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鹿島アントラーズ2022シーズン選手別レビュー 前編

GK

No.1 クォン・スンテ

リーグ戦27試合出場(27試合先発)34失点

昨季は幽閉からの唐突な最終盤でのレギュラー返り咲きだったが、今季は開幕から守護神の座に。まあスンテが鹿島で一番良いキーパーだなと改めて思わせるには充分すぎるほどのパフォーマンスを見せてくれた。ミスは数えるほどしかなく、常に安定。繋ぎはそこまで上手くないが、ロングボールの狙い所はいいし、何より不安定な守備陣のケツを叩いて引っ張り続けたのが大きい。スンテがいないと試合としてぶっ壊れていた試合は何試合もあった。ただ、監督交代後に再び幽閉されることに。天皇杯では使っていたことから、おそらく世代交代をしたいのだろうが、だったら沖を使っていた昨季の段階で契約延長すべきではなかったし、助っ人のベテランキーパーに試合でのパフォーマンスではなく、若手の育成を託すのは役割としてかなり酷だと思う。なんか来季も残りそうな報道が出ていたが、その際は単純に実力で争わせて、その結果一番いいキーパーをピッチに立たせたいところだ。

No.29 早川友基

リーグ戦5試合出場(5試合先発)5失点

シーズン終盤まで第3キーパーだったが、監督交代を期にレギュラーに抜擢。そのままリーグ戦では守護神に定着した。沖と違うのは多少のプレッシャーを受けても、ビビらずにショートパスで繋げるところ。組み立てを丁寧にやりたい岩政スタイルには最も適していたのだ。ただ、キーパーとしての守備の部分はまだまだ甘さが残るのも事実。ハイボールはミスこそないが、キャッチできる場面でも弾いているし、シュートストップも反応はいいが、もっとラクに止められるように自分自身で持っていけるはず。それでも、チームがスタイルを変えない限り、現状のキーパー陣では一番手になるだろう。

No.31 沖悠哉

リーグ戦2試合出場(2試合先発)3失点

第2キーパー兼カップ戦要員としてシーズンを過ごしていたが、9月になると唐突にリーグ戦で出番が訪れるように。ただ、2試合で早川に取って代わられると、そこから再度出番がやってくることはなかった。ハイボールの安定感こそ早川が上だが、シュートストップは沖の方が安定している。それでも早川の方が序列が上なのは、早川のところでも書いた繋ぎの部分。沖はプレッシャーを受けると、キックの質が途端に落ちるし、躊躇なく蹴っ飛ばしてしまうので、だったら元々得意でないスンテと大差ないやんけ!ということになってしまう。まあでも、起用されたリーグ戦2試合で沖のせいでもないのに勝てなかったのが響いたとは思うので、そこはちょっと可哀想ではあった。来季は早川とのバトルになるが、現状では非常に難しい立場だろう。曲がりなりにも試合にそれなりに出た経験はあるので、外に出ることも考えても不思議ではない。

No.38 山田大樹

リーグ戦出場なし

今季の鹿島の選手の中で唯一、公式戦での出場ゼロに終わってしまった。昨季の大ケガから回復し、シーズン通して稼働はできたが第4キーパーの立ち位置から抜け出せず。あれだけキーパーシャッフルしていたんだから、山田も使ってあげればいいのに、とはちょっと思ったけど。サイズもあるし、シュートストップやハイボール対応は一番若手の中で安定感ありそうだが、それならスンテ様の方が圧倒しているし、繋ぎとなったら早川や沖の方に分がある、という難しい状況である。いずれにせよ、ポテンシャルある若手キーパーが3年間ロクに出番がないという状態はよろしくないので、鹿島で使わないなら武者修行に出してあげたほうが賢明かと。

DF

No.2 安西幸輝

リーグ戦33試合出場(28試合先発)1アシスト

最後の最後でケガしたが、それまでずっと左サイドバックのレギュラーで、カードもケガもなく全試合出場、となれば普通の左サイドバックとしてはまずまず優秀なんだと思う。ただ、鹿島で背番号2を託され、フロントからもチームの中心になってほしいと期待されている選手のパフォーマンスとしてはかなり微妙、それが今季の安西における評価だと思う。基本的に左足をまず使わないので、繋ぎでノッキングしてしまうことが多いし、また基本的に攻撃におけるプレーの精度が低い。攻撃的サイドバックでリーグ戦1アシストだけ、は流石によろしくない。守備でも穴になることはないが、カウンター対応で相手との間合いをやたらに取るのでプレッシャーになってないから、安西が残った状態でカウンター食らうと相手のミス待ちというしんどい選択肢しか選べなくなってしまう。本当は左利きのサイドバックを左サイドに入れたいのだが、過去そうした人材を何度も墓場行きにしてきたのが鹿島なので、そこにはあまり期待しない方が良さそう。どんな時でも稼働し続けてくれるその体力は貴重なので、安西を高い位置で仕掛け続けさせられるようにして、試行回数の増加→数字の増加に繋げるのがまあベターかと。

