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ファーウェイとの信頼なき貿易(The Economist 2020年7月18日版)

The Economist 2020年7月18日版から、「Huawei and the tech cold war
~Trade without trust~」の記事を取り上げてみたい。内容は「信頼なきファーウェイとの貿易について」についてだ。

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米中冷戦は勢いを増すばかりである。その中でも、特にファーウェイが注目されている。

ファーウェイは、1987年に人民解放軍出身の任正非(レン・ジェンフェイ)が創立した通信機器大手メーカーである。現在は、170か国以上の国に展開しており、19万人を雇用している。

皆さんご存知のように、スマホ市場では世界第3位につけているが、5Gでの特許取得数は世界1位である。

なぜ、ファーウェイがそれだけ人気なのか。その一つが、ファーウェイ製の基地局が小型でありとても安価であるからのようだ。

さて、本題に話を移す。
2019年5月、アメリカがファーウェイ排除をはじめた。ただ、これまではその排除に関係なく、ファーウェイは好調をキープしていた。なぜならば、アメリカ以外にも、ファーウェイの5Gを必要とする国や地域が多くあったためである。

しかし、2020年アメリカはギアチェンジを行う。
ウイグル自治区の人権問題を理由に、さらにファーウェイ排除を加速させたのだ。実際に、トランプ大統領はアメリカ以外の国に対してもファーウェイ排除を強く求めるようになった。

そして、7月に入りイギリスのボリス・ジョンソン首相がファーウェイ排除を決定する。昨日、フランスもそれに続きファーウェイ排除を決めたという記事も出てきた。

確かに、ファーウェイは信頼に欠ける部分もあるだろう。しかし、アメリカやイギリスがとったファーウェイ排除というものは、貿易ルールの「原則」を欠くものである。

信頼できないファーウェイと、欧米はどう向き合っていくべきなのか。そして、その際日本はどうすべきなのだろうか?

重要英単語

■重要単語
・descent(転落)
・anarchy(無秩序状態)
・confine(~を制限する)
・embrace(受け入れ)
・finely(詳細に)
・untenable(継続できない)
・ditch(~を取り除く)
・embargo(通商禁止)
・cripple(~を不自由にする)
・opaque(不透明な)
・amortize(~を定期的に返済する)
・disengagement(解散)
・containment(抑制)
・evolve(~進化させる)
・fiasco(大失敗)

記事の簡単な要約

ファーウェイは、さかのぼること19年前にドイツとイギリスに営業支店を作った。設立も1987年であり、まだ若い会社である。

そんなファーウェイに対して、アメリカが排除を決定した。それに続くような形で、イギリスもファーウェイ排除を行うのだ。

アメリカいわく、ファーウェイは情報漏洩のリスクが高いとしている。しかし、多くの国では、その情報漏洩はマネジメント可能な範囲以内であるという意見も出ている。

そんな中で、ファーウェイがイギリスから信頼を失ったことは確かである。ファーウェイの情報漏洩だけではなく、香港における人権問題が、信頼を失う決定的な要因になったのだ。

ヨーロッパ諸国において、ファーウェイ排除はコスト的には大きな負担にならないようだ。
また、エリクソンやノキアは5Gの生産に力を入れているため、十分対応できるようにも見える。

ただ、ここで考えなければならないことがある。
それは、このようなファーウェイ排除は貿易の原則から大きくはずれているのではないかということである。

仮に中国が、中国内にあるドイツ製の車やApple製の電話を強く規制し始めたらどうなるだろうか?誰でも、これは理にかなっていないと思うだろう。

同じようなことを、アメリカやイギリスは中国にしかけているのである。このような理にかなっていない、まるで子供のケンカのようなことが起こっているのが現状なのだ。

アメリカは中国に対して相当な圧力をかけているが、中国はかつてのソ連と比べてはならない。なぜならば、中国は世界第二位の経済大国である。ファーウェイ排除などは、一時的な処置にしかならず、根本的な解決には何もつながらないのである。

そんな中で、WTOやトランプは明らかに中国との貿易のやり方を失敗してきたと言える。

WTOは、中国が進めるデジタル経済に対応できていない。また、トランプは管理貿易を強く進め、関税などの規制を強めることしかできていない。

このように、欧米が理にかなっていない貿易を続けていることは確かだが、中国もやらなければならないことはある。

具体的には、欧米に進出した会社のオープンガバナンスである。中国は欧米のやり方に合わせて、これを進めることで少しでも信頼を積み重ねるべきである。

欧米は中国の一党独裁を変えることはできない。しかし、信頼を欠いた状態であっても理にかなっていない貿易が正しいとは言えない。

そんな状況においては、双方が納得するような貿易の原則を作って、進めていくしかないのである。

自身の見解

11月に大統領選挙があるが、それが大きなターニングポイントになる気がしている。

トランプは、中国への圧力を強めてきた。結果として、世界が分断している。

仮に、バイデンが当選した場合、世界は再び協調して進んでいく方向性になっていくと思う。

そうなったとき、中国との付き合い方も見えてくるのではないだろうか。

おわりに

南シナ海、尖閣諸島など、日本にも中国の脅威が近づいている。

日本は武力での対抗は基本的にはしない。そのため、国力としては弱く見られがちである。

5Gにおいては、富士通やNECが参入する予定であるが、これからどれだけこの分野で活躍できるであろうか。

しっかりとウォッチしていきたい。

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