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【Not his day】明治安田生命J1 第20節 ガンバ大阪-鹿島アントラーズ レビュー

戦前

前節は後半の2失点で大分トリニータに敗れ、連勝がストップしてしまった鹿島アントラーズ。中5日で迎える今節は仕切り直しの一戦となる。結果の欲しいアウェイゲームだ。

鹿島と対戦するのは7位ガンバ大阪。直近は3連勝中と好調で、前節も倉田秋とパトリックのゴールでサンフレッチェ広島に2-1と勝利している。三浦弦太をケガで欠いているのもあって導入した4バックが機能している状況だ。

なお。両者の前回対戦は8月。内田篤人の引退試合となったゲームだが、鹿島は前半にG大阪に先制を許すものの、後半のアディショナルタイムにオーバーラップした犬飼智也がクロスに合わせて同点弾を決め、引き分けに終わっている。

前回対戦時のレビューはこちら

スタメン

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鹿島は前節から4人変更。センターバックには出場停止明けの犬飼、前線にはケガ明けの土居聖真が復帰。ボランチにはレオ・シルバ、右サイドバックには小泉慶が入り、前節初スタメンだった山本脩斗は今節は左サイドバックでプレーする。

G大阪は前節から1人変更。宇佐美貴史が3試合ぶりの先発出場となった。

鹿島とガンバの守り方

お互いに4-4-2の布陣を採用するミラーゲームとなったこの一戦。こうした試合では、布陣が噛み合うために1対1のマッチアップが明確になりやすく、そうした局面でどこまで優れるか、どこまで変化をつけられるかが勝負のキーになりやすいのが定石だ。

ミラーゲームの中で両者に変化が見られたのは守備の部分だ。4-4-2の布陣を敷き、出来るだけ高い位置で奪いたいという狙いは両者同じだ。ただ、出来るだけ中央を圧縮して守る鹿島に対し、G大阪は自陣全体を埋めるかのように選手が位置取り、その分個々の担当するゾーンがかなり広くなる守り方をしていた。

鹿島の守備時

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G大阪の守備時

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鹿島の守り方はとにかくゴールに直結する可能性の高くなる中央を割られたくないと考えている部分が大きい。サイドでボールを持たれて、たとえ攻められてもゴールに直接迫られる可能性は低いし、クロスを上げられたなら中央に人数を揃えているのでそこではね返せばいいという考え方だ。

一方のG大阪は個々の守備能力の高さ、特に昌子源と井手口陽介の存在がこの守り方を選択している理由として大きいはずだ。共に日本ではトップレベルの守備能力を持ち、守備範囲も広い2人がセンターラインにいることで、中央にそこまで人数を割かなくても守れてしまうため、それならピッチ全体に人を置いた方が機能性が上がるという判断である。

ただ、サッカーのピッチの広さではベタ引きでもしない限り、どうしたってどこかにスペースは生まれてしまうものだ。ということで、前半から攻める際はそのスペースを突いた攻撃になっていく。鹿島は個々の間隔が広い故に空くセンターバック・サイドバック・ボランチのちょうど中間に生まれるギャップとなるスペースを土居が積極的に使ってパスを引き出すことで打開を狙い、G大阪は鹿島が空けているサイドからボールを前進させていった。

ガンバの狙いを壊す犬飼智也

そんな中で主導権を握ったのは鹿島の方だった。鹿島は守備から自分たちのリズムを作り出していく。

G大阪のボール保持はあまり自らの形を変えずに行われるため、鹿島としてはプレスの掛けやすい形となっていた。そのこともあって、鹿島は序盤から高い位置でのプレッシングを積極的に行っていく。

ただ、元々G大阪はボール保持にそこまで強いこだわりを持つチームではない。陣形を動かさないのも、そこまでしてボールを繋ぎたいわけでもないし、むしろポジションチェンジで発生するリスクを気にしているのだろう。

それでも、ボールを奪いに来た鹿島にみすみす渡すことは当然あってはならない。そこで登場するのがパトリック。Jでも屈指のフィジカルを持つこのブラジル人にロングボールを放り込んで、鹿島のプレスを回避しつつ、彼を起点に攻め込もうというのがG大阪の狙いだった。

しかし、今節パトリックの前に立ちはだかったのが犬飼だった。普段右サイドに流れることの多いパトリックが左サイドに流れる機会が今節多かったのが、おそらく関川郁万より犬飼の方が優位に立てそうという打算があってのことのはず。だが、犬飼はそんな狙いもろともことごとくパトリックに競り勝ち続けることで壊すことに成功していた。逆に、この局面で競り勝てることを計算していたG大阪にとっては予想外だったはずで、この試合G大阪は鹿島のプレスにリスクと隣り合わせになりながらボールを繋ぎ続けるか、相手にボールを渡すのを覚悟してロングボールを蹴り込む、という難しい2択を迫られることになっていった。

