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【質問】新卒2年目で香川転勤は出世街道まっしぐらですか?

「GW明けから四国ね、これ決定事項だから」とマネージャーが言い放ち、なんだか満足気な表情で会議室を出ていった。11:00~12:00の1時間尺で借りた会議室Bは5秒でその役目を終えた。

今日は年度明けの4月3日。残り一ヶ月で転勤?
あふれ出る疑問と怒り。ぶつけようと思った所でマネージャーはとっくに退室済み。

社会的ヤリ逃げをくらった俺は、一ヶ月後の香川転勤が決定した。

余談だが、今年の2月に入部した社会人アメフト部の退部も同時に決定した。「チームを勝利に導きます!」と熱く語った社会人フットボーラー人生は、4年ぶり2度目のバックレにて幕を閉じる。


・・・

会議室から戻ってくると、机の上にひっそりと転勤に関する資料が置かれていた。やることは多なれど俺の低CPUの頭はキャパオーバーで、全くもって仕事が手につかず、いったん落ちつこうと会社を抜け出した。

昼下がりの日本橋は、遅めの休憩を取ろうとするサラリーマン、もしくはサボリクソ野郎にあたたかい日差しを注いだ。吹き抜けるビル風の心地よさがセンチな気分を引き起こし、ちょっとだけサボることに決めた。


歩きながら、日本橋をこうしてぷらぷら散歩するのが好きだったことを思いだす。


日銀前の桜並木をよく歩いた。薄いピンクの花びらが頭上から降り注ぎ、まるで春に舞う雪みたいで、中央区のマダムも、日銀エリートサラリーマンも、手取17万男も、みんなぽけーっと見惚れていた。

三越のデパ地下へ行った。ランチに1000円は使うことは適わず結局冷やかしで終わった。何度目かのイキリでようやく購入できたのは三本400円のバナナ。レシートはまだ財布の中にある。

月初を少し過ぎると、麒麟像を過ぎて丸善まで行き、POPEYEを本気で立ち読みした。呼び覚まされた俺の中のシティーボーイはくるりを聞きながら、賑わう小道をスケボーで駆け抜けていって、明治屋で一つだけチョコを買った。

皇居まで歩いて午後一のミーティングに遅刻した。どこが再開発なんだと三菱地所の工事を見た。ヤクルトレディを尾行した。別にnoteに書くようなことでもないような、なんてことのない毎日だったけど。それでもなんだか、楽しかったんだよな。

社宅がある船橋から毎日1時間弱の通勤では、古今東西のおっさんひしめく総武線快速に乗り込んで。毎回毎回揉みくちゃにされて、通勤だけで体力を持ってかれて。それでも、おじサラリーマンが並び倒す新日本橋駅のくそ長い階段を、最高に憂鬱な月曜の朝を吹き飛ばすように駆け上がっていった。

スーツのアオキで購入した上下で2万のスーツは、よれよれでしわしわでクタクタになった。日本橋を歩き倒してセブンのサンドイッチより厚みのないペラペラの革靴。

香川ではもう使うことは無いけど、なんだか捨てらんなくて、香川行の段ボールに詰めた。

午後8時のよどみきった電車の中、思い立って錦糸町で降りて、銭湯に行って汗を流した。風呂上がりにしめったシャツに袖を通すのが嫌だったけど。火照った身体にやわらかく青く光るスカイツリーを見て、よし明日も頑張ろうって思ったりしたんだよな。


でも香川かあ。
めちゃくちゃ遠いなあ。

絶対買いますって入荷依頼をしていた『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』って本。丸善は入荷したのかな。入荷してたらウケるなあ。

5年後くらいにはきっと、買いにいけるのかな。


読んでいただき本当に本当にありがとうございます! サポートしようかな、と思っていただいたお気持ちだけで十分すぎるほど嬉しいです。いつか是非お礼をさせてください!