No.5 関川郁万

リーグ戦32試合出場(27試合先発)

センターバックの主力として、初めてシーズンを通じて稼働できたシーズンになった。化け物相手だと厳しいが、基本的に空中戦に強いし、地上戦での対人はほとんど競り負けない。攻撃でもパススピードの速さがよく、一つ飛ばして縦につけられるので、数的優位を保った時の砲台としては優秀な方かと思う。問題なのは、しょうもない判断ミスをしていいプレーだったのを台無しにしてしまうし、それをやたらに引きずるところ。自分の失敗を自分で被るあたりは漢気あるんだろうなと思うが、それでパフォーマンスに悪影響なら元も子もない。あと、基本的に自分が全部止めればいいんだろ精神でやっていそうなので、周りを動かしたり最終ラインをこまめに上下動することはあまりしないので、それがチームとしてマイナスになってしまっている。まあでも、プロ4年目で初のフル稼働だと昌子源と成長曲線的には同じなので、もう2年くらい見ていればいいセンターバックになりそう感はある。

No.15 ブエノ

リーグ戦7試合出場(4試合先発)1アシスト

今季もロマン枠のまま終わってしまった、もう27歳の助っ人なのに。いい時はホントすごい。速くて高くて強い、とセンターバックとしては最高だし、繋ぎも余計なことを求めなければ最低限はちゃんとやってくれる。ただ、ダメな時はどうしようもない。基本的に判断の適当さを己の肉体でなんとかしているので、なんとかできない時はその適当さがどうしようもなく目立ってしまう。しかも厄介なのが、いい日なのかそうでないのかは使ってみないとわからないという点。そんなメチャクチャなガチャをセンターバックで引かなければいけないのは、あまりにもギャンブルすぎるだろう。今季も何度かチャンスはあったが、ことごとく当たりを引けずに評価は上がらなかった。流石に助っ人として置いておくにはかなりキツいレベルになってきたが、ポテンシャルは無限大にあるので欲しいクラブはありそう。

No.16 小田逸稀

リーグ戦2試合出場(1試合先発)

町田でポ将にヘディングワンツーを仕込まれ、千葉では夢を叶えることを教えられて帰還。だが、シーズンの最後まで戦力としては計算されない扱いだった。基本的に空中戦は超強い。何でそんなに勝てるのかわからないレベルで強い。どんなロングボールでもどんな相手でも競り勝つなので、サイドで的にしておくには最高だろう。ただ、それ以外のプレーはとにかく雑だった。なんでもない横パスでもあそこまで危なかっしいと、サイドバックとして使うにはあまりにもリスキーである。ヴァイラーがルーキーの溝口をサイドバックで使って、小田を2列目で使っていたのはそのあたりを見ていたのだろう。飛び道具としては面白いが、サイドバックでこの飛び道具感は使いにくいはず。鹿島がガンガン放り込むサッカーでもやらない限り、来季も立場は厳しいので、外に出ることも十分ありそうだ。

No.20 キム・ミンテ

リーグ戦21試合出場(13試合先発)1ゴール

犬飼と町田の穴を埋める存在としてやってきた助っ人センターバック。Jリーグの経験も豊富で計算できる選手として期待していたが、シーズン通して助っ人としてはかなり物足りないパフォーマンスに終わってしまった。問題なのは守備の対応の甘さ。基本的にぶち抜かれることが怖いのか、相手を潰しにいかずに先に触らせてしまうので、ボールの奪いどころで奪えず、相手に運ばれてしまうシーンは今季何度も見た。自分のフィジカルの強さを考えれば、ガツガツ来られた方がよっぽど相手にとっては嫌なはずなのだが。味方を動かすこともあまりしないし、それでいて自分のところで潰せないとなると、それはセンターバックとしての信頼は得づらいだろう。ただ、組み立てにおいては流石ミシャ式で長年鍛えられただけはあって、ボールの運び方やパスの付け方は一番スムーズにできていた。シーズン終盤はボールを大事にする選択をしたこともあって、レギュラーに定着して三竿をボランチに押し出すことに成功した。正直、助っ人でこのレベルなら来季も…とはならないが、今の鹿島の感じでミンテ以上のセンターバックを捕まえてこれるのか、と問われるとそれも難しそうなので、そこ次第で置かれる状況が変わりそう。