理想的な展開も…

犬飼の好パフォーマンスもあって、守備から主導権を掴んでいく鹿島。守備で作った良い流れを攻撃にも向けていく。

鹿島の組み立てはこれまでと同様、三竿健斗が最終ラインに降りて3枚で行われる。この時点でG大阪の2トップに対して数的優位が作られているし、G大阪の前線は高い位置から積極的にプレスを掛けてくることはしなかったので、鹿島は比較的苦労せずにボールを前進させることに成功していった。

守備では相手の攻撃をシャットアウトして、攻撃ではボールを前進できるということもあって、鹿島は相手陣内でプレーする時間が増えていく。こうなると鹿島のペースだ。ボール保持から相手を押し込む→ボールを奪われても即時奪回で奪い返す→もう一度攻め込む→また奪われたら取り返す…、という良い時の鹿島が見せる流れが今節もピッチでは見られていた。

唯一にして最大の問題はこの良い流れの時にゴールが奪えなかったことだろう。相手陣内に押し込み、シュートは何度も放った。だが、それがことごとく得点に結びつかなかった。特に、エヴェラウドとファン・アラーノの両助っ人のブレーキは痛かった。39分に高い位置でのボール奪取からエヴェラウドが迎えた好機、51分にアラーノが抜け出しキーパーとの1対1になった好機はどちらか一つでも決めてほしかったが、結果は共にチャンスを逃すことになってしまい、これが今節のスコアに大きく響いてしまった。

チャンスの後には…

良い流れは作れているのに、中々ゴールが奪えない。こういうよくある流れに付き物なのが、一瞬のスキによる落とし穴だ。今節の鹿島もその穴にハマってしまう。

64分、オフサイドギリギリで抜け出したパトリックを沖悠哉がペナルティエリア内で倒してしまい、PK献上。これをパトリック自らに決められ、鹿島は先制を許してしまう。後半に入り、集中していた守備陣に徐々に綻びが見られ始めた中での失点だったが、ここは守備陣よりも先にゴールを奪って楽な展開に出来なかった攻撃陣が責められるべき展開だろう。

追いかける展開となった鹿島は選手交代も使いながら、反撃を試みる。だが、先制して引いたG大阪の守備陣を中々切り崩すことが出来ず、迎えたチャンスも決めきることが出来ずで、スコアはどうしても動かなかった。

先制した後のG大阪は守備ブロックを敷きながら、鹿島の攻撃に耐える時間が長かったが、宮本恒靖監督は選手交代で前線をフレッシュな陣容にして、カウンターの機会を伺っていた。それが実ったのは後半アディショナルタイム。G大阪はアデミウソンの突破からチャンスを作り出すと、最後は折り返しを渡邉千真が決めて、勝負を決定づける追加点。結局、試合はこれでタイムアップ。鹿島は2戦連続の完封負けで、連敗を喫してしまった。

まとめ

もったいない試合であったし、上を目指すチームがやってはいけない試合であった。多くのチャンスを決めきれず、逆に相手のワンチャンスに沈むという試合は今季もう何度も繰り返している。この悪癖が抜けない限り、タイトルを目指す段階にはまだ遠いと言わざるを得ない。

だが、チームとしてやれることはやっているのも事実だ。狙い通りの形からチャンスを作り出しているし、ゴールゲッターとして期待されているエヴェラウドにもそのチャンスが巡ってきている。そこで彼が決められなかったのは監督としてはどうすることも出来ない。次は決めてもらうように期待するしか出来ないのだ。

シュートが決まらない時、個人的には端的に3つの解決策があると常々思っている。1つ目は人を変えること。シュートを決められないのなら、シュートを決められる人材を使えばいい。個々の素質に原因を求める形だ。だが、起用されているのはリーグの得点ランキングでも上位に位置するエヴェラウドやスタイルを体現するには欠かせない存在となっているアラーノ。彼らに代わる人材はいるのか、というのが大きな問題になってくる。

2つ目はチャンスの質を上げること。シュートを打つ位置が悪いならより決めやすいで打てるように持ってくればいいし、DFにブロックされるならDFがいない状況でシュートを打てるようにすればいいし、キーパーに止められるならキーパーのいない状況を作り出せばいい、という考えだ。だが、今節迎えたのはキーパーとの1対1の場面も多く、あれ以上のチャンスとなると相手も全力で守ってくることを考えればなかなか難しいだろう。

3つ目はチャンスの数を増やすこと。鹿島としてはこれをやっていくのか一番短期的な解決策になるはずだ。一回で決められないなら二回、二回がダメなら三回、それでもダメならそれ以上チャンスを作り、その中のどこかで仕留めていく。やっていることは間違っていないだけに、愚直にやり続けていくことが、連勝時のような勢いを生み出すことにも繋がっていくはずだ。

連敗してしまったが、3連敗はなんとしても避けなければならない。チームの成長を再び逆戻りさせる訳にはいかないからだ。次節は惜しい試合でなく、より一層勝点が求められる試合となる。

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