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【ライプツィヒ観察記】ブンデスリーガ 第26節 RBライプツィヒ-フライブルク レビュー

上記の記事にも書いた通り、ドイツ・ブンデスリーガのRBライプツィヒというチームには鹿島アントラーズとの共通点がいくつか見られる。そこでブンデスリーガが先行して再開されたこともあり、しばらくライプツィヒの試合を見てレビューを書いていこうと思う。ライプツィヒについては上記の記事に簡単にどんなチームか、というのが書いてあるので、これを読む前に是非一読していただければ。

戦前

ライプツィヒが再開初戦、無観客のホームに迎えたのは8位フライブルク。首位バイエルン・ミュンヘンを勝点差5で追うライプツィヒにとっては、残り9試合で取りこぼしが許される試合はない。

スタメン

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ライプツィヒはセンターバックのウパメカノが累積警告で出場停止。普段はウィングバックを務めるムキエレが最終ラインに下がって、3バックの一員となった。また、チーム内得点ランキングの2位ザビッツァーと3位シックは共にベンチスタートとなっている。

安定したボール保持を可能にしたライプツィヒの配置

試合は序盤からライプツィヒがボールを保持しようとする姿勢を見せる。ライプツィヒは自らの配置を動かすことで、効率よくボール保持とそのボールの前進を狙っていた。

ライプツィヒのビルドアップ

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まず、フライブルクの出方を確認したい。フライブルクの守備時は5-2-3を基本としており、撤退というよりは前線の3枚でライプツィヒの3バックにプレッシャーを掛けようとする姿勢が目立っていた。

これに対して、ライプツィヒは3バックの形自体は崩さず、ここにキーパーのグラーチとアンカーのライマーがサポートに入ることで数的優位を形成。相手のプレスが噛み合うことを防ぎ、どこかから必ずボールを前進できるようにビルドアップを構築していた。

さらに、受け手の配置にも工夫を加えていた。2トップの一角のポウルセンは高い位置を保って、相手DFラインを下げさせる役割を担う一方で、その相方のヴェルナーは下がって縦パスを引き出す動きが多かった。スピードあるドリブルと強烈なシュートを持つヴェルナーを中央の位置で好きに受けさせたくないフライブルクは当然彼のケアに動くが、彼はあくまで囮。実際はフライブルクのボランチの脇のハーフスペースに位置取ったカンプルとエンクンクという2人のインサイドハーフに入れ、そこを起点にチャンスを作り出していくのがライプツィヒの狙いだったのだ。

ライプツィヒの配置は実に巧妙で、前から追えば数的優位を作られて剥がされるし、追わなければ好き放題ボールを前進させられサンドバックにされるという2択、ヴェルナーを捕まえれば2人のインサイドハーフにパスを通されるし、インサイドハーフを捕まれば一番危険なヴェルナーをフリーにしてしまうという2択。この2択を攻撃時に常に相手に突き付けることで、自分たちが安定してボールを持ち、主導権を握って試合を進めていくことが出来ていた。

ビルドアップの弊害

しかし、前半のライプツィヒはボール保持の割にはそこまでチャンスを作れていた訳ではなかった。

理由として一番大きいのは即時奪回が出来ていなかったことだろう。本来、ライプツィヒはポゼッションを軸にした遅攻が武器のチームではない。一番の武器は高い位置でボールを奪ったところから仕掛けるショートカウンター。ポゼッションはショートカウンターを効率的に行うための撒き餌という位置づけなのだ。

ライプツィヒとしてはポゼッションでボールの前進を図りつつ、ボールを失えばすぐに人数を掛けてボールを奪い返しにかかり、そこをショートカウンターの起点にしたかったはずだが、この日のライプツィヒはボールを失った時に全体が間延びしているケースが多く、相手のボールホルダーに人数を掛けられる状況ではなかった。

人数を掛けられない状況を作り出してしまった原因の一つに、ビルドアップの際のポジションの変化が考えられる。アンカーのライマー、2人のインサイドハーフ、さらには前線のヴェルナーをパスの引き出し役に回したため、パスの受け手は増えたが、その代わりに相手ゴールに迫った時の攻撃の人数はその分だけ減ってしまう。前半のライプツィヒがチャンスに繋げたシーンは、少ない人数で疑似カウンターのようにゴールに迫ったシーンがほとんどだった。

また、コンディションが整っていないのも大きいだろう。試合後の記事でトレーニングの不足を認めるコメントも見られたし、チームトップクラスの運動量を誇り、チーム2位のリーグ戦8ゴールを奪っているザビッツアーがベンチスタートなのもライプツィヒにとっては痛かったはずだ。

