そして弊社の成長に欠かせないものであった。

新潟おでん

現に弊社製品の「新潟おでん」は酒の陣でブラッシュアップされてきたと言えるだろう。

会場を埋め尽くす来場者
2015年以降は毎回10万人を超えた

2019年には過去最高の141,000人の来場者で溢れた。

アフターコロナ 一歩踏み出したNEXT

2020・2021年と新型コロナウィルスの影響により中止となっていた酒の陣。
実は2021年にNEXTの前身にあたる「清酒酒場」が朱鷺メッセの向かえにある通称「大かま」でプレ開催された。

2021年はテスト開催の清酒酒場

来場人数と来場者を限定して、更に当日の来場前には来場者全員が抗原検査を受けて陰性の方のみ来場という厳戒態勢で行われた。

試飲用の蓋付きキャップ

試飲も全てに蓋がされている。
食事も全て蓋付きの容器で提供した。

飛沫防止フィルムとケースカバー

午前と午後の二部制で二日間開催された。
この二部制により、今までの混雑解消と新潟清酒をじっくりと楽しむ時間を持つ良い改善点となったと思う。

ソーシャルディスタンスをとった大かま会場

2022年10月に同じく感染症対策を講じて「にいがた酒の陣NEXT」を3年振りに大かまにて開催された。

2022にいがた酒の陣NEXT

コロナ禍のなか、苦しいながらも再度歩み出した酒の陣
二日間で3,000人の枠があっという間にチケット完売になり、新潟清酒のファンの熱い思いが伝わる静かながら熱気ある会場だったのが印象深い。

2022大かま会場の様子

2023年 本陣、開催。

2023年3月、朱鷺メッセウェブマーケットに戻ってきた酒の陣。

2023年蔵元をセンターに 指定席券売も行われた
2023年蔵元ブースの様子

まだ感染症対策を講じながら、1日2部制にて開催。
飲食店ブースは会場外の特設会場にて行われた。

会場外に並ぶ飲食店ブース

1日2部制、各回3,000名の合計12,000名が訪れた。
入場後30分間は試飲は出来ず、先に席の確保や食品を確保する時間があるため、各回3,000名でも多くの来場者が長蛇の列を作っていた。

2023年の竹徳ブース 長蛇の列が出来た

この会場してから30分間は食品を確保する時間が作られたのは、あの2021年コロナ禍の苦しい中でも開催した清酒酒場の経験が活かされたからだろう。
2021年清酒酒場の1日目の午前の部でのこと、入場すると同時にお目当ての酒蔵に行く人、席の確保をする人、つまみを買いに行く人、動線がバラバラになり気付けば時間終了間近。
その様な経験から、先に席やつまみを確保する時間を設けることで、来場者がスムーズに試飲が出来る環境が出来たと思う。
常に修正と実行を繰り返してきた酒の陣だからこそのなせる技なのだ。

三たび訪れる苦難

20周年を迎えたにいがた酒の陣2024年3月、1日目の早朝未明に吹き荒れた突風が屋外テントを襲った。

崩れ落ちたテント

朝、会場に到着したら昨日設営した店舗が吹き飛んでいた。
他の出店者も同様に手が付けられない状態で天を仰いだ。

屋外会場

だが会場内の酒蔵ブースには影響は無く、来場者も外に並び始めている。
酒の陣の開催には影響が無いので予定通り開催を決定。
食品出店者は出来る範囲で会場内で販売をする事になった。

会場外にあった飲食店ブースと休憩会場

会場までの1時間半で、各食品出店者は潰れたテントの中から使えそうな物資を取り出し、可能な限りの商品を提供できるように動いた。
弊社は板わさと漬物だけが提供できると判断した。
なんとかウェブマーケット内の壁面側で即席で各店ともそれらしい品を並べることになった。

即席で作った店舗

昼頃には本社から急遽揚げたての商品を並べることができた。
会場の外では被災したテントの後片付けと復旧を各社とも行っていた。
外ではまるで野営の様な状況だったが、皆さんすごい対応力だと感心しつつも、実際に災害がになれば同様にその場の対応力が不可欠だと、いい経験になったのかもしれない。
きっと、いつかこの経験も活かされるだろう。

20年間を振り返る

一言で20周年と言っても20年はあまりにも長い。
私自身で言えばこの20年間で結婚もしたし、子ども3人に恵まれた。
長女は今年で18歳の成人、あと2年もすれば一緒にお酒が飲める年になるとは感慨深い。

娘二人とMiss SAKE Niigata2024

酒の陣が産声をあげた年に生まれた子は今年でお酒が飲める年になるくらいの20年間。

2000年代初頭、ビール、焼酎、ワインに押されて低迷を続けていた日本酒業界、かまぼこ業界も同様にファストフードと洋食文化の影響からライフスタイルの変化に押され右肩下がりだった。

スーパーには安い練製品が並び、とても同じ土俵では戦えなかったのを思い出す。
2000年11月に先代の父が亡くなり、2001年に本町市場の小さな店から対面販売の小売を始め、他社が作ってない地場産素材を使った商品作りをした、小さな店の店頭では多くの人には伝わらない。
百貨店の地下でスポットで催事出店したり、イベントなど出店したりしながら対面販売を続けてきた。
対面販売を続けることだけが生産者とお客様をダイレクトに結ぶ道だと信じて歩んできた。
20年間続けてきたら、東京の日本橋三越にもお店を持つことができた。
20年間続けてきた酒の陣は、新潟清酒の良さと各酒蔵の商品開発に多大なチャンスを与え、弊社のような会社にもチャンスを与えてくれる、世界に類まれな存在だと思う。

これからも酒の陣には呼ばれる限り出店しようと思う。
もし、出店依頼が無ければチケットを買って行けばいいだけだ。
この様な素晴らしいイベントは他に無いから。

長男と私と酒の陣


最後まで読んで頂きありがとうございました。

感謝


※最後に、個人的な主観のもと書かれてます。表現の誤解、過去の記載に間違い等々ありましたらご連絡ください。訂正しご案内申し上げます。ありがとうございました。

過去画像(無許可)↓

酒の陣は開催される度に同級生に会えたり、地域団体や関連業界の仲間に会えたり、同窓会の様に酒を酌み交わし、たまに会えた喜びを楽しんでいる人を見受ける。
美味しくお酒を飲む知るだけの会ではないと感じています。
大切な人と、大切な仲間達と、是非、類まれなにいがた酒の陣へ、一度は足を運んで頂きたいと切に願います。
                 乾杯

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