No.22 広瀬陸斗

リーグ戦20試合出場(15試合先発)3アシスト

鹿島に来て3年目だったが、なんだかんだで一番試合に絡んだシーズンとなった。ヴァイラーが監督の時は走力を求めるスタイルだったこともあり、中々序列が上がらなかったが、徐々にチーム全体のコンディションが落ちてきてスタイルを調整しなければならなくなったことや、安西のパフォーマンスがとにかくイマイチだったこともあって、左サイドバックで起用されるように。本職ではなかったがソツなくこなし、その後は常本のケガもあって右サイドバックのレギュラーに定着。ボールの扱いやクロスの精度はサイドバックの中でもピカイチで上手く、ターゲットがいる時はそのシンプルなクロスで十分チャンスになっていた。プレーに波もなく、球際でも戦える選手なのだが、唯一問題なのがスピードある選手に対しての対応。ステップを踏みながらではなく、ピタッと止まったまま相対してしまうので、瞬発力で抜かれかけると、もうファウルで止める以外の選択肢を持っていないのが、ドリブラーを多く抱える上位クラブとの対戦ではしんどいところ。それでも、サイドバックとしてはかなりいい選手なので、来季も常本、安西と共存共栄してほしい。

No.23 林尚輝

リーグ戦1試合出場

とにかくケガに悩まされたシーズンだった。開幕直後にケガで離脱して夏場まで引きずると、復帰したタイミングでちょうどチームが下降していてかつ監督交代もあって一気にチャンスを掴みそうな雰囲気もあったが、そこでもケガ。結局、プレーを見たのはごくわずかになってしまった。今季のプレーについてはどうこう言えるレベルでそもそもないのだが、今季の助っ人2人抱えたセンターバック陣だと、必然的に外国人枠の問題があるので出番はそれなりに来そうだったが、今オフは間違いなく補強に動くので、立場は厳しくなりそうだしチャンスを逃してしまった感がある。ただ、ケガでほとんど稼働できなかった状態ではレンタルとかも難しそうなので、これはもうコツコツやっていって、巡ってきた出番で結果を残すほかない。

No.28 溝口修平

リーグ戦出場なし

ルーキーイヤーはカップ戦で出番を掴み、ヴァイラーの時は小田よりも序列が上だったことを考えると、まあそこまで悪くないシーズンだったのではないだろうか。左足のキックの質がいいし、判断もいいので、攻撃面においては今の段階でも結構通用しそう。だが、守備面だと同世代の大学生アタッカーに相当苦しんでいたので、ネックはおそらくその辺り。岩政監督の起用を見ている限り、いくらボールを大事にするとはいえ、サイドバックは守備がある程度できなきゃお話にならないと考えていそうなので、そこを鍛えて試合に絡んでほしいところ。

No.32 常本佳吾

リーグ戦28試合出場(24試合先発)1アシスト

プロ2年目の今季は途中ケガでの離脱もあったが、それを除けばシーズン通じて不動の右サイドバックだった。おそらく、今の鹿島で最も計算できる選手は常本だろう。守備では対人に強いのもそうだが、カバーリングのセンスがいいのが高評価。常本の勘の良さでチームが救われているシーンは結構多いし、常本の勘に頼ってるあたりはそれはそれで大問題なんだけど。攻撃では昨季はバランス取ることが多かったが、かなり高い位置まで進出するように。ヴァイラーとしては精度の低い安西より、確実な常本にサイドを爆走してもらって、そこにボールを渡した方が確実に押し込めると考えたのもあるかもしれない。押し込めれば、ゴール前には上田と鈴木が待っているので放り込むだけでチャンスになったし。ということで、ゴール以外の攻撃の項目は全てで昨季を上回る数字を残した。この感じを見ていると順調に伸びているし、もうちょっとチームの成績が上向いてくれば代表もあり得るはず。海外に行きそうな感じもあるけどそうなったら止められないので、なんとか次のW杯には出てほしい。

後編に続く…


遠征費とスタグル代に充てるので、恵んでください