フライブルクの攻め筋と修正

主導権は握られても、ワンサイドゲームの展開ではなかったフライブルク。少ない攻撃機会からなんとかチャンスを窺おうしていた。

狙っていたのはサイドの裏のスペース。特に狙ったのは左ウィングバックのアンヘリーニョの裏だ。守備にいささかの不安があるこのスペイン人の裏にロングボールを蹴り込んで、そこにシャドーのシャッライらを走り込ませることで、フライブルクはチャンスを作り出そうとしていた。

そんな中でフライブルクがワンチャンスを活かす。34分、左サイドでコーナーキックを得ると、グリフォの蹴ったボールがグルデの足に当たってコースが変わり、ボールはそのままゴールへ。ラッキーな形ではあるもののこれでフライブルクが先制に成功した。

先制後のフライブルクは守備ブロックを5-4-1に変更。カンプルとエンクンクに使われていたハーフスペースを2シャドーの選手が埋めることでスペースを消し、撤退守備の色を強くすることでライプツィヒのアタッカーを窒息させようとしたのだ。これで攻め筋を見失ったライプツィヒは追い上げるチャンスを得られないまま前半をビハインドで折り返すこととなった。

ナーゲルスマンの修正

後半開始前、ライプツィヒが交代のカードを切る。センターバックのムキエレに代えて、サイドアタッカーのルックマンを投入。布陣も4-2-3-1に変えてきた。

後半開始時

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ここで特徴的だったのは、ライプツィヒの両サイドを務めるエンクンクとルックマンはあくまで中央寄りのポジションを保ち、ペナルティエリアの幅から出ようとはせず、その大外のスペースは全てサイドバックが使っていた。その理由については、ナーゲルスマンのコメントを参考にしたい。

「理由の1つ目は、『ゴールは中央にある』。2つ目は、両サイドに人数を割けば割くほど、中央に置ける選手の数は少なくなる。だが、中央にうまく人数を多く配置できれば、カウンターを受けても、相手を自ゴールから遠ざけて守ることができる。対戦相手がカウンターからサイドを経由しなければならないとすれば、自分たちは撤退までの時間を稼ぐことができる。同時に、中央に人がいれば、ボールの後ろにゲーゲンプレッシングのための人数をより多く割くこともできる。さらに、自分たちの対戦相手は、深く引いて守備を固めてくる。自分たちの選手を中央に置くことで、対戦相手は中に選手を集め、ゴール前に密集する必要がある。そうすると、必然的に大外の両サイドが使えるようになる。このスペースから最後のフィニッシュワークを仕上げられるようになる」(ライプツィヒのファンコミュニティサイト『RB-Fans.de』)

つまり、中央に人数を掛けておけば、ボールを奪われた時に奪い返す人材を固めておくことが出来るし、相手がそこを避けるとなるとカウンターはサイドからに限定されゴールには直線的に迫れない。さらに、あえてサイドのスペースを空けておくことで、チャンスを作り出す時に自分たちのアタッカーが使えるスペースを用意しておけるという訳だ。

この日のライプツィヒはそのナーゲルスマンの狙い通りだった。中央に人数を固めることで、ボールを失えばすぐにプレスを仕掛けて奪回にかかり、ボールを再び自分たちのものとする。ゴール前まで迫ったら、ヴェルナーがサイドに流れてスペースを使い、武器であるスピード活かしたドリブルでチャンスを作り出す。アタッカーの枚数を増やしたことで、前線の人数不足も解消された。こうして、後半は完全にライプツィヒのワンサイドゲームとなった。

ただ、肝心のゴールが中々奪えない。77分にカンプルの左サイドからのクロスにポウルセンが打点の高いヘッドで合わせて追いついたものの、ゴールネットを揺らしたのはその一度きり。あとは、再三決定機を迎えるもそれをことごとく外し、逆にアディショナルタイムにはフライブルクにFKからゴールを破られる始末。このゴールはVARが介入した結果、オフサイドの判定で取り消されたが、結局このままタイムアップ。1-1のドローに試合は終わった。

まとめ

優勝争いを考えれば勝点3がマストだったライプツィヒだが、痛恨のドロー。バイエルンが勝ったため勝点差は7に広がり、4位以上に与えられる欧州CL出場権確保が現実的な目標となってきた。

また、個人的にこの試合目立ったのはセンターバックの積極的な攻撃参加だ。3バックでも4バックでも変わらず、ライプツィヒのセンターバックはボールを持った時に自らにプレッシャーが掛かっておらず、スペースがあるとみると、どんどんドリブルで持ち上がり変化をもたらしていた。この日のセンターバックが全員サイドバックを本職とする選手と言うのもあったのかもしれないが、この持ち上がるプレーというのは鹿島ではほとんど見られないだけに、是非取り入れたい部分だ。

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